大学や専門学校の学費は就職先に払わせよう

今年のゴールデンウィークは実家に帰省していた。

一緒に住んでいた時は家族の話など全く興味がないのに、離れて暮らしているとお互いに気になってしまうためか、自然と打ち解けていた。

そこで、珍しく(というよりか「初めて」と言っていい程)父親の職場の話を聞いた。

まあ、ほとんど部下の愚痴を聞かされただけだったのだが…

父の話によると、勤め先の若手は仕事を覚える気がなく、「出来ません」、「分かりません」を連発しており、結局は自分やベテランの社員が面倒事をすべて押し付けられているとのこと。

そして、定着率が低くすぐに辞める。

それを聞いたら「自分なんか、まだ真面目な方だ…」と感じた。

・呆れる程の高望み

私は父に同情したのだが、一方で、やる気がなく、すぐに辞めてしまう若手社員の方にも感情移入した。

私の父は地元だけではそれなりに有名な会社を60歳で定年退職し、その後は関連会社に契約社員という形で再就職した。

仕事の内容は退職前の企業の下請けである。

肉体労働であり、夜勤も多い。

そして、就業場所は完全なる田舎にある

きっと、給料もそこまで恵まれているわけじゃないだろう。

そんな会社に就職した若手社員と聞くと、地元の高校を卒業した後に職にあぶれた人たちを想像した。

はっきり言って、将来の希望も持てないだろうから、やる気もなくて当たり前だ。

せめて、給料だけでも高かったら、違っただろうに…

全く持って余計なお世話なのだが、そんなことを考えて、父の勤め先をネットで調べてみた。

求人のページを見てみると、給料はそこまで低いわけではないが、夜勤もあることだし、「まあそうだろうな…」と感じる金額だった。

だが、給料の近くに記載されていたある情報が目に入った時は絶句した。

それは応募条件である。

なんと、その会社の募集条件に「大卒、もしくは関連する分野の専門学校以上」と書かれていたのだ。

それを見た瞬間は唖然としたが、すぐさまこんな事を言いたくなった。

のぼせ上るな!

大した給料も払わず、夜勤も多い肉体労働でありながら、よくもまあヌケヌケと応募者にそんな高望みが出来たもんだな。

それでいて、「良い人材が来ない!!」と泣き言を吐かれても、

アホか!?

としか言いようがない。

正社員といえども、ド田舎で夜勤必須の肉体労働をするのに、なぜ大卒の資格など必要なのだろうか?

実際に私の父は高卒だが、その仕事を問題なくこなしているように思えるが…

若手社員の学費は親が払っにせよ、奨学金(という名のローン)を利用したにせよ、彼らはそんな会社に就職するために高い金を払っていたわけじゃない。

逆にそんな会社にしか就職できなかったら、何とも言えない虚しさやバカらしい気持ちに襲われて、すぐに辞めてしまうだろう。

すぐに辞められて困るのなら、地元の高校(もしくは中学)を卒業した若者を一から大切に育てればいいのではないか?

・仕事は変わらないのに条件だけが上がる

よく「田舎にはろくな仕事がない」と言われるが、本当にその通りであることを実感した。

経済的に恵まれないために、大した給料が払えないことは仕方ないにせよ、いっちょ前に会社を気取り、「学士様(もしくは専門スキル持ち)以外お断り!!」と主張するツラの皮の厚さは婚活モンスターと瓜二つであり、情けない限りだ。

立場(分)をわきまえないその浅ましさは地元の恥とさえ言える。

と散々罵倒してきたが、これは決して、私の地元にある一企業だけの問題ではなく、日本全国で起きていることではないだろうか?

かつて、この記事に書いた通り、90年代に入ると高校生の新卒求人数が激減した。

その結果、一世代前であれば高卒で就職していたであろう人も大学へ進学するようになった。

そのような経緯で大学へ進んだ人は、当然、大学の入学金や授業料を払わなければならないのだが、彼らは「エリート」と呼ばれていたであろう、かつて(18歳の大学進学率が2025%だった時代)の大卒者と同等の高い給料を得られる仕事に就けたのだろうか?

ほとんどの場合、仕事も給料も変わっていないが、募集条件だけが引き上げられたのではないだろうか?

「グローバル化により、単純労働が海外に移転したから、国内にはかつての高卒者が就けた仕事は残っていない」という俗説もあるが、その理屈は疑わしい。

なぜなら、本当に日本国内の仕事が高学歴を必要とする仕事ばかりになったのなら、30年前と比べて大卒者が劇的に増えたことに比例して、日本人の平均給料も大幅に上らなければならないはずだが、そうはなっていないのだから。

要するに、仕事も給料も大して変わりない(むしろ給料は下がったかも)が、求職者に求める水準だが、不釣り合いに上がっているのだ。

・「仕事が出来ない新人を一から育てている」という勘違い

よく「海外の企業は経験重視で即戦力しか雇わないが、多くの日本企業は新卒採用で仕事が出来ない新人を一から育てているからコストがかかっている」と言われている。

だから、安月給だろうが、ブラックな環境だろが、雇ってもらっているだけ有難いと思って、文句を言わずに働けとでも言いたげに。

甚だしい勘違いである。

団塊の世代が「金の卵」と呼ばれていた時代のように、多くの企業が中卒者を大量に採用していた時代であればその言い分は理解できる。

中卒者を採用して企業が職業訓練を施すということは、企業が少なくない労働者の教育コストを負担していると考えても良い。

しかし、中卒の新卒採用などほぼほぼ行われていないこの時代、新卒者は程度の差はあれ、義務教育以外に何らかの教育を受けている。

もちろん、その教育費は親が払ったり、本人が借金をして賄っている。

つまり、採用要件に学歴を設けている企業は、そのコストを一切負担せずに外部に教育を丸投げしておきながら、ヌケヌケと「優秀な人材が欲しい!!」と言っているのである。

こんなフリーライダー以外の何ものでもないことをやっておきながら、「ペーペーの新人を育てている」気になっているのはお笑いである。

大企業の場合は給料だけでなく福利厚生も恵まれているため、借金をして大学に通っても元は取れるわけだから、教育費の受益者負担という理屈を展開できるだけフェアだろう。

問題なのは、大した仕事をするわけでもなく、給料も高卒者と大して変わらないにもかかわらず、自腹で高い学費を払わせられた人しか雇わない勘違いかつ傲慢な企業である。

こんなしょうもない連中のために就職口が減り、不本意かる不必要な進学を強制されている人たちは堪ったものではない。

そして、求職者に分不相応の高望みをすることで学歴のインフレが起き、自分の子どものために高額の学費を支払わされるという形でツケが回ってくるのだから滑稽という他ない。

・食い逃げを認めてはいけない

そんなこと考えていると面白いアイディアが浮かんだ。

教育費の高騰や奨学金の返済が社会問題になっているのなら、彼らの学費は就職先に払わせればいいのでは?

前段でも触れた通り、高い学費を払っても、それなりに高い給料が支払われる職に就けるのなら、受益者負担という理屈が成立がするのだから、何も問題はない。

しかし、現状はそうなっていない人が少なくないから、社会問題になっているのである。

だとしたら、求職者に学位を求めている企業には、それに見合ったコストを課すべきではないか?

具体的な話をすると、彼らが好きそうな(実質的に「新卒」と呼べる)大学卒業3年以内の者を採用する場合は「ぜいたく税」として、一人当たり100万程度の税金を課す。

3年という期間については特にこだわりはないため、5年でも10年でも構わない。

就業経験が長い中高年者の採用の場合は、学歴よりも職歴が重視されるため、彼らを採用する際には時に学歴の制限は設けなくて良いだろう。

ちなみに、2年制の短大や専門学校は就学期間が大学の半分なので50万円にする。

その税金を教育費に当てれば、バカ高い学費も少しは抑えられるはず。

「とてもじゃないけど、そんなお金払えないよ!!」と泣き言をいう体力が無くて情けない企業のためには救済策として、新卒の大卒者一人に対して、高卒者を二人採用したら、免税とする。(専門学校卒の場合は1:1で可)

そうしたら、高卒者の採用が増えて、大卒者の採用は控えるから、無駄に進学する高校生は減り、Fランクと呼ばれる下らない大学も消滅するだろう。

その流れで、国が助成金を費やす先(穀潰し)も減るのだから、そのお金を数少ない貴重な大学へ投資出来て、そのような学校の学費はさらに抑えられることになる。

もちろん、高い税金を払って大卒者を採用したもののすぐに退職されたり、逆に税金対策のためだけに高卒者を雇って用済みになったらすぐに捨てるというどこまでも汚い企業の対策など、考慮すべき点は多々ある。

だが、食い逃げと呼べる程のやりたい放題をこれ以上放置していたら、ますます無駄な大学や大学進学者が増え、きちんと高い給料を払っている企業や、真面目に勉強して「大卒者」と呼ぶに相応しい学問を習得した人がバカを見る結果になる。

私は別に高い学位を持っている者が高い給料を得られるということを否定しているわけではない。

しかし、大した給料も支払わないのに、頑なに「高学歴者しか採用しない!!」と言い張る勘違いしている企業はそれなりに規制しなければならないと思っている。

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