退職代行サービスが生まれたのは労働者が無責任だからではない

前回の記事は、ゴールデンウィーク明けの退職ラッシュを予想する(そして、期待する)内容だった。

その記事にどれだけの影響力があったのかは不明だが、こんな記事を見かけた。

連休明け、仕事もう無理 退職代行業者に依頼殺到 | 共同通信 (nordot.app)

退職代行サービス「モームリ」は、例年月200人程度だった利用者が、今年4月に約1400人へ増加し、5月は連休明けの段階で500人を超えているという。

私はこれまでバックレも含めて退職しまくってきた過去がある。

だが、退職代行サービスについては全く取り上げて来なかった。

今日はその退職代行サービスについての話をしようと思う。

・これまで退職を繰り返したものの…

先ずは、私がこれまで、自身と関係ありそうだったものの、退職代行サービスについて全く取り上げなかった理由を説明させてもらいたい。

その理由は、単純に利用したことがないからである。

そもそも、必要性も全く感じなかった。

もちろん、すべての職場においてすんなり退職できたわけではなく、このクソオーナーのように「辞めるならお前が代わりの奴を連れて来い!!」と脅されて、強引に続けることを承諾させられたこともある。

その時は、嫌々ながら1ヶ月程続けたものの、改めて退職を表明した際に全く取り合ってもらえなかったため、バックレを敢行。

その後、報復として未払いの給料を差し押さえられたものの、翌日、平気な顔で取りに行った。

私が、退職を巡って揉めたと言えるのはこの時くらい。

それ以降は、退職を表明したら引き留められたことは何度かあったが、派遣にせよ、直接雇用にせよ、すべて自分で意志を押し通した。

最初に修羅場を経験したからか、その後はどんな引き留めも優しく思えた。

「若い時の苦労は買ってせよ」というのは本当のようである。(その言葉の使い方は絶対に違うな…)

このように、退職慣れしているためか、退職の意思表明や手続きに、わざわざ業者に依頼することはない。

ただでさえ仕事を辞めたら収入が断たれるのだから、お金の支払いには気を付けないといけないことだし…

・業者への嫌悪感

私には外国人の友人が複数人おり、彼らに退職代行サービスについて話をしたことがある。

その対象となったのは、アメリカ人、スペイン人、フランス人で、全員30代の男性である。

彼らは皆同じように驚く。

「え!? 仕事を辞めたいなら、普通に『辞める』って言えばいいじゃない!?」

「何で仕事を辞めるだけなのに、お金を払って業者に頼まないといけないの!?」

ぐうの音も出ない正論であり、私も同意見である。

私も退職代行サービス業者にはいい印象を持っていない。

その一つは、前段でも少し触れた通り、仕事を辞めてお金の心配をしなければならない人から、お金を巻き上げるからである。

未払いの残業の請求や、労災、パワハラで労働不能に陥った際の手当の請求や慰謝料の請求といった弁護士に依頼する行為ならまだしも、たかだか退職の手続きを代行するだけで、数万円のお金を請求することは倫理的に問題ではないのだろうか?

彼らが本当に心も体も病んで退職をしたい人の味方なら、お金と引き替えに、退職の手続きを代行するビジネスを展開することではなく、退職は全く恥でも悪いことでもなく、合法的に退職できる方法や公的な相談機関を伝えることではないのか?

もしも、バックレた際に、手渡しにされた給料を代理で受け取りに行ってくれるサービスがあるのなら、私も利用したかもしれないけど…

また、私は仕事を続ける自信をなくした時や、退職を考えている時は、ネットで同じ経験をした人の記事を読むことがある。

著者のつらい体験に自分を重ねて、感情移入しながら読み、「自分と同じ気持ちの人もいるんだ…」と救われた気持ちになるのだが、途中からこんな文言が出てくることが少なくない。

「そんな時は退職代行サービスを利用するのがお勧め」

「特にお勧めの業者は…」

ここから、広告へ誘導するアフィリエイト系のクソ記事が多いこと多いこと。

それを見た瞬間、「あ、やっぱりこいつも今の職場で同じで、金儲けのことしか考えていない奴なんだ」と興醒めする。

「退職代行業者」と聞くと、そんな嫌な気持ちに直結する。

もっとも、悪いのは釣り目的の記事を書く連中で、彼らにとってはいい迷惑なのかもしれないが…

・安心して退職出来る社会なら退職代行サービスなんて存在しない

さて、ここまでは否定的なことばかり書いてきたものの、退職代行を利用する人の気持ちは分からなくもない。

というのも、この社会は「仕事を辞める」ということに対して、あまりにも不寛容過ぎると感じるからである。

話し合って、「自分(会社)に悪い所があれば改善しましょう」という前向きな提案ならまだしも、

「尻(ケツ)捲くって逃げるのか!?」

「根性なしの負け犬だ!!」

「責任感の欠如だ!!」

「あなたが自分でやると決めた仕事でしょう!?」

と罵倒されることは珍しくない。

そして、今は苦しくても、仕事を続けたら、年功序列でどんどん給料は上がって、昇進して部下も持てて、結婚もできるけど、退職したら、雇ってくれる所なんてなくて~(以後、転落人生が展開される)」という長々とした説教をされる。

しかも、そういう会社に勤めていない人間が、勝手に自分も公務員や大企業と同じだと思い込んでいることもあるから質が悪い。

このブログで度々取り上げている正社員信仰者によるフリーター叩きは、違法企業や差別問題は全スルーして、「正社員にならずにフリーターを続けたら、将来がいかに悲惨か」を(嬉しそうな顔で)語るのだが、それと同じである。

次に、仕事から離れて無職となることに、異常なまでの憎しみを持つ人間も少なくないこと。

この記事で少し紹介したが、私は高校1年生の時に、学校や教師の在り方に納得できず、退学するつもりだったのだが、担任教師との話し合いで、「高校を中退したら、学歴が中卒になるだけじゃなく、次の年の4月まで空白期間が出来て、『その間は何もしていなかったのか!?』と言われて、どこからも雇ってもらえなくなるぞ!!」と脅された。

学歴はともかく、何で仕事をしていない期間(ブランク)があることに、ガタガタ言われなくてはならないのか意味不明だが、このように考える人間は珍しくない。

彼らは労働という営み(というよりも、何かしらの組織)から外れた者は、人の道を外れた外道とでも思っているのだろうか?

きっと、こういうバカが、この記事に書いたような「無職やフリーターよりも、親の脛をかじりながらFランク大学や卒業後はろくに就職出来ない専門学校に通う奴の方が偉い」と考えて、学生に「奨学金」という名の多額の借金を背負わせているのだろう。

このように、「離職したら、人格を否定されるほど罵倒され、その後は転落人生が待っている」ということをしつこく聞かされたら、仕事を辞めることにとんでもない罪悪感が生まれ、「ごめんなさい…ごめんなさい…」という止むに止まれぬ気持ちになり、退職代行という第三者に助けてもらいたくなる気持ちも分かる。

むしろ、真面目で責任感が強い人程、限界まで抱え込んで、追い込まれた末にそうなってしまうのではないだろうか?

私がこれまで、すべて自力で退職(もしくはバックレ)まで漕ぎつけることが出来たのは、「私が強い人間だから」でも、「責任感の強さから」でもなく、会社を辞めることを屁とも思っていないからである。

自画自賛で恐縮だが、多くの人が私のように平気で退職し、他人の退職にも寛容、または無関心になれば、安心して退職することが出来、退職代行サービスなんてものは存在しなくなるだろう。

まあ、それがサービスの利用者を批判している人の望む社会なのかは別として…

・まとめ

今回の記事で私が言いたかったことは、「退職代行なんてものに頼らないといけない程、最近の若い者(労働者)は甘ったれているのか!?」と激怒する人がいるが、退職代行も、それを利用する労働者も、結局は退職に不寛容な社会の産物に過ぎないということ。

そして、「仕事を辞めたいけど、怖くて言い出せないから、代行業者に頼もうかな…」と思っている人に伝えたいのは、世の中は「退職=悪」と考える陰湿で執念深い人間ばかりではないということ。

私はこれまで派遣社員を除くと、中小企業で働くことが多かったが、大企業的な安定した福利厚生も年功序列もないためか、意外と転職に寛容で、人手が足りなくなれば常時採用を行っている企業も決して少なくない。

私の高校時代の担任が、「高校を中退したら、翌年の41日の入社式まではプータローになってしまう」と思い込んでいたように、「この国で正社員として就職するには、新卒採用以外の道はない」と思い込んでいるバカや、年功序列や終身雇用を前提に「転職は一億円を損する」と考えるバカもいるが、そんな人間は「特定の生き方しか知らない偏狭な社畜バカには、『社会人』を名乗る資格はない」と思うようにしよう。

前回の記事のトップ画像に「石の上など3日で十分」と書いたが、物理的には3年居続けることも可能かもしれない。

だが、沈没している泥船や、底なし沼であれば、3年も持ちこたえることなど出来るはずがなく、3日で逃げ出すのが吉である。

そもそも、そんな会社が「石」を自称すること自体がおこがましいし、石に対して失礼である。

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