日雇い派遣で見た世界②:日雇いの職場環境とは

前回は私が日雇い労働で経験した各仕事について説明した。

今日は「日雇い労働」全体に共通していることについて書こうと思う。

・派遣会社について

私が日雇いの仕事で働こうと決意した時は平日5日のフルタイムで勤務していたため、派遣会社の登録会に参加することが難しかった。

というわけで、面接なしのオンライン登録だけで即就労可能だった2つの派遣会社で仕事を探すことにした。

まず1社目のA社(仮名)について説明しよう。

この記事でも書いたが、日雇い派遣は一部の例外を除いて全面禁止である。

このA社は労働契約ではなく請負契約という形を取ることで、この規制を逃れていた。

とはいうものの、実態は日雇い派遣とさほど変わらないようである。

私は試しにいくつかの仕事に応募してみたところ、希望の仕事は不採用だったが、工場のピッキングの仕事を紹介された。

しかし、それがA社の紹介で働いた唯一の仕事になった。

それ以降は何社応募しても不採用となる。

その上、結果は前日まで分からない。

これでは予定が立てづらくデメリットが大きい。

にもかかわらず、こちらの都合でのキャンセルは受け付けない。

体調不良や身内の不幸で欠勤する際は証明書の提出を迫るなど、かなり高圧的な態度だった。

しかも、自宅でLINEを使いモニターの仕事をするだけで報酬5000円や、私用の携帯を別の会社に変更するだけで報酬15000円など怪しい求人も多かった。

ここまで来ると就労条件がウソの可能性も高い。

そのため、私はA社とは1日働いただけで縁を切ることにした。

もう1社をB社(仮名)と呼ぼう。

こちらは複数エントリーや申し込み後のキャンセルが可能で、その場合も特にペナルティもなさそうだった。

B社も実質日雇い派遣の会社なのだが、こちらはB社と日雇いの雇用契約を結ぶのではなく、あくまでも紹介という形を取り、アルバイトのように雇用契約は紹介先と直接1日だけの契約を結び、給料も紹介先から受け取ることになっていた。

雇用先はB社ではなく、就業先となるため、給料の支払い日や受け取り方法は就業場所によって変わる。

そのため、年末調整や確定申告の時に膨大な数の源泉徴収票を取り寄せなければならないだろう。

とはいっても、就業先からは実質、派遣社員と認識されており、現場の担当者からも「派遣さん」とか「B社(派遣会社の名前)さん」と呼ばれていた。

(このような状況だったので、今回のタイトルは「日雇い労働」という言葉を使用するべきだが、あえて実態に近い「日雇い派遣」とした)

肝心の求人内容についてはA社のような怪しげなものはなかったが、給料などの条件はA社と変わらない気がした。

結局、最初の仕事以外はすべてB社の仕事で働くことになった。

・都心部には日雇いの求人が少ない

東京の都心部は仕事に溢れている。

外を歩けば求人広告を見かけない日はない。

ただし、日雇いの仕事は意外にも多くない。

私が働いた11ヶ所の職場の内、23区内にあったのは4ヶ所だけであり、他の7ヶ所は23区外である。

さらにその内の4ヶ所は東京都からも出ることになった。

そのため、交通費が結構かかる。

就業先によっては交通費が支給されることもあるが、よくよく見ると駅から集合場所まではバスで移動する必要があり、支給される交通費はあくまでもバス代のみであることがほとんどである。

少人数で働く職場では就業先の社員から「どこから来たの?」と尋ねられることが多いのだが、私が住所を伝えると大体は「え~!? わざわざこんな場所に来なくても都心の方が仕事はあるでしょう?」と驚かれた。

・就業先は大半が中小企業である

日雇いの仕事の多くが都心から離れた場所にある理由の一つは、工場や倉庫といった職種はそもそも都心部に作業場を構えることが不可能であるため、これらの職種に求人が多い日雇い労働では必然的に都心から離れた場所で働くことになってしまうということである。

そして、私が考えるもう一つの理由は日雇いで労働者を求めているのは大半が中小企業だからである。

ここで私が働いた就業先の会社名を公開したとしても、誰もが分かるような有名な会社は引っ越し社とディスカウントストアの2社だけだろう。

会社名も有限会社〇〇(多分社長の名前)というような、目に見えて中小規模の経営であることが分かることが多い。

なぜ彼らは従業員を常勤にせずに、わざわざ派遣会社を通して日雇いで労働者を集めているのだろうか?

働く人が毎日代われば、その度に仕事を教えなくてはならない。

しかも、募集をかけたからといって、必ず人員が集まるわけでもない。

パートやアルバイトのような直接雇用で雇った方がはるかにマシだと思われる。

私は彼らが日雇い労働者を使う理由は常時人を雇うだけの経営体力がないからだと思う。

なるべく少ない人員で仕事を回して、どうしても足りない時だけ日雇いで調達する。

リーマンショック直後の派遣切りの様子を伝える報道番組では、大企業が製造現場で働いていた派遣社員を大量に解雇するケースを見ることが多かったため、私は「派遣をいいように使って利益をむさぼるのは大企業で、派遣会社に手数料を払う余裕もない中小企業は派遣に関しては潔白だ!!」と思い込んでいたのだが、意外とそうでもなかった。

ただ、私が感じたのは、彼らに「日雇い労働者を都合よく使って儲けるぞ!!」というような野心はなく、常勤で人を雇う体力がなく、延命するために細々と日雇い労働者を使っているという哀れさだった。

・労働者側も使用者側も意外にまともな人が多い

日雇い労働と聞くとネガティブなイメージを持つ人が多い。

その一つが、「日雇い労働者の大半はまともなフルタイムの仕事で働くことができない社会不適合者であり、日雇い労働者を受け入れている会社は人のことをゴミのように扱う危険な人たちである」というような対人関係のことである。

しかし、私が実際に働いた感想としてはそんな人はほとんどいなかった。

先ず労働者についてだが、無断欠勤をした人はいたが、仕事中にブチ切れてケンカをしたりバックレたりした人はいなかったし、穴の開いた靴や小汚い服装で、何日も風呂に入っていないような異臭を放つ人もいなかった。

彼らの多くは学生、フリーター、駆け出しの声優、スポーツ選手であり、意外にも普通の人たちなのである。

何のために日雇いの仕事をしているのかは分からないが、結婚している人もいた。

一方の使用者側の人間も「どうせコイツは今日しか来ないヤツだから」と思って、人のことを乱雑に扱う人はほとんどいなかった。

指示を出すときは丁寧な口調だし、分からないことを質問された時も気さくに答えてくれることが多かった。

配送や備品の搬入などの力仕事では、強面のおっさんが「俺たちは思わず大きな声を出すことがあるかもしれないけど、それは本気で危ないと思うからであって、決して怒っているわけではないから」と前もって断りを入れられることがあったが、実際にそんなことは一度もなかった。

とはいうものの、毎日違う現場に行くと、さすがに社員がクソだと思った職場もあった。

というわけで、次回は読者の皆さんが求めていそうな内容、その名も「二度と行きたくないと思った職場ランキング」を発表する。

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