20年以上前の昼ドラ「キッズ・ウォー」を改めて見た感想

今年のお盆休みは例年より長かったものの、台風の影響もあり、ほとんど家に居た。

というわけで、有り余る時間を使って…

ネット動画ばかり見ていた。

典型的な怠け者の休日の過ごし方である。

私はU-NEXTという動画サイトと契約しており、よくそこでひと昔前のテレビドラマを見ている。

連休中に私が視聴することにしたのは1999年から2003年にかけて放送された「キッズ・ウォー」というドラマである。

井上真央演じる今井茜(パート1では「中西茜」)と今井春子(演:生稲晃子)の親子が中心となって、いじめ、不登校、管理教育、教師の不祥事といった教育問題に立ち向かったり、思春期ならではの恋愛がストーリーが展開されるドラマである。

20年以上前のドラマだが、放送当時の気持ちが蘇り、おおよその筋書は知っているにもかかわらず、ワクワクしながら見入っていた。

だが、最終編となる第5シリーズに対してだけはやや複雑な想いがあった。

そのような人はきっと私だけではないだろう。

・それまでのシリーズから一変

5シリーズは登場人物の設定こそ前作から引き継いでいるものの、舞台は大きく変わった。

その理由は主要人物であった春子と夫の大介(演:川野太郎)、さらに末娘の真理の3人が交通事故で死亡する(していた)というショッキングなシーンから始まり、残った家族は全員で全寮制のフリースクールに入学することになったからである。

その結果、それまで主な舞台だった家庭も、学校も一気に失うことになった。(春子の兄である津村信彦(演:真夏竜)が経営する喫茶店も序盤の一部を除いて出番が無くなった)

さらに、24に渡って登場し、茜の恋人的立ち位置だった紺野翼(斉藤祥太)が一切登場しないというのも疑問だった。

Wikipediaでは、両親が他界するという設定には、放送前には多くの反響があったというプロデューサーの堀場正仁氏の発言があり、その設定には賛否両論あったことが伺えるが、私に周りでシーズン5の設定を支持していた者は一人もいなかった。

私も全く同意見だったので、リアルタイムで放送された時もほとんど見なかった。

試しに何話か見たのだが、家族を失ったことに加え、古株のヤンキーによるいじめや理不尽な体罰教師のしごき等、フリースクールの生活があまりにもつらくて見ていられなかった。

それまで好きだった同番組をすべて否定されたような気もした。

今回改めて14を視聴していても、5の出来事が影を落とした。

たとえば、リストラされた大介が、司法書士や調理師の資格を取るために必死に勉強したり、祖母の友恵(演:島かおり)が自宅や自身の経営する幼児教育スクールで、生まれたばかりの真理に英才教育を行うのだが、この先に待っている未来のことを思うと、そんな一生懸命な姿が何とも言えない程虚しく感じてしまった。

フィクションの世界とはいえ、「明るい将来へ向かって努力しても、一つの不幸ですべてが台無しになる」という現実社会の理不尽さをまざまざと感じた。

また、家も学校も離れることになったフリースクール生活のことを思うと、気が合わない家族との喧嘩も、第4シリーズまでのメインテーマでもあった学校の規則や理解のない教師といった不快な日常さえも尊く思えた。

文字通り、幸せとは失って初めて気づくものである。

・良い面も無くはなかった

今回は放送時から20年が経過し、私自身も歳を取って冷静な目で見られるようになったと思い、シーズン5も全話視聴することにした。

全体を通して感じたことは、親を失った子どもが自分たちの力だけで困難を乗り切る自立、人の心の温かさや友情に触れた不良少年少女の更生、そして、恋愛が主だったテーマだったということ。

後者2つはそれまでと同様だが、前者は5ならではと言える。

とはいっても、長男の健一(演:小谷幸弘)を除く多くの登場人物が、アルバイトをすることが出来ない中学生以下の年齢だったため、お金を稼ぎたくても稼げない様子が何とももどかしかったが…

それから、明らかに思春期の視聴者へ向けた性教育と思われるシーンもあった。

前作まではエリート思考が強く、口煩い祖母として、悪役的な存在だった友恵が、今作ではとても心強く感じた。

一部しか見ていなかった放送当時は「両親ではなく、彼女が…」と思っていた自分が恥ずかしい。

また、子どもたちを想って、それまでは親戚関係でありながら、友恵と仲が悪かった信彦や茜の実父である中西(演:宇崎慧)が、一転して協力し合う関係になる様子も斬新だった。

友恵が信彦に自宅の売却について電話をしていた時に、自身が経営していたスクールの借金や、子どもたちの学費のことから「私も夜逃げしたいわよ」と弱音を吐くシーンは衝撃的だった。

思わず、「あなたたち、そんなに仲良かったっけ!?」と言いたくなった。

両親という家族の中核が不在となってしまったからこそ、家族の絆が強まったと言えるのかもしれない。(一方で、前作ではプロポーズした校長先生(演:大和田伸也)はこんな大変な時に一体どこへ行ったのでしょう?)

ちなみに、前段でも引用したWikipediaの記事によると、5のテーマは「子どもたちの自立」だったようだが、大人たちも成長しているように思えた。

・まとめ

私も放送当時は子どもだったこともあり、単純に気分が爽快になれる話を望んでいたが、この歳になって改めて見ると、当時は分からなかったことも理解できるようになった。

1シリーズは4045話で、第5シリーズまで続いたドラマだが、毎回良い所で終わるから、「今日はこの話まで…」と思っても、続きが気になって、ずっと見続けてしまった。

毎日30分だけと決まった時間に放送されるテレビであれば、それは名演出と言えるが、延々と見続けることが出来るネットでは少し危険な気もした。(さすがにお盆休み内ですべてを視聴することは出来なかったが…)

突然の交通事故で両親が他界して、生活が一遍することは誰の身にも起きることである。

私は幸運にも、そのような悲劇に見舞われることなく育ったわけが、もし親戚が同じような状況に直面したら、信彦や中西のように微力ながら支えることが出来たらと思っている。

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