不届き者に一発かまして何が悪い

先日、めざまし8という朝のワイドショーで気になるニュースを見かけた。

大まかな内容はこちらの記事でも読むことが出来る。

『めざまし8』谷原章介、無人販売の窃盗事件に「1件1件は小さくても…」発言で物議「盗んだ数は関係ない」の指摘も (2023年2月8日) – エキサイトニュース (excite.co.jp)

概要をまとめると

  • 今月4日、神戸市にあるギョーザの無人販売店で手提げカバンを持った男が商品をカバンに入れ、会計をすることなく何事もなかったかのように店を後にする。

  • この店舗では、3ヶ月足らずで6件の窃盗被害が頻発し、警察に被害届を出したが犯人は捕まっていない。

  • 番組では他にも、大田区にあるお肉専門の無人販売店での窃盗被害について紹介し、こちらは馬刺し肉を4種類、計15点ほどに加え、販売金額で約3万円が盗まれる。

  • 店はやむを得ず窃盗犯の顔を店内に張り出し、「万引きはSNS拡散する」という強い口調の警告文を張り出す。

  • この強硬姿勢については賛否両論あるようだが、番組コメンテーターの若狭勝弁護士は「犯人検挙につながって被害を少しでも減らすという正当な目的の下でやっている限りであれば、名誉毀損という形にはならない」と主張。

・逆ギレ甚だしい

私はこのニュースを見て、窃盗犯の顔写真を公開した店の行動を支持したいと思うし、「その行為は名誉棄損に当たらない」という若狭弁護士の発言も頼もしく感じた。

だが、番組が公開した防犯カメラの映像を見ているとある疑問が生まれた。

「窃盗という犯罪行為の現場を報道するのに、加害者の顔をモザイクで隠す必要があるのか?」

今回公表されたのは現行犯の映像である。

世間を騒がす凶悪事件の容疑者は実名や素顔が大体的に報じられるが、警察が逮捕状を取って逮捕に踏み切ることが多いそれらの事件の方が、冤罪であったり、後々裁判で無罪になる可能性があるため、より公開に慎重にならないといけない気がするのに、逆ではないのか?

素顔を晒せない理由があるとしたら、若狭弁護士が触れた「名誉棄損」で訴訟をされるリスクが生まれること。

私は法律のことについては全くの素人だが、たとえ事実であっても、公然の場で、事実を公表されたことで、社会的評価が下がれば名誉棄損罪は成立し、公共の利害に関するものであれば違法性は棄却されるらしい。

名誉毀損の要件とは? 成立する場合と成立しない場合では何が異なるか (vbest.jp)

今回のケースも窃盗犯を一刻も早く逮捕して、これ以上の被害を食い止めることは公共の利害にかかわることであり、顔写真を公開することは何の違法性もないと思われるため、番組でもモザイク無しで放送すればいいのではないか?

そもそも、私には自分の犯罪行為が報道されたことで精神的苦痛を受けたり、社会的名誉が傷つけられたと訴える神経が理解できない。

自分は法を犯して平気な顔で他人を傷つけながら、自分の人権が少しでも傷つけられたら法に守ってもらうとは情けないし、逆ギレ甚だしい。

「盗人猛々しい」とはまさにこのことである。

以前、いじめをテーマにした記事で書いたことがあるが、いじめというものは加害者の方が被害者意識を感じていることが少なくない。

それと似通ったものを感じる。

そんな人間が裁判を起こして名誉棄損が認定されるのであれば、「この社会はどんだけわがままで不誠実な奴に甘いんだ!?」と憤慨してしまう。

私はこのような最低な無礼者や犯罪者にはそれなりの報いがあってしかるべきだと考えている。

・無実の人を傷つける告発

実践できていない私が言うのものなんだが、不正を告発する時は顔だけでなく、ピンポイントで実名を出した方がいいと思っている。

相応の社会的制裁を与えることはもちろんだが、理由はそれだけではない。

なぜなら、実名を伏せ中途半端に告発すると、悪人を懲らしめるどころか、正直者がバカを見る結果になる危険性があるから。

これは私が考えた架空の物語である。

現実の世界とは一切関係ないフィクションであることを理解した上で目を通して頂きたい。

私は大手のハンバーガー店で働いている。

その店は食品衛生法に反する行為が日常化している。

公言こそしないものの、「生娘シャブ浸け」みたく、お客に対して差別的で侮蔑的な営業戦略を練り、ライバル店を蹴落とすために、ネットや口コミでこっそりとネガティブキャンペーンを展開している。

「サービス残業」と称した従業員に対する不払い労働も日常茶飯事だ。

私はネットでこの不正を告発しようと思い立ったが、さすがに実名を公表することには及び腰となり、「大手ハンバーガー販売会社M」という名前を用いた。

ちなみに、多くの人はMが頭文字の大手ハンバーガー販売会社と聞いたら、2社を思い浮かべたと思うが、どちらかを判断できる情報は名前以外も全く提示していない。

この告発で一番被害を受けるのは誰か?

それは、同じくイニシャルがMでハンバーガーを販売しているライバル会社である。

実名を出すと、勤め先がマクドナルドであればモスバーガー、モスバーガーであればマクドナルドということになる。

このように実名公表を避けることで、そのライバル会社はルールを守らない競合相手に出し抜かれ、貶められていた上に、あらぬ疑いまでかけられてしまうことになる。

悪に手を染めた当事者の社会的名誉が損なわれることは自業自得だが、このような風評被害を生まないためにも、実名で「ビシッ!」と一発お見舞いする方が遥かにフェアであり、世のため、人のためなのである。

・お金を貰えず汚名だけ着せられた政治評論家

実名公表を避けた告発によって、無実の人が汚名を着せられるケースをもう一つ紹介しよう。

今から10年以上前の2010年、小渕内閣で官房長官を勤めていた野中広務氏が、官房機密費という使途を公表しないお金を毎月5千万~7千万円使っていたことを暴露した。

asahi.com(朝日新聞社):野中広務氏「官房機密費、毎月5千万~7千万円使った」 – 政治 (archive.org)

野中広務が政治評論家に官房機密費渡したと証言「断ったのは、田原総一朗だけ」と|LITERA/リテラ (lite-ra.com)

「官房長官」が渡そうとした機密費は1000万円 田原総一朗氏が驚きの実態を明かす: J-CAST ニュース【全文表示】

そのお金を受け取っていた人物には政治評論家も含まれており、評論家で受け取りを拒否したのは田原総一朗氏だけだったという。

この暴露話によって、一番得をしたのは田原氏だろう。

テレビや新聞で厳しく政治を批判している姿に違わぬ気骨と清廉潔白な姿勢が証明されたのだから。

一方、一番損をしたのは、裏金を貰った悪人ではなく、お金を貰えなかった上に、受け取った疑惑を持たれた(しかも、自身は大物政治家からは見向きもされない小物と認定されていたことが判明して悲しい思いをした)評論家やジャーナリストの人たちである。

「普段は偉そうに政治批判をしているクセに、裏で政治家にお小遣いをもらって恥かしくないのか!?」

メディアに出演する度に、そんな罵声と冷たい視線を浴びせられたに違いない。

「評論家にお金を渡して、受け取りを拒否したのは田原さんだけ」

その言葉にウソはないのかもしれないし、野中氏も「今さら彼らの実名を公表しても、いたずらに傷つけるだけだから止めておこう」と思ったのだろう。

しかし、政治家と癒着する堕落したジャーナリストの名誉が傷つけられることよりも、そうではない人の名誉を守ることの方がはるかに大切ではないのか?

彼らの名誉のためにも、野中氏はお金を受け取った評論家の名前を公表すべきだったと思う。

・正直者がバカを見ないために

今回の記事で私が一番言いたかったことは「正直者がバカを見るような社会であってはならない」ということ。

自分が破廉恥なことをやっておきながら、それを暴露されたり、反撃されたら、自分のことを棚に上げて被害者ヅラをして「誹謗中傷だ!!」、「名誉毀損だ!!」と声高に権利を主張して保護を求める姿には呆れる。

この社会はそんな品性下劣な行動を許さず、それらの不届き者に対する反撃する権利は断固として保障されなければならない。

事実無根の言いがかりや、差別によって攻撃される場合はともかく、反論があるのなら、言論で対抗すればいいだけである。

「最近の子どもはケンカの仕方も知らない」という話を聞くことが少なくない。

少子化で子どもの数が減ることで親も過保護になり、子ども同士のケンカは大人がすぐに止めたり、学校や部活で体罰のような厳しい指導を行うものなら、すぐに「パワハラだ!」、「人権侵害だ!」と大騒ぎする。

その結果、自分自身で戦ったり、困難に立ち向かおうとせずに楽な方へ逃げる甘ったれが増えたのだと。

しかし、それは子どもに限らず、大人も同じようである。

スポンサーリンク