今の私は派遣社員として事務職に就いているが、契約終了の目処が立っているため、先日派遣会社から次の仕事の希望についてヒアリングがあった。
そこで、私は今後も事務職を希望する旨を伝えると、担当者からこんなことを言われた。
「事務職はどの職場も経験者を求められていますが、早川さんはすでに十分な経験がお有りのようなので、その点は問題ではないと思われます」
そうか…
私もそんなことを言われるようになったのか…
この記事で書いた通り、かつて肉体労働のアルバイトの経験しかなかった時は、土日祝日で、座り仕事で、給料も高い派遣の事務職に憧れていたが、「未経験」を理由にことごとく門前払いにあった。
ようやく初めて事務職を経験することができたのは上京後、20代後半となった時である。(就業先はこのブログのトップアイドルマネージャーX氏がいた職場)
そこからいくつもの職場を転々として数年が経過した。
定住することはなかったが、派遣先から一定の評価を与えられるようにはなった。
というわけで…
「これからも、どんどん事務経験を積んで、益々スキルに磨きをかけるぞ!!」
…とは残念ながら思えない。
決して、仕事にやる気がないというわけではない。
私が今後も事務経験を積むことに前向きなれないのは、これまでに事務経験10年以上を超すというベテランと共に働くことが多かったのだが、「この人、本当に経験者なの!?」と疑うことが少なくなかったからである。
・本当に経験者なのか?
昨年の末、2022年に後悔した出来事として、派遣の仕事を自己都合で退職した話をした。
その中で、同僚の派遣社員の女性が登場した。
彼女は私と同じ日に就業開始したのだが、業務の割当量が明らかに不公平だった。
具体的な数字を出すと、同じ業務であっても、割当量が毎日のように「8-0」や「10-1」(多い方が私の担当)というアンバランスだった。
ちなみに最大の差は「24-0」である。
しかも、私は担当するが、彼女はまだ教わっていない業務もひとつやふたつではなかった。
こうして見ると、まるで私が会社からいじめを受けているように見えるが、私自身「上司がそう仕事を割り振るのも仕方ないかな…」と納得せざるを得なかった。
彼女は恐ろしく仕事のペースが遅いのだ。
彼女は私よりも年上のようだったが、事務職は未経験なのか?
そんなことを思っていたが、彼女はその職場で働くまでは他社で派遣の事務職を10年以上勤めた経験があるとのことだった。
それを聞いた時は「よくそれで今まで生き残れたな…」と驚いた。
しかし、思い返してみると、事務経験の年数が豊富でありながら、「この人、大丈夫か?」と感じる人はこれまでにもいた。
私が出会った相手は全員女性だったので、ここでは「彼女たち」と呼ばせてもらう。(ちなみにこの男は論外なので、それにすら値しない)
彼女たちは決して、やる気が無かったり、ノロノロしているわけではない。
とにかく要領が悪いのである。
・経験を活かせる場では…
私からすると、彼女たちはどうでもいいことに気を使い過ぎて、常にいっぱいいっぱいになっているように見えた。
先ず、分からないことをすぐに質問しない。
仕事の説明をされる時はイメージできないことも多いため、そこで質問しないのは仕方ないのかもしれないが、作業中に壁にぶち当たった時でも、人に進展状況を訊ねられるまで自分から聞きに行こうとしない。
上司や同僚がマニュアルモンスターでなくても。
それから、上司が最終確認を行うことでも、提出前にセルフチェックを入念(というか過剰)に行う。
隣で見ていると「ミスを指摘されたら、罰金でも取られるのか?」と言いたくなる。
そして、一番の問題はあまりにも仕事の引き出しがないことである。
派遣先の社員は細かい作業工程については把握していないことが多いため、「今日からここのやり方をこのように変えてスピードアップを目指しましょう」と教えてくれることは滅多にない。
また、派遣社員同士が個人的に仕事の意見交換をすることはあっても、誰かが主導して改善を呼びかけることはないため、各自で工夫したり、上司に相談したりしなければならない。
そんな時こそ、これまでのキャリアが活きるはずだが、彼女たちはそこで全く力を発揮できないのだ。
Excelの関数やデータの並び替えはほぼ素人の私がネットで調べたにわか知識を「そんな方法があったんですか…」と有難がる程である。
パソコンを使わない書類整理業務においても、広いスペースで作業せず、頑なに自身のデスクから動かなかったり、反対に、狭いスペースしか使えないのに、量を分割することなく、一度にまとめてやろうとして、書類がグチャグチャに散乱することもあった。
私は「何であんた今まで何年も事務職を続けられたの?」と聞きたい衝動を抑えていたのだが、最近は全く逆の考えが浮かんだ。
「他の業務にこそ、一般事務の仕事に役に立つ知識があり、彼女たちはそれがないから四苦八苦しているのではないか?」と。
・0と1は大違いだが、1と10はそこまで変わらない
たとえば、私がやったことで、彼女たちが「目から鱗」とでもいうように驚いたものにこんなことがある。
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段ボールを縛っているバンドルを外す時は繋ぎ目を裏返しにして手前の側を引けば、カッターを使わずに外せる。
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シールをまとめて台紙から剥がす時は、横一線に曲げて角を机の縁に引っ掛ければ、一気に剥がすことができる。
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狭い場所で100ヶ所の行き先の書類を仕分けする時は最初に1~50まで並べながら、51~100はまとめて外しておき、前半を片付け終えてから、机の上で仕分ける。
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印刷時間が長い時は複数回に分けて印刷し、最初の印刷をしている間に、それ以降の印刷分のデータの並び替えなどを行って、時間を有効活用する。
これらはすべて工場や販売など別の職種での経験が役に立っている。
もし、私が事務一筋のキャリアを歩んでいたら、そのことは気付かなかったかもしれない。
逆に、私が彼女たちの仕事が遅い原因だと考えている過剰なマニュアルの読み込みや、提出前のセルフチェックの多さは、事務職に就くまで一切考えていなかった。
私自身、それが欠如していると叱責をされたことはあるのだが、これまでの経験から、「そんなもの不要」と全く相手にしてこなかった。
要するに、私と彼女の差はそこから生まれるものが大きいのではないか?
そして、彼女たちは事務職に適応した結果、(私から見たら)非効率で無駄が多い面にドップリと浸かり切っているのではないか?
冒頭でも説明した通り、若い時に事務職に就きたかったものの、未経験を理由に断られ続けた私にとって、「事務経験豊富」という肩書の人は眩し過ぎる存在だった。
実際に働いてみた感想だが、未経験者と1年の経験年数がある人は大きく違うかもしれない。
上司やリーダーからひとつひとつ指示を出されるのではなく常に自分でメールをチェックして仕事のペースを管理したり、メールや電話での社会的なルールの理解、Excelの基本操作などは、経験者と未経験者では大きな差が出る。
だが、経験年数1年と10年では、その差がスキルに直結しているとは思えない。
事務職でも、経理、法務、貿易といった専門知識が必要な仕事であるのならともかく、一般事務だけでは、数十年の経験があっても、大きなスキルになるとはいえず、やる気や他の職種の経験次第ではすぐに新参者に足を掬(すく)われる可能性が高い。
「全くの未経験は困るけど、経験年数豊富なベテランよりも、物覚えがいい若者の方が欲しい!!」
事務員募集の際にそんなことを望む会社はムシが良過ぎる気がするが、残念ながら理に適っていると認めざるを得ないのかもしれない。