コロナ終息後もテレワークを続ける方法はこれしかない

毎年2月頃になると「春闘」と呼ばれる言葉を耳にする。

これは「春季生活闘争」の略語で、労働組合が使用者(経営者)と労働条件について交渉し、3月頃に企業の回答を得て、新年度がスタートする4月には新しい労働条件で就業することになる。

連合|コラム 「春闘」ってなに? (jtuc-rengo.or.jp)

今年は30年ぶりの高水準となる賃上げを実現できたということで、少し前に話題になった。

春闘賃上げ率は30年ぶりの高水準へ-今後の焦点は賃上げの持続性とサービス価格の上昇ペース |ニッセイ基礎研究所 (nli-research.co.jp)

岸田首相も先月行われたメーデー中央大会に出席し、自らが推し進める賃上げへの道が着々と進んでいることの喜びと、これからも改革を続けることを表明した。

令和5年4月29日 第94回メーデー中央大会 | 総理の一日 | 首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)

昨年から物価高が続くこの国で、このような賃上げが行われることは喜ばしいことかもしれないが、私には気がかりがある。

・労働者を見捨てる組合

今年に限らず、春闘のニュースを見ていると、いつも賃上げを巡る攻防が焦点になっているのだが、私は「本当に賃上げが、労働者が最も経営側に望んでいることなのか?」と疑問に思っている。

たとえば、昨年からコロナが徐々に収束に向かうにつれ、在宅勤務を終了する困った企業が増えた。

しかし、この記事によると、なんと84%もの人が「コロナ終息後もテレワークを継続したい」と思っているという。

コロナ収束後もテレワークを続けたい人は84%。その理由とは? – サーブコープブログ (servcorp.co.jp)

私はコロナ期間中もずっと出社していたが、多くの人が在宅勤務をしていたおかげで、快適な通勤というメリットを恩恵を受けることが出来た。

それが終了してしまうと、コロナ前と同様に通勤ラッシュの地獄を味わうことになってしまう。

そのことについては昨年から何度かこのブログでも取り上げていた。(詳しくは文末にリンクを載せている関連記事を参照頂きたい)

具体的な統計は見たことないが、「給料の据え置きは我慢できるが、テレワークの廃止は我慢できない」という人も決して少なくないのでは?

彼らの権利を守るために、コロナ終了後も在宅勤務を続けるよう交渉することも、組合にとって大事な戦いと言える。

実際に、在宅勤務を奪われることが、死活問題につながる人もいるのである。

新型コロナ5類移行で在宅勤務廃止 親たちが悲痛な声 転職希望大幅増 | NHK | ビジネス特集

だが、春闘において、組合側が在宅勤務の継続を求めるという話は聞いたことがない。

最近は観光地の混雑が報道される度に「コロナ前の活気が戻りつつある」という言葉をよく聞く。

それがあたかも良いことのように語られているがとんでもない。

コロナ渦の方が以前に比べ、公的な支援や、弱者への優しさ、無理に会社へ行かなくても良いという思いやりが溢れ、よっぽど生きやすい社会になった。

しかし、長年打破できなかった悪しき職場の風習も、多くの子どもを恐怖で溺れ死にさせる水泳の授業も一時的な休止に留まり、完全に息の根を止めるには至らなかった。

その歪みが今になって露になってきている。

そんなものが完全に蘇る社会は、きっと経済の理屈にドップリ浸かった、傲慢で意地汚く、同調圧力や弱い者いじめが跋扈する生きにくい世界になるのだろう。

これからは、「コロナ後もテレワークを!!」と主張する人やマスクを着用し続ける人に対して、恐ろしいペースで迫害が始まることが予想される。

コロナ後のテレワーク廃止に反対の声を上げることは、そんな前近代的な社会への回帰を防ぐためにも重要なことなのである。

・労使協調で在宅勤務の継続を目指す

さて、現状では労組など全く役に立っていないが、私はテレワークを継続させるために頼れるのは労働組合しかないと考えている。

ただし、必要なのは会社の労組ではない。

私の理想は、勤め先に関係なくテレワーカーが団結して、企業横断的な組合を作ることである。

テレワークが終了されることになれば、企業内組合などそっちのけで、彼らが企業に団体交渉を申し入れ、交渉が不発に終わるようであれば、組合員を職場から引き揚げさせる。

そもそも「日本型」と呼ばれる一社(企業)内労働組合であれば、事務も、営業も、現場作業員も同じ組合に入るのだから、職場環境の改善を巡って、労働者が一致団結できるはずがない。

事務職に就いている者が、現場労働者のつらさを理解できないことと同様に、コロナ渦でもテレワークとは無縁の現場仕事をやっている人は「テレワーク継続のために戦うぞ!!」という動機など生まれるはずがない。

そのような組合員たちが立場を超えて一致団結する目的と言えば、給料の引き上げくらいしかないのだから、今の労組が賃上げ実行部隊としての役割しか期待できないのは仕方ないのかもしれない。(もしくは、普段の生活とは全く関係がない政治活動とか)

ちなみに、労働者は権利をガンガン主張すべきだと思うが、経営側を目に敵にすることは得策ではない。

というのも、決してテレワークは企業にとって、経済的にマイナスになるとは限らないからである。

たとえば、JR東日本や関東の大手私鉄数社は、今年に入って運賃の値上げを行った。

その中には通勤定期代の値上げも含まれている。

自腹で定期券を購入している労働者もいるだろうが、多くの会社は従業員の交通費を支給しているため、値上げによって一番の打撃を受けたのは、従業員の交通費を支給している会社であろう。

これが在宅勤務であれば、交通費の支給などないのだから、鉄道会社の値上げなど全く影響を受けなかった。

出社を強制するということは、企業に経済的な負担を強いることになる。

また、これも東京が典型的なのだが、混雑が増加したことで、電車の遅延だけでなくトラブルも増加した。

多くの賢明な読者には説明不要だろうが、たとえ、社外であっても、従業員が通勤中にケガをしてしまうと労災が認められる。

さらに、在宅勤務であれば、寝坊でもしない限り、交通事情が原因の遅刻も起こり得ないし、「会社に行きたくない!!」という動機からメンタルを病む人も圧倒的減ることだろう。

このように、出社というのは、企業にとって高コストかつ高リスクなのである。

にもかかわらず、

「伝統を重視する社風だから」

「皆で顔合わせて仕事をしたいから」

という理由で、頑なに在宅勤務を認めない無能な人間は管理職失格であり、企業にとっても爆弾と呼べる危険人物である。

そんなモンスターは労使一丸となって駆逐しなければならない。

そもそも、居心地が悪い会社に限って、頑なに在宅勤務を拒み、出社にこだわるのである。

どうしても、「従業員に出社して欲しい」と思うのであれば、「出社か、在宅か?」は従業員の任意にして、それでも皆が「出社したい!!」と思う職場を目指すべきではないのか?

備品や消耗品はしっかりと供給するのはもちろんのこと、仲間同士の絆を深めたいのであれば、飲み会やダラダラ会議などではなく、勤務時間内に3時のおやつの場でも(もちろん、お菓子も無料で)提供して、交流を図るとか。

そのような職場であれば、在宅勤務がなくても、従業員が離職する原因が減り、離職者が減れば、企業にとっても大きなプラスになることは間違いないだろう。

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