・なぜすぐに辞めなかったのか…
前回の記事では自身の中でもワースト1位を争い最悪と言える仕事だったコンビニのアルバイトの話をした。
あの時は嫌々思いながら2ヶ月間働いたが、勤務初日からマニュアルの徹底、覚える業務の多さ、副店長が名誉男性で爆弾級のクソババア、というように「この仕事ヤバい…」と感じることが目白押しだったため、すぐに辞めれば良かった。
私は夜勤のシフトに入っていたのだが、初日の3日間は研修のため、昼間に3時間の勤務をすることになった。
派遣社員や契約社員のように雇用期間の定めがあるわけではないのだから、研修期間は辞める絶好の機会だった。
そうすれば、少なくとオーナーに対しては、「温厚なおじさん」という綺麗なイメージのまま別れることが出来た。
私がそうしなかった理由は、オーナーの教育方針とは別に、ハローワークの求人票に「試用期間3ヶ月」と書かれていたため、「辞めるにしてもせめて3ヶ月は続けないと…」と思い込んでいたことに加え、「最初は難しくても、続ければ少しずつ慣れてくるかも…」と感じたためである。
だが、その予想は間違いで、初日の直感の方が正しかった。
前回のテーマだった自分のミスで廃棄することになった商品の買取だけでなく…
-
レジの金額が1,000円以上のマイナスが出たら差額を支払わされる。
-
体調不良で2日欠勤したら、ペナルティとしてシフトを大幅に削られる。
-
「シフト制」と言いながら、勤務曜日は完全に固定され、どうしてもその日に休みたい時は、自分で代わりの人を探すことを要求される。
-
人手不足の中で退職する時も「代わりの奴を連れて来い!!」と脅される。
-
オーナーは情け容赦ないビジネスの理屈と、上記のような法的な責任はないものの「お世話になったんだからこれくらいの義理は果たせ」という情緒的な理屈を都合よく使い分ける。
-
相方の軍曹(仮名)も「言われたことだけを黙ってやってよ!」と「それくらい自分で考えてやってよ!」を都合が良いように使い分ける。
-
軍曹はひろゆきッズ並みのヘリクツを展開し、論理的な矛盾を指摘されたら逆ギレする。
慣れるどころか、日を追うごとに「なんて酷い会社だ!!」(前回から通算して三回目)と感じるようになった。
この記事に書いた通り、「この仕事は嫌だから早く辞めたい」と感じながらも続けて、結果的に長く働くことが出来た仕事は高校生の時のアルバイトのみだった。
それ以外の仕事はコンビニのバイトと同じく、日を追うごとに仕事内容も人間関係も悪化の一途を辿った。
というわけで、今日は、ゴールデンウィーク明けの仕事に憂鬱を感じて「会社を辞めたい」と思っている方の背中を押す目的も込めて、勤務開始数日で「これはちょっと…」と感じた時の話をしたいと思う。
・嫌な予感がプンプンする職場
①:雰囲気が重苦しい
これは中堅規模の製造業で働いていた時の話である。
その時の面談はオンラインではなく、現地を訪れたものの、面談の時間がすでに終業時刻後だったためか、執務室に入ることはなく、フロアが違う会議室で行った。
そのため、就業開始日に初めて就業場所を目にすることになった。
最初の印象は「雰囲気が重苦しい」ということ。
まず、狭い部屋に多くの人が密集している。
先輩に聞いた話だと、コロナ渦では在宅勤務をしている社員が多かったため、もう少し開放感があったが、今では多くの人が出社を再開したため、狭苦しくなったという。
次に部屋が暗い。
予算をケチるためか、電灯が間引きされている。
仕事の多くはパソコン、しかも小型のノートパソコンを使うため、目がやられそうだった。
これらはあくまでも入室直後の印象だったが、嫌な予感は的中した。
休憩や退勤で席から離れる時は、頭上の電気を各々が小まめに消灯しなければならない。
面倒ったらありゃしない。
また、 書類至上主義でありながら、印刷費をケチるために、カラー印刷をする時は上司の承認を得る必要があり、不要になったコピー用紙はテスト印刷用として、プリンターのトレイに戻したり、それにも使えないようであればメモ用紙として保管することを要求された。
もちろん、こんなドケチな会社なので、文房具の提供などは一切ない。
トイレにはペーパータオルもなければ、ハンドドライヤーも稼働しない。
すべては経費削減のため。
その上、毎日の朝礼では、創業者の偉ーいお言葉を復唱させられたり、「精神面を磨くため」と称した清掃活動も行われた。
これらはすべて創業者である会長の理念のようで、社員の人は皆、バカらしく思いながらも、彼の雷を恐れるように従っていた。
幸いにも同僚が良い人だったこともあり、何とか半年は続けたが、これ以上この職場にいると精神を病みそうだったので、半年で退職した。
こんな会社で働いていたため、次の職場は天国に思えた。
②:通勤が不便
就労前はネットで十分に情報収集したにもかかわらず、いざ職場に通うとなると「こんなはずではなかった…」と後悔することが多いのが通勤である。
これは2年前に働いた会社で、前々回の記事にも登場した外資系企業の話。
仕事内容や人間関係は特に不満はなかったが、通勤が思ったよりも不便だった。
前職も途中まで同じ路線を利用していたため、「特に問題はないだろう」と思っていたが、同じ方面を走っている電車でも、その路線へ乗り入れる電車だけが異常に混んでいた。
これだけでも、初日に面食らったが、もう一つ気になることがあった。
それは、帰宅時は途中のポストに郵便物を投函しなければならないこと。
ポストの位置は少し回り道した所にある。
初日は「え、給料が発生しない退勤後にこんなことを…」と違和感を覚えつつも、「少し面倒だな…」くらいにしか思わなかったが、これが後々尾を引くことになる。
帰り道は、途中駅で乗り換えを行えば、上手く混雑を避けることができたが、その電車に乗るためには、定時ピッタリに退社して、ノンストップで向かわなければならない。
もし、逃したら、次の電車がやって来るのは15分後である。
「ということは、5分、10分残業して次の電車に乗れば余裕が生まれるのでは…」とも考えたが、この会社は残業時間が15分単位でしか付かないという、このご時世では考えられないことをやっていた。
当然、15分残業して駅に向かったら、次の電車もギリギリである。
そのような帰路で、途中のポストに立ち寄ることがどれだけ障害になったことだろうか。
途中で橋を渡る際に、郵送物を川へ放り込みたくなったことは一度や二度ではない。
しかも、就業開始1ヶ月で、前職まで使用していた路線にも混雑が戻り、速達列車に乗れなくなった。(その時の話はこちら)
これだけでも、退職にリーチが掛かっていたが、とどめに上司の怠慢によるマニュアル作業の増加と、仕事が出来ない同僚と比較して業務の割当量があまりにも違うことへの不満が引き金となって半年で退職した。
③:上司と合わない
上の2つは会社に違和感がありつつも人間関係は良好だったため半年は続いたが、最も明解で、すぐにでも逃げ出したくなるのは上司と合わないことである。
このブログで嫌いな上司の代名詞となっているマネージャーX氏はその代表格であるが、彼についてはこれまでも履いて捨てるほど取り上げてきたので、ここでは割愛させてもらう。
私が初日から「この人は無理だな」と感じるのは責任を取る気がない人間である。
たとえば、この記事に登場した審査業務の仕事だが、初日のオリエンテーションでこんなことを言われた。
「審査の手順はすべてマニュアルに沿って行ってください」
「マニュアルは度々変更になることがありますが、我々は通知を行いません」
「マニュアルの更新をチェックするのも皆さんの仕事です」
勤務初日、しかもおそらく2時間くらいしか経っていなかった頃に、こんなことを言われて、私のやる気は完全に喪失した。
だって、そうだろ?
メンバーを束ねる管理職が業務内容の通知を行わないのは怠慢以外の何物でもなく、そんな人間に管理職となる資格はない。
当然、そんな人間を信頼できるはずがない。
たとえ、プレーヤーとしては優秀でも、私はこんな連中を上司だと認めない。
その後の研修内容も初めて聞いたばかりで、まだ理解出来るはずもなく、「○○さんに言われたから」くらいにしか思っていなかったものを
「それはマニュアルのどこに書いてますか?」
「早川さんの見解を聞かせてください!!」
と他の研修者の前でしつこく訊ねる、陰湿なものだった。
「この上司はヤバい」という私の直感は見事に当たった。(全然嬉しくないけど)
この会社は契約期間の都合で2ヶ月働いたが、出来ることなら即日バックレたかった。
・あなたこそメラビアンの法則を学びましょう
このように、仕事を続けられるかどうかは2,3日で分かる。
嫌な言い方かもしれないが、「『仕事が続くかどうか?』は第一印象で9割決まる」のである。
これって何かに似ていないだろうか?
そう。
コミュニケーションにおいて、相手に与える印象は、見た目などの視覚情報が55%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%で、話の内容などの言語情報は7%しか伝わらないという「メラビアンの法則」である。
この記事でも紹介した通り、メラビアン博士自身は全くそんなことを言っておらず、この説は、日本のビジネスマナーの研修屋や企業が、新入社員教育の際に都合よく解釈して勝手に使っているものである。
だが、「従業員の早期離職を抑える」という目的においては、彼らの方が金科玉条(馬鹿の一つ覚え)のように崇め、従業員に向けてしつこく説いている(歪曲した)メラビアンの法則を学ぶ必要があるのではないか?
従業員が早期退職を考える際、企業の理念や教育担当者の本心など彼らには7%しか伝わらず、90%以上は職場環境や上司との相性など初日の印象で判断しているのだと。
つまり、早期退職者が多すぎるのは自分たちが第一印象を高める努力を怠っているからであり、離職率を改善したければ、まず自分たちが新入社員にプレッシャーを与えないよう明るく気さくな態度で接し、働きやすいよう環境整備の予算を惜しまずに投入すべきである。
もちろん、過去に登場したシミズやカワグチ(共に仮名)のように初対面の印象は良かったものの、数ヶ月で化けの皮が剥がれることもあるが…
ちなみに、今回の趣旨とは外れるが、勤務開始数日で辞めたいと感じて、実際に退職した仕事もある。
そちらについてはこちらの記事をご覧頂きたい。
次回も退職にまつわる話をしたい。