ブラック企業データベースを作ろう

先日、こんな記事を読んだ。

ブラック職場の“バカ社訓”に物議。「ビッグモーター」だけじゃない、パワハラ全開でヤバい会社の実態(日刊SPA!)|dメニューニュース(NTTドコモ) (docomo.ne.jp)

記事の内容を要約すると

  • 今世間を騒がしている、そして盛り上げている、ビッグモーターでは、保険金の不正請求や街路樹への枯葉剤散布のみならず、ブラックな社訓や社内ルール(※)も話題となった。

  • しかし、そのようなバカな社訓を設ける会社は何もビッグモーターに限らない。

  • 記事の中で取材された人物によると、彼のかつての勤務先はビッグモーター並みにヤバい社訓を掲げており、新人研修ではそれを何度も唱和して徹底的に叩きこまれた。

  • それによって、すっかり洗脳され、薄給や上司の暴力も甘受するようになった。

  • 美辞麗句が並ぶ社訓があっても、企業体質は真っ黒だ。

<※:一例として下記のようのものがある>

「幹部には、部下の生殺与奪権を与える」

「会社と社長の思想を受け入れない人は今すぐ辞めてください」

「社内恋愛は二度目まで! 三度目は転職を勧告する」

その記事を読んだ私はとても他人事とは思えなかった。

今の私は職探しをしており、数多くの求人に目を通しているのだが、いつもこんなことを思っている。

「この仕事は好条件なんだけど、実際に働くことになったら、とんでもない裏の顔があるのではないだろうか…」

・こんな会社と分かっていたら就職しなかった

私はこれまでに何度も職を転々としており、勤務初日にこんなことを思った経験は一度や二度ではない。

「事前にそれを教えてくれたら、辞退していたのに…」

そう思ったきっかけは、もちろん、仕事があまりにも不向きだったり、上司や同僚が嫌な奴だったからということもあるのだが、求人情報や面接では決して知らされることがなかった会社独自のルールが原因だったことも珍しくなかった。

その一つに冒頭の記事でも紹介されていたような創業者の有難いお言葉(老害の戯言)の唱和があった。

そのような会社はこれまでも何度か働いたことがあるのだが、彼らの主張はお決まりのパターンである。

  • 下っ端はとにかく、がむしゃらに働け!!

  • 全労働者が経営者としての目線を持て!!

  • 自ら成長しようとしない人間は我が社に必要ない!!

  • 困難から逃げるな!!

  • 仕事や仲間を愛せ!!

  • ワークライフバランスは悪魔の誘惑だ!!

  • 上司とお客様の声は神の声だ!!

あ~、もう書いているだけでムカムカしてきた!!

ちなみに、そんな偉そうなことを言っているにもかかわらず、会社の規模は…(以下自粛)

こんな会社は自ら泥船警報、または避難命令を発しているようなものだから、ある意味では親切なのかもしれない。

そのようなブラック社訓の唱和は、なぜか毎朝のラジオ体操もセットであることが多い。

全く別ものであるはずの両者がこうも親和性があるのはなぜだろう?

呆れるような「ウチの会社ルール」は他にもあった。

たとえば、「屋内の事務仕事にもかかわらず、気温が30℃を超えなければ冷房は付けない」という会社。

しかも、「一定以上の温度に保たないと商品が傷んでしまう」というようなやむを得ない理由ではなく、単に電気代をケチるために。

そこでは夏しか働かなかったが、きっと冬も同様の理由で暖房の使用を制限していたことだろう。

ちなみに、照明も間抜きにする程の徹底したドケチぶりで、従業員用のエレベーターに至っては三階以上離れていないと、ボタンを押しても動かない。

「すべては経費削減のため!!」と謳っているが、その守銭奴ぶりには開いた口が塞がらない。

これは日雇いで働いた工場での出来事だが、その会社には午前と午後に10分ずつの小休憩があった。

休憩なので、その時間は時給の対象となる勤務時間からは控除されている。

にもかかわらず、小休憩ではタバコどころか、水分補給すら禁止されていた。

それ休憩じゃないでしょう!?

そんな醜悪な裏側は実際に就業して、中に入らないと見えないし、面接の場で

「仕事場所は冷暖房の使用制限がありますか?」

「朝礼ではラジオ体操やカルトじみた儀式なんてやっていませんか?」

「詐欺に等しい給料控除制度はありますか?」

などとも聞きづらいから、困ってしまう。

・公的機関で情報公開を

この国の政府はブラック企業対策に取り組んでいる。

しかし、取り締まりの対象はもっぱら長時間労働、パワハラ、マタハラであり、自称体育会系や共産主義国家を思わせるような社訓の暗唱やしつこい社内行事への参加に向けたものではない。

公的機関にはぜひともそのようなブラックな企業文化も取り締まってもらいたいのだが、それらは法的に取り締まりが出来るかどうかは微妙なところである。

とはいえ、それらを野放しにしていては、多くの就職者が「こんなことだったら就職なんかしなかったのに…」と後悔することになる。

なにより、求職者(特に新卒の学生)へ向けては、自社の企業文化や風土がいかに崇高なものであるかを語りながら、その実態をひた隠しにする姿勢は卑劣という他ない。

そのような悪徳企業をお仕置きするためには、従業員による内部告発が不可欠である。

というわけで、公的機関には各企業の労働環境のデータベースを作成して、ネットなどで気軽に見られるよう公開して頂きたい。

自称「働きやすい会社」などという看板より、そのような従業員の生の声の方が、よっぽど信用できる。

企業側はその主張が不都合であると感じたら、反論や弁解をすることは出来るが、情報が虚偽でない限り、たとえ企業に不利益が生じても、削除要請も、告発者を法的手段で訴えることは出来ないものとしよう。

今でも転職や新卒採用のマッチングサイトで企業のレビューを読んだり、書き込むことは出来るが、民間の経営では、スポンサーへの配慮や、名誉棄損として訴えられることのリスクがあるので、思い切って本当のことを告発することは出来ない。

少しでも否定的なことを言われると、自分のことを棚に上げ、発情期のように「誹謗中傷だ!!」と大騒ぎするモンスターが幅を利かせているこのご時世では、悪いことをする奴ほど幼稚な報復に走ることは容易に想像できる。

だからこそ、公的機関が運用して、告発者を保護する必要がある。

って、そもそも、冷暖房の使用抑制も、毎朝の社訓の唱和やラジオ体操も、人権侵害甚だしい新人研修も、飲み会等の迷惑な社内行事への強制的な動員も、すべて(加害者特有の身勝手な理屈であっても)理由を付けて「これが我が社の文化だ!! 伝統だ!!」と言っているのだから、それを公表されたところで何の問題があるというのか?

このような告発機関があればビッグモーターも、大事(おおごと)になる前にボロが出たり、自浄作用にも期待できたのではないか?

とはいっても、「ブラック企業撲滅」を全面に押し出し過ぎると、単なる逆恨みした従業員の悪口くらいにしか思われない可能性もあるため、建前としては「従業員の声による職場環境の透明化」という看板を掲げた方が無難だろう。

もちろん、悪い面だけではなく、良いこと面も公開する形で。

「朝礼での社訓の昭和やラジオ体操によって気合が入る」と考えるM人もいるだろうし、飲み会や運動会の実施が好きという変わった人もいるだろうから、そのような人たちにとっては、「ブラック企業を避けるため」ではなく「好ましい会社を見つけるため」の情報になるだろうし。

・内部情報の暴露は多くの人の利益になる

このブログで度々取り上げているが、私は「正直者がバカを見る」という言葉が大嫌いだ。

今から10年程前に、居酒屋チェーン店ワタミで入社2ヶ月の従業員が過労自殺したことで、市民による抗議活動を目的とした「ワタミで飲まない会」が発足した。

ワタミ自殺問題で広がる「ワタミで飲まない会」 | おにぎりまとめ (eternalcollegest.com)

そのような活動は応援したいし、ワタミを擁護する気も全くないのだが、ワタミと同じく長時間労働を強制して、従業員を過労死、または自殺に追い込む企業は少なからずある。

飲食店に限らず、そのような会社の悪事は徹底的に公開して、ワタミで飲まない会と同様に、市民一人ひとりが「こんなひどい会社の商品は買わない」という不買運動が展開される社会であって欲しい。

そうしなければ、従業員を大切にするという真っ当な労務管理をしている会社がバカを見ることになるから。

このように企業の内部情報を公開することは、就職を考えている人だけでなく、悪徳企業と取引したくない健全な消費者や、まともな会社の利益を保護することにもつながる。

しかも、その方が、一社ずつ立ち入り監査をすることよりも、安上がりな気もする。

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