今月の始めにこんな記事を読んだ。
とある中小ゲームスタジオ社長、“新卒内定者に全員辞退され”深く悲しむ。しかし悪いことばかりではない – AUTOMATON (automaton-media.com)
概要をまとめると
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ゲーム会社の代表取締役である中村匡彦氏がTwitterで、新卒内定者全員に辞退されたことを告白。
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会社は決して大規模なものではないため、彼らが恵まれた労働条件である大企業を選ぶことは仕方がないと割り切っており、学生を責める気持ちは一切ない。
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それでも、さすがに全員から辞退されたことはショックだったようで、今後は新卒の採用方針を見直すとのこと。
この記事を見て感じたのは、「これまでのやり方で上手くいかなかったから、やり方を変えると言っているのだから、素晴らしい会社だ」ということ。
・上手くいかないならやり方を変えたら?
世の中には従来のやり方で結果を出せていないにもかかわらず、それを改めない会社が決して少なくない。
その代表例が新卒採用である。
新卒者に内定を出したにもかかわらず、入社前に辞退されたことに憤る会社、人事担当者は珍しくないのだが、学生が何社もの採用試験を受けて、複数社から内定を得ることは周知の事実である。
だとしたら、辞退されることを見据えて、多くの学生を採用するべきだし、そもそも内定を辞退されて困るのであれば、リスクが新卒者など採用せずに、通年採用に切り替えればいいだけの話である。
以前、こちらの記事でこんな話をした。
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新卒者を雇う理由は2通りある。
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1つは経験者を採用したいのだけども、労働環境が悪いため応募がなく、仕方なく未経験の新人を雇わざるを得ない場合。
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もう1つは、未経験者を一から育てたいため、あえて経験がない新卒者を採る場合。
4月1日に入社式を行う会社は概ね後者であり、「仕事が出来ない」ことを承知であえて新卒者を採用しておきながら、残業代や有給休暇の使用等で労働者の権利を主張すると、「一人前に仕事が出来ない給料泥棒のクセに生意気だ!!」とキレるバカが出るのは新年度の恒例行事である。
仕事が出来ないことに文句を言うのなら、最初から新卒者なんて雇うなよ!!
内定辞退の学生に筋違いの怒りを向けるのも、似たようなものだ。
せっかく選考に時間をかけて内定を出した学生に辞退されて困るのであれば、すぐにでも働ける既卒者、もしくは転職者を採用すればいいだけである。
大の大人が頑なにリスクが高い「新卒採用以外は絶対に嫌だよ!!」と駄々をこねて、勝手に被害者意識に満ちることは、あまりに子どもじみて、みっともない。
しかも、本当に無垢な赤子を育てるように、新人を一から育成するつもりなら、歳がいった大学生など採らずに、中卒の新卒者を採用すべきである。
どこまでも、自己中心的で筋を通すことが出来ないお子ちゃまには大いに呆れる。
・社会人の風上にも置けない幼稚な報復
新卒者の内定辞退にまつわる習慣で、意味不明だと感じるものがもう一つある。
それは、「内定を辞退したら、金輪際、その学校の学生は採用しない」というもの。
もし、大学や教授から直々に推薦された人物に辞退されたのであれば、
「信じていたのに裏切られた!!」
「もう、あの学校(教授)が推薦した人物なんて信用出来ない!!」
と感じるのも分からなくもないが、一般枠で就活している学生にそんなことを言うのは言いがかり以外の何物でもない。
そもそも内定辞退が違法ではないことに加え、学生個人の行動を学校という組織に置き換える発想があまりに幼稚である。
私もかつては、販売職の求人の面接であまりに無礼な態度を取られた挙句、不採用にされた時は「こんなクソ野郎が幅を利かせている店なんて二度と利用するか!!」と思っていた人間なので、感情的には理解出来なくはない。
だが、応募者の面接を担当するくらいの地位がある人間は、個人としての振る舞いを組織とイコールだでみなすことは出来ても、一(いち)学生が出来ることなどたかが知れており、「個人=大学」とは言えないため、この2つの個人的怨恨とその後の報復を同等に論じることは出来ない。
若者がブラック企業に勤めて、うつ病にかかったり、最悪自殺してしまったと聞いたら、思わず「何でそんな会社、すぐに辞めなかったんだ!?」と言ってしまう人は少なくないだろう。
もちろん、私であればそんな会社1ヶ月も経たずに辞めるだろうが、真面目過ぎる人は
「もし、自分が3年以内に辞めたら、会社はもう学校の後輩たちを採用しなくなってしまう…」
と考えているのかもしれない。
本当にそんなことがあるのかは不明だが(もっとも、そんな劣悪な労働環境の会社に就職させないことの方が、後輩のためだと思われるが…)、もしそうなら、個人と出身校を結びつける学閥採用は卒業生を人質にしているに等しく、人の命すら奪いかねない危険な思想であり、「学生に内定を辞退された、もしくは早期退職されたから、翌年度以降はその学校の出身者を採用しない」という報復は殺人行為と言える。
そもそも、大真面目なビジネスの場で、私怨を晴らすということは社会人としてあるまじき行為であり、そんな人間に学生や新入社員に社会人としての心得など説く資格などないだろう。