人手不足は労働者にとって損得どっちなのか?

先日、電車に乗っていると、近くに座っている二人組の女性がこんな話をしていた。

女性A「最近、新しく入った若い子が今週から仕事を休んでいるんだ。多分もう来ないだろうなあ…」

女性B「え!?」

女性A「人手不足だったから、簡単な仕事を手伝ってくれるだけで有難かったんだけど、マネージャーは早く戦力にしたくて、いろいろ詰め込み過ぎたのが原因じゃないかと思う」

女性B「それはひどい!!」

女性A「私も限界なんだけど、残る人(同僚)へのしわ寄せを考えると無責任に退職できない」

「人手不足」

コロナの蔓延以来、耳にする機会は減ったが、業界によっては今日でも続いているようである。

当事者にとっては「大変」という一言では片付けられない重要な問題だろう。

思い返せば、コロナ前は人手不足が話題になっていたものの、ほとんどは

「人手不足による倒産が増えて大変だ!!」

「いや、人手不足だからこそ、労働者の需要が増えて給料が上がる!!」

というような経済面の話が多く、先の2人の会話のように、実際に働いている人の声を拾った話はあまり聞かれなかった。

私もこれまでに何度か「人手不足」と言われていた職場で働いた経験がある。

自身の経験を通して感じたことは、「労働者にとって、人手不足がいいことなのか、それとも悪いことなのかは一概に言えない」ということ。

いいこともあったし、悪いこともあった。

それをどちらと感じるかも人によって違うだろう。

とういうわけで、今日は人手不足によって私がどのような影響を受けたのかについて話をしたいと思う。

なお、今回はあくまで一労働者が感じたことを書いているだけであり、最後までお目通し頂いても、「どうすればいい」というような解決策は明記していないことをご了承いただきたい。

・人手不足で苦しんだ職場

私が勤め先の人手不足によって苦しい思いをしたのは、「辞められない」、「休めない」ということ。

それに尽きる。

私が初めて「人手不足」という言葉を実感したのは、このブログでもブラック企業の代表例として取り上げたコンビニでアルバイトとして働いた時である。

その職場は「こんな所もあったのか…」と驚くほど、ひどい労働環境だった。

具体例を挙げると、

  • アルバイトであってもシフトは曜日で固定され、所定のシフトの日に欠勤するとペナルティとして翌週から勤務時間を減らされる。

  • レジの金額が合わなかったら、差額を払わされる。

  • 商品をダメにした時も自己責任で弁償させられる。

  • 「仕事は習うよりも慣れろ」と言われ、商品やサービスの知識、機械操作の研修は一切行われない。

  • 上司に当たる副店長はこんな女(鬼ババア)

:もっと知りたい方はこちらをご覧いただきたい。

この仕事が辛いと思っていたのは私だけでなく、私が働き出す前月に2人が短期で退職していた。

私は1ヶ月で退職の意志を表明したが、元からの人手不足に加え、数日前に応募してきた求職者が私と同じシフト希望だったことから不採用にしたことも重なり、オーナーは大激怒。

「どうしても辞めるのなら、お前が代わりの奴を連れて来い!!」と脅されたため、嫌々続けることになった。

当然、オーナーのわがままに付き合わされて仕事を続けたからといって、上記のブラック環境が改善されることはなく、辞めるまでは地獄の日々だった。

なお、その後の顛末はこちらの記事をご覧いただきたい。

これは人手不足により嫌な職場を辞められなかったケースだが、休めなかったケースもあった。

このブログで度々登場する「モーレツパート班長」という人物がいる。(初登場はこちら

彼女は60歳を過ぎたパート労働者だが、最低賃金に毛の生えた程度の手当で、「班長」という立場を与えられ、自分の仕事にプライドを持っていた。

それだけであれば結構であるが、問題は私たちに対してもそれなりの仕事を求め、厳しく「売上!!」「利益!!」「効率!!」と迫っていたことである。

ある日、店長が利益に余裕があるため、パートをもう一人雇うことを提案したことがあった。

しかし、班長は「皆がもう少し頑張れば、大丈夫」と言って、店長の申し出を断り、募集しないことを選んだ。

数週間後、ベテランパートの一人が腕を痛めた。

検査の結果、骨折であることが判明し、彼女は2ヶ月に渡り長期離脱を余儀なくされた。

その間、私を含むメンバーは週1日しか休めない日々が続いた。

もし、あの時、班長が店長の申し出を受け入れて、人員を増やせば、こんなことは避けられたはずである。

ちなみに、私は英検の試験を受けるために日曜日に休みを入れたことで、次の休みである翌週の火曜日まで、1週間以上働き詰めとなるシフトになった。

それだけでも十分きついのだが、連勤の最終日、週6日勤務の無理が祟ったのか、班長がぎっくり腰を発症させ、数日間働けなくなった。

その結果、私の休みはその週の土曜日まで延期され、結局13連勤になってしまった。

増員を拒否した班長が腰を痛めるだけなら、「自業自得」と言えなくもないが、そのことで、店が回らなくなり、他人にこんな連勤を強いるなど全く迷惑である。

余談だが、班長の離脱後、レジの担当者が応援に来てくれたが、彼女は普段からレジ係のスタッフのことを見下していたのであった。

そんな人たちに尻拭いしてもらうとは、何とも情けない話である。

・人手不足で得するになった職場

今度は逆に人手不足が味方した時の話をしたい。

人手不足が労働者に得になることは、「わがまま」と言っていいのかは微妙なところだが、多少の自己都合も許されることである。

この記事で留学準備のために社員よりも多くの勤務日数をこなした話をしたが、実はその職場で働き始めた時は週4日程度の勤務だった。

その上、1日の勤務時間は6時間である。

私は1年で留学費用を貯めるつもりだったが、それでは不可能なことは明白だった。

そう考えて、シフト表が出てすぐに工場長に相談したが、「今の状況では仕事がないから無理」と一蹴され、ダブルワークを提案された。

それは嫌だったが、どうしても留学したかった私は、すぐに掛け持ちで働ける別のバイトを探した。

しかし、そう上手く行かず、2ヶ月近くが経過した。

その頃になると、仕事が増えたことに加え、一人が退職、もう一人が勤務中のケガで長期休暇に入り、職場は一転して人手不足状態になった。

すると、以前は「これ以上シフトを増やせない」と言っていた工場長が、「これからしばらくは41休で入ってくれないか?」と申し出てきた。

41休となると、およそ月に25日勤務となり、隔週は週6日勤務となる。

それはきつかったが、私は「これはチャンスだ」と思い、「その勤務日数を受け入れる代わりに17時間勤務にして欲しい」と提案した。

後に、当時の状況では17時間勤務では明らかに供給過剰だったと判明したが、工場長は「この状況ならやむを得ない」と思ったのか、私の提案を受け入れてくれた。

この時、私の希望が通ったのは紛れもなく人手不足が追い風となったからである。

もう一つの事例は、未遂に終わったものの、担当する仕事の内容についてである。

この記事で初めて事務職に就いた時の話を紹介した。

そこでは派遣社員として働いていたものの、同僚曰く、「以前正社員として働いていた職場よりもやることが多い」というくらい、覚えることがたくさんあった。

しかも、管理しなくてはいけない外国人スタッフは例外なく時間を守ってくれず、私の業務は日々滞っていた。

そんな職場で体調を崩したこともあり、私は二度目の契約更新の時点で退職を申し出た。

だが、その当時は正社員の産休や、定着しない派遣社員によって、人手不足が深刻化していたらしく、退職表明の数日後に教育担当者から呼び出されて、こんなことを言われた。

  • 「仕事の責任が重い」というのであれば、担当業務の指示はこれまで通り、上司がすべて出す。

  • まだ教えていない業務も、今まで通り、別の人に手伝ってもらうから、これ以上、何も新しいことを覚えなくていい。

  • 今やっている仕事をする以外は他の人の手伝いをすればいい。

  • 外国人スタッフが連絡を怠って業務に支障が出ても、非難しない。

だから辞めないでほしい。

結局、私は退職することを選んだが、今にして思えば、これはとんでもないボーナスステージだったと思っている。

おそらく、正社員が産休から戻ってくるまでつなぎ役としてだっただろうが、その間は楽な頼まれ仕事だけやればよかったのだから。

もしも、人手不足でなければこのような申し出はなく、「はい。今までご苦労さん。せいぜい契約終了日まで頑張ってね」くらいにしか言われなかっただろう。

実際に人手不足の恩恵を得ることはなかったが、あの時私が柔軟な考えができていたら、自分にとっても、会社にとっても幸せになれる道を歩めたのかもしれない。

・まとめ

以上、人手不足によって、私が苦しんだことと、得をしたことの両面を取り上げてきた。

人手不足は「辞められない」、「休めない」に加えて絶望感も大きなマイナス点になると感じる。

「募集しても、応募者が誰も来ない!!」と嘆くものの、賃金や勤務時間のような労働条件はもちろん、職場の雰囲気も最悪なことを日々痛感しているため、

「そりゃ、こんな職場じゃ誰も働きたいなんて思わないだろうな…」

「働き出しても、すぐに逃げ出すだろうな…」

という悪い考えしか頭に浮かばない。

ちなみに、強引に引き留められたものの、退職に対して申し訳ないという気持ちは一切なかった。「こんな会社は潰れた方が社会のためだ」と思っていたし。

2社目の場合はすでに退職を表明していたため、そこまで苦痛を感じることがなかったのは救いだったが…

もう一つ感じたのは、巷でよく言われる「人手不足の解決策として賃上げ」は少なくとも、すでに働いている職場では見られなかった。

その恩恵を受けられるのは、これから職に就く人たちであり、すでに職を得ている場合はほぼほぼ関係ないと言える。

さて、これを読んでいる方は、今まさに職場が人手不足に陥っており、大変な思いをしているかもしれない。

この記事が何かの参考になるかは疑問だが、他人の体験談として目を通すことで、心を落ち着かせたり、冷静な判断を下すための材料としていただけたら幸いである。

スポンサーリンク