今週は祝日が2日あった。
私はカレンダー通りの勤務をしている派遣社員である。
週3日しか仕事に行く必要がないことは嬉しいが、時給制のため、休みが多ければ当然、収入も減ってしまう。
だが、今の私がそれ以上に辛いのは求職活動ができないことである。
今月限りで今の職場を去るものの、次の仕事はまだ決まっていない。
先週までに派遣会社から2社ほど紹介されたが、いずれも結果は…
そんな状況で週2日の祝日など苦痛でしかない。
それでも、過去に比べたら今回はマシな方である。
同じ職探しの身でも、失業中に大型連休に突入した時などはもう拷問以外の何物でもない。
私の上京1年目は初の仕事を得るために4ヶ月要することとなり、その最終盤にゴールデンウィークに突入した。
シェアハウス住まいで、多少の世間話ができる相手がいたとはいえ、すでに貯金も半分近く減少しており、不安でただただ落ち着かなかった。
そんな時は何も考えずに、「こんな時のために」と前もって用意していた「映画ドラえもん」を流していたのだが、そこで大変勇気づけられたシーンがあった。
見ていた作品は「のび太の南海大冒険」で、宝探しに出かけたドラえもん一行が時空乱流に巻き込まれ、17世紀にタイムスリップし、現地の海賊と手を取り合って、行方不明になった仲間を探すために宝島を冒険する物語である。
話の後半、宝島を根城に改造生物を売りさばこうと計画する時空犯罪者の手に落ち、囚われの身になってしまうドラえもん一行とゲストキャラクターが、今後の方針について対立し口論になる。
そんな時、海賊の船長であるキャプテン・キッドが冷静に制止する。
「焦るな!!」
「まだ時間がある」
「こういう時、一番危険なのは皆の気持ちがバラバラになることだ」
「焦らず、チャンスを待つんだ!!」
「焦らず、チャンスを待つ」
キャプテン・キッドの声優を担当していた江守徹の落ち着いた低い声で発せられたその言葉は孤独と不安に苛まれていた私を大きく勇気づけた。
たしかに連休中はつらく、個人の努力で解決できる問題ではないが、ゴールデンウィークなど1週間で終わる。
来週になったら、きっとチャンスはやって来るはず。
その時に備えて、今は耐え忍ぶ時だ。
私の期待通り、連休明けに応募した仕事で、無事に就職することができた。
もうすぐ失業してしまう今の私は、不安で押し潰されそうになることもあるが、あの時に比べたら、まだ余裕がある。
貯金はそれなりにあるし、狭いとはいえ、気兼ねせずに好きなことができる自分のスペースもある。
失業者になった所で別に死ぬわけでもない。
あの時と同じく、焦らず、チャンスを待つつもりである。