多くの人が事務職に就きたがるのは当たり前ではないのか?

もう5年近く前に書かれたものだが、こんな記事がある。

「事務希望の女性」が多すぎるという大問題 | 高城幸司の会社の歩き方 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 (toyokeizai.net)

この記事が書かれたのは2016年であり、経済状況が今と異なることに注意して読んでもらいたい。

要約すると:

2016年当時は人手不足が問題となっており、どの企業も人員の確保に苦労していた。

・だが、どの会社も一般事務の仕事は供給過剰。

・その原因は求職者の数が多すぎるからである。

・特に女性は大半が事務職希望者。

・責任の重い仕事はしたくないとか、プライベートを充実させたいという理由でオフィスワークに固執せず、他の職種も視野に入れるべき。

私は正社員として事務職に就いた経験はないが、派遣社員や契約社員として働いていた経験はある。

初めて事務職に就いたのが20代後半の時で、実際に働く前までは事務職に対して「(工場や販売の仕事と比べると)楽で、安全だが、給料は高いお得な仕事」というイメージを持っていた。

そして、実際に働いて確信した。

そのイメージは事実だと。

・働く前の予想と実態

以前この記事で私が実際に働く前に抱いていた「事務職」のイメージをいくつか抜粋した。

事務職とは:

:冷暖房完備で綺麗なオフィスで快適に働く

:土日祝日は休日

:仕事中は自由に飲み物やお菓子を口にできる

:包丁や電動工具などを使う危険な業務は一切なし

:体への負担も一切なし

:座り仕事なので、多少体調が悪くても無理なく仕事ができる

:最終確認はすべて責任者が行うため、ミスは大ごとになる前に気付く

初めて事務の仕事に就いた時はこの記事に書いた通り、⑦以外は事実だったものの、上手くいかなかった。

今になって思うと、あの仕事は契約形態こそ派遣社員だったが、他の会社では正社員が行う業務だったようである。(実際に「この仕事は派遣の仕事ではない」と言って退職した人もいた)

その上、上司はこんな奴である。

だが、その次に短期で派遣の仕事に就いた時は天国だった。

そこでは主に、書類の開封や仕分け、データ入力などを行っていたのだが、ペースが遅い人に合わせているためか、スピードはかなり緩く、「作業が遅い!!」などと怒鳴られることもなかった。

特に期間限定の短期で大量にスタッフを雇うような案件は、人海戦術で期限内にプロジェクトを終わらせることが目的であり、派遣先は離職者を出さないようかなり気を使っている。

たとえば、「指示を出す側が絶対に高圧的な態度を取らない」とか「12時間ごとに小休憩を入れる」とか。

私も実際に働いて驚いた。

こんなに優しくしてもらってバチでも当たるのではないかと。

同じ短期の案件でも工場の仕事ではこのような対応は絶対になかった。

その次に働いた事務職は長期の案件であり、こちらは自分の担当業務を持つことになったが、それでも膨大な量の仕事を押し付けられることはなく自分のペースで仕事ができた。

残業をすることになった時も、繁忙期に数回だけだった。

それも、期限は翌日だったため必ずしも残業する必要はなかったが、当日にアクシデントが起きてしまうことを想定して、自発的に「前日までに済ませておこう」と思ったため、行ったものである。

そして、土日祝日は完全に休日だった。

・今となってはあの時の仕事に戻れない

前段で挙げた、私が「事務職」に抱いていたイメージはほとんどが事実だった。

その他にも気づいたことをいくつか紹介したい。

:自分のペースで自分の仕事だけをやればいい。

事務に就く前は販売の仕事をすることが多かったが、私はどちらかというと、レジ打ちではなく、バックヤードで仕分けや加工をすることがほとんどだった。

その仕事は「何が自分の仕事」とは決まっておらず、自分で足りないものを補充するということはあったが、基本は仕事量と出勤者を見て上司が何をやるかを指示していた。

そのため、自分のペースで仕事をコントロールすることは不可能だった。

だが、事務の場合は毎日やることが決まっている。

急な頼まれごとを除くと、他人の仕事を担うことはないし、逆に自分の仕事に他人が介入することもないため、毎日の仕事量も自分で調整できる。

そのため、自分のペースで無理なく仕事を進めることが可能である。

工場で働いた時は専任で自分の仕事が割り振られたことはあったが、それはあくまでも作業工程の一部に過ぎない。

会社は営業しているのに、自分が休んだ場合は他の人の作業にも影響が出てしまう。

だから、仕事は自分一人でこなすと言っても、出勤日に自分だけが休むということは難しい。

しかし、事務の場合は一人で完結することが多く、「期限内に終わらせることができる」と判断すれば、他の人に気を使うことはない。

これは事務職の大きな特権である。

:自由にトイレへ行ける

先ずはっきりさせておかなければならないが、販売だろうが、工場だろうが「仕事中はトイレへ行けない」という職場は一つもなかった。

だが、事務の職場ではトイレに行く度に責任者に「トイレへ行ってきます」と報告する必要もないことが多い。

過敏性腸炎持ちで頻繁にトイレへ行くことが多い私には、これは大きなアドバンテージである。

まあ、そのせいかこんなデメリットもあるわけだが…

:制服がない

女性は制服を着用しなければならない職場もなくはないが、男の事務職で制服を着用しなければならない職場はそう多くない。

「制服はなくとも、スーツを着なくてはいけないではないか?」

と思う人もいるかもしれないが、重要なのは服装自体ではない。

私が初めて事務職で働いて驚いたことは始業時間の2,3分前に会社にやって来る同僚が珍しくないということだった。

これは職場で着替える必要がないためだと思われる。

ロッカーで着替えなければならない場合は、タイムカードを押すのは着替えた後でなければならない職場も多い。

そのため、少なくとも10分以上前から会社に到着しなくてはならないことが珍しくない。

理不尽な話だが、それができない人は問題児とみなされてしまう。

: 仕事場やトイレの掃除のような雑務は業者へ外部委託

これは会社の規模によると思われるため、一概に言えないが、実際に働いて最も驚いたことは、職場の掃除を一切やらなくてよかったことである。

せいぜい、自分の机の周りの整理整頓だけ。

しかも、出勤時には置物の配置が若干変わっていることから、退勤後(もしくは出勤前)に業者の人がデスクの上も掃除してくれていたと思われる。

これまでの経験から、職場の掃除は自分たちで行うことが当然だと思っており、それをやらないことに違和感さえあった。

念のために言っておくが、私は別に掃除そのものが「面倒だ」とか「掃除を行って汚れるのが嫌だ」と感じたことはない。

だが、ゴミ袋を一枚ポシャらせただけで、鬼の首でも取ったかのように「コスト!! コスト!!」と騒いだり、「掃除には人間性ややる気がはっきりと表れる」などと言って、できていない箇所をネチネチと、嫁をいじめる姑のように指摘されたり、酷い所では終了時刻の後に掃除を行わなくてはならない会社もあった。

そのため、そのような掃除を一切行わなくていいのは意外と大きなメリットである。

このように、事務職には販売や工場のような軽作業系の仕事と比べて、良いことが盛りだくさんである。

それでいて、時給は200円近く違う。

それじゃあ、みんな事務に行きたがりますわ。

私自身も事務職になれきった今では、(土日祝日の出勤は特に苦ではないものの)これまでのような立ち仕事で、時給が低く、掃除を自分で行わなくてはならない仕事に戻れる自信はない。

・改善できること

そうは言うものの、この世界には事務職以外の仕事も必要であり、それらは社会を支える大切な仕事である。

というわけで、それらの仕事に従事している人を少しでも楽にする方法を2つほど提案したい。

:掃除は専門業者に委託する

先述の通り、私が事務職で働くことになってもっとも驚いたことのひとつは、掃除を自ら行う必要がなかったことである。

最初に就いた事務職は外資系の会社だったため、これは外資特有の傾向かと思ったが、そうではなかった。

このように、事務職では掃除を専門業者へ委託することが珍しくない。

だが、よくよく考えると、事務職は自分たちで掃除をやる必要はないが、販売や工場はやらなければならない理由とは何だろうか?

業務内容に含まれていると言えばそれまでだが、それでは時給は事務の方が高いことが説明できない。

というわけで、これらの仕事であっても同様に掃除は専門業者に委託してみてはどうだろうか。

:着替え時間を労働時間に含める

販売や工場の仕事では制服を着用しなければならないことは珍しくなく、それはある程度、仕方がないことである。

だからこそ、制服への着替え時間を業務時間とみなすことは当たり前ではないのか?

これは着替えだけでなく、その他の雑務に関しても同じことが言える。

先ほども紹介した通り、私が以前勤めていた会社では、終了時間まで作業を行って、その後に、掃除や片付けを行わなくてはならなかった。

自分たちで掃除を行わなくてはならないだけでも、ハンデを負っているのに、その時間が労働時間に含まれないとは一体何事だろうか。

また、これは私の実体験ではなく同僚から聞いた話だが、彼女が勤めていた会社は、始業時間は9時であるにもかかわらず、毎日850分から朝礼を行っていたらしい。(当然、その10分間は無給)

そんなバカな話が通るのだろうか?

ちなみに、その職場は万年人手不足だったらしい。

それは当たり前である気がするが…

職種によって、立ち仕事であることや給料が少ないことは仕方がないと思う。

だが、着替えや朝礼のため、始業時刻10分前に出勤しなければならなかったり、自分の作業スペースはおろか、職場全体を自分たちで行わなければならないハンデがあるにもかかわらず、あえてその仕事を選ぶ人がどれ程いるのだろうか?

本当に人手不足が深刻なら、掃除は外部業者に委託したり、朝礼はもちろん、着替え時間も勤務時間に含めるなど改めるべきところは多いにある。

きっと、これこそが、彼ら日本企業が大好きな「カイゼン」なのだから。

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