4月に入って、3週間が経過した。
今月から新生活をスタートさせた方は、新しい暮らしに慣れてきているだろうか?
私の生活は先月までと比べても特に変わりはなく、職場へ向かう際に利用する電車の乗車位置を変えたくらいなのだが、その結果、あることに気付いた。
・何気ない行動が一段と輝く理由
私は平日の週5日、固定時間で働いているため、毎朝の起床時間、家を出る時間、電車に乗る時間はいつも同じである。
そんな生活を送っているので、乗車位置についても、ホームや車内が混雑していなければ、ほぼほぼ同じ場所である。
というわけで、毎朝の通勤で目にする光景も変わらず、最近は途中駅で毎日同じ人を見かけている。
その人物と会話をしたことはないが、とても振る舞いが素敵なので、つい目で追いかけてしまう。
私は経験したことがないものの、学生や就職して間もない若い頃に、バスや電車の中で毎日見かける人に恋をしてしまう人はこんな気持ちなのだろうか…(笑)
だが、私がその人物に惚れてしまったのは、何も異性としての魅力を感じたからではない。
そもそも、その人物は年配の男性である。
私が彼に好感を持っている理由は…
満員の電車に無理やり乗り込もうとせずに、次の電車を待っているからである。
加えて、乗車位置案内にきちんと立っており、待ち方も美しい姿勢なのだ。
ちなみに、次にやって来る電車は、始発駅が2駅手前で、比較的空いていると思われ、彼はその電車を狙っているのだろう。
実に賢明は判断である。
それに引き換え、たかだか数分の我慢も出来ずに、醜い顔で他人を押し退けてでも、満員電車に乗り込んでくる人間の浅ましさときたら…(しかも、列にもきちんと並ばない)
東京はそんなバカ共で溢れているため、彼の知的で気品の溢れる行動が一段と輝いて見えるのだ。
満員電車に無理やり乗り込む人間は、「だって、次の電車も満員だもーん!!(=僕は悪くなーい)」という幼稚な言い訳をして正当化しているが、彼の行動を見たら分かる通り、それはウソである。
たとえ、山手線のように始発駅と行き先がほぼ同じ電車しか走っていない路線でも、前駅や前々駅での接続列車による乗り換えのタイミングによっては混雑度に差が出るので、「全列車、全車両が常に満員で、他人を押し退けて入り込まないと、延々に乗れない」ということはあり得ない。
こちらは、香港在住の日本人の方が日本と香港と通勤事情について語っている記事である。
日本の満員電車の異常さはヤバい!海外から対応策を学べ! – ボクらはセカイのドコでも生きていける (goabroadfromjapan.com)
香港と言えば、世界トップクラスの人口密度を誇るため、著者も日本並みの通勤地獄を想像していたが、確かに人は多いものの、体が密着する訳でもなく、十分にスペースがあるので不快にはならないという。
彼曰く、その理由は、「やって来た列車がある適度混んでいたら、1本逃して次を待つ」という香港人の姿勢にあるとのこと。
上京前の私がそうだったように、そんなことを言われても
と思う人もいるかもしれないが、東京にはそんな人間として最低限の倫理や常識を持ち合わせていない人間が少なくないのだ。
・まともな会社はそんなことを望みません
先程の記事では、日本人が「満員であれば次の電車を待つ」という発想に至らないのは、会社があまりにも遅刻に厳しいからだと分析していた。
記事の中には、40代の男が「大事な会議に遅刻できない」と思って、運転見合わせ中の電車から線路に飛び降りて、駅に向かって走り出したというニュースのリンクが貼られていた。
「会社の大事な会議に遅れてはならない」 停車した列車を降りた男性会社員のその後 Jcastニュース
ここまで極端でなくても、同じように「会社には絶対に遅刻できないから、他人を押し込んででも、満員電車に乗車する」ということを日々選択している人もいるのではないだろうか?
だが、私はこう思う。
「会社の人は、あなたがそんな醜い姿を晒してまだも、時間厳守することを望んでいると思っているのか?」
以前、外資系の会社で働いていた時に、汚職や賄賂に関する研修動画を視聴することになった。
その会社はアメリカに本社があり、研修用のビデオは英語版で作られた物に日本語の字幕が付けられていた。
そのため、時折、ビジネスシーンではあまりお目にかからない拙い日本語が登場してきたのだが、逆にそのことで記憶に残っているシーンも多い。
その中のひとつにこんな言葉があった。
「私たちは、あなたが不正を犯してまで、売上を拡大したり、ノルマを達成することを望みません」
これは満員電車に無理やり乗り込んでくる社会人落第生の人間にも教えるべきではないかと思う。
もしも、会社や上司がそんなことを望んでいると宣言したら、そいつは間違いなく「目的のためには手段を選ばず」という極悪企業(人)である。
そんな人間に関わっていたら、今後、間違いなく重大な不正に巻き込まれるため、すぐに転職することをお勧めする。
・外国人が恐れる東京の通勤ラッシュ
2019年の年末に、こちらの記事で日本のポルノメディアに興味を持ったタイ人の話をした。
彼は日本が好きで、タイで行われる日本のイベントに参加したり、日本語が書かれた画像を送ってくる程の日本好きだったが、日本ではアダルト系のメディアが区分けこそされているものの、本屋やコンビニの商品棚に堂々と陳列されていると知って驚いた。
彼に限らず、「日本人は公共の場で性の話をすることをタブー視している」というイメージを持っている外国人は多く、彼らは実際に日本にやって来たら、アダルト用品があまりにも当たり前のように、(それこそ子どもでも目に入る場所で)販売されていることにカルチャーショックを受けている。
私が聞いたところ、この話と同じくらい、外国人が来日前のイメージと違って驚くことが、電車内のマナーの悪さである。
たとえば、観光で東京を訪れたフランス人は、電車に乗っていたら、満員なのに無理やり乗り込んだり、体当たりした上に一切謝らない人が多すぎてカルチャーショックを受けたという。
その他にも、列には並ばず割り込むことが常態化して、「日本人は親切で礼儀正しくて、些細なことでもルールを守る」というイメージは崩れ落ちた。
まあ、無言の体当たりに関しては、「乗降の際に、ドア付近でイヤホンを付けてスマホを見ながら進路を塞がれたため、やむを得なかった」という言い分もあるため、一概に悪だと言えないが、通路を塞ぐ奴の存在も含めて「マナーが悪い」と言える。
ルールを守らない外国人に対して、「郷に入れば郷に従え」と偉そうに説教しているバカがいるが、少なくとも、東京の通勤電車でマナー違反を犯している外国人からは、「え!? だから郷に従っているやん」と言われたらそこまでである。
当人たちは、自覚がないのかもしれないが、東京の通勤ラッシュはそれ程までに、無法者が跋扈する危険地帯なのである。
ちなみに、私はフィリピンのマニラという都市に留学をしていたことがある。
マニラは「治安が良くない街」というイメージがあるためか、日本でその話をすると「え!? そんな危ない場所に住んでいて怖くなかったの!?」言われて、驚かれることがある。
だが、私に言わせれば、東京の通勤ラッシュ時に歩く時の方がよっぽど怖い。
昨今、テレビやネットでは、「日本人の電車のマナーが素晴らしくて、外国人が大絶賛!!」という類の愛国ポルノが溢れているが、そんなものを真に受けて欲情出来るのは、東京ではない地方在住者か、電車に乗って通勤も通学もする必要がない人(大半は無職)だけだろう。
・皆がやっているから平気
ここまで来ると、「東京は悪人だらけ」と言っているように感じるが、個人的には、大半は極悪人ではなく、「周りの人もやっているから、別に自分も良いだろう」という程度の認識でやっているのだと思う。
電車から離れるが、このブログでも度々取り上げている歩きスマホ問題もそうだし、赤信号でも、一人が横断し始めたら、大勢で進み出す現象も同じことだろう。
「赤信号みんなで渡れば怖くない」という言葉はまさにそれである。
以前、「西日本の某地区の信号のルールは、青は進め、黄色は進め、赤は気を付けて進め」と嘲笑していた人物がいたが、東京では「青は進め、黄色は進め、赤は周りが進んでいたら進め」と言えるだろう。
「窓割れ理論」という言葉がある。
アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した理論で、「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される」との考え方である。
学生時代に生活指導の教員がこの理屈を盾に、些細な校則違反でも徹底的に取り締まっていたことで耳にした方もいるかもしれない。
私はこの理論を全く信じていなかったが、東京で暮らし始めてからは考えを変えた。
ケリング教授、並びに学生時代の先生たち、あなたは間違っていませんでした。
2020年の東京オリンピック開催へ向けて、歌舞伎町の風俗街や渋谷のホームレスを一掃する浄化作戦が行われていたが、本当に浄化すべきは、満員電車や、信号無視、歩きスマホ、電車内のモラルの低い(そして、自覚がない)連中だったのではないのか?
本当なのかはともかく、下記の記事によると、全国で最もマナーが悪い都市は大阪なのだそうだが、電車のマナーに関しては東京の方が悪いと思う。
全国で最もマナーが悪い都市はどこ!?各都市の「マナーの実態」に関する調査結果を発表! | Preply Inc.のプレスリリース (prtimes.jp)
数年前、私はカナダへ出かけた際に、関西国際空港を利用したため、大阪駅から空港まで電車で向かった。
その時は、平日の朝8時くらいに大阪駅から乗車したが(通勤、通学中の皆様には大変ご迷惑をお掛けしました)、東京のような修羅場は経験しなかった。
こんな話をしたら、「東京と大阪では人の多さが違う!!」とムキになって反論する人もいるだろうが、そのような過ちを決して認めない他責思考から、普段のマナーの悪さが生まれるのだろう。