
来週の日曜日は衆議院選挙の投票日である。
各政党の候補者がこの日のために至る所で政策を訴えている。
というわけで、今日は政治家と選挙の話をしようと思う。
・勝手に期待して、勝手に失望する人たち

数日前にこんな記事を見かけた。
「失望しました」小野田紀美氏 現実的な“外国人政策”訴えも一部の保守層から激しい反発…“移民受け入れ”のデマ投稿も拡散する事態に | NEWSjp
概要は以下の通りである。
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1月23日に小野田紀美経済安保担当相がXで、外国人の受け入れに関する「総合的対応策」を公表。
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「外国人だから不起訴になる」という一部の界隈では常識となっている通説を否定。
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個人的意見と前置きした上で、すでに外国人労働者等なしでは回らなくなってしまっている現場が多くある事は事実と説明。
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今すぐ全ての外国人の受け入れを一旦停止すれば、即座に介護も建設も製造も農林水産業等々も崩壊して、社会が立ち行かなくなり、高齢化と人口減少による人手不足は現実として向き合わねばならないと指摘。
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その一方で、なし崩しに受け入れ続けることは良しとしない。
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根本的な対策から目を背けていたら、地域も仕事も気づいた時には無くなってしまう危機感を共有して、打開策を共に模索して頂きたいと綴った。
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しかし、「保守のマドンナ」として人気を博し、これまで大臣就任後に「ルールを守らない外国人には厳格に対応する」などと発言してきたことで、外国人の受け入れに厳しい対応を期待していた保守層からは批判や失望の声が相次ぐことに。
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無関係なパーティーの写真を投稿して「小野田が経団連の要求に応えるために外国人移民を大量に受け入れた」という悪質なデマも拡散。
この記事を読んだところ、正直言って、小野田議員に反発している人は一体に何に失望しているのか、全く分からなかった。
まず今回の発言自体は、排外主義的でもなければ、無制限な受け入れを肯定するものでもなく、ごく現実的で穏健な主張に過ぎない。
一方で、一部の支持者からは、「失望した」、「裏切られた」という強い反発の声が上がったという。
だが、ここで立ち止まって考えてみる必要がある。
小野田議員の主張は、本当にこれまでの言動と矛盾していたのだろうか?
私は彼女の支持者ではないので、過去の発言を逐一チェックしていたわけではないが、ネットで過去の発言を遡ってみると、これまでに「不法滞在者や違法行為には厳しく対処すべき」と発言したものは多く見つかったが、
「移民受け入れ反対!!」
「外国人労働者を締め出す!!」
「日本人ファースト!!」
といった総量規制や排除を明言した発言は、見当つけられなかった。
つまり彼女は一貫して、「外国人か日本人か」ではなく、「ルールを守るかどうか」、「制度をどう管理するか」という軸で語ってきたのである。
それにもかかわらず、一部の支持者はいつの間にか
「小野田さんは外国人を日本から締め出してくれるはずだ」
「小野田さんは外敵から自分たちを守ってくれるに違いない」
という期待を膨らませていた。
そして、その妄想が満たされなかった瞬間に、「裏切られた」と感じてしまった。
この構図は、政治家の変節というよりも、支持者側が勝手に物語を補完し、勝手に失望したと言った方が実態に近い。
もっと言えば、「不法移民の排除」と「合法的な外国人労働者の受け入れ」は、全く矛盾しない。
イタリアのメローニ首相は「不法移民追放」を宣言して、実際にそうしつつも、深刻な人手不足に対応するために合法的な労働移民の受け入れを拡大している。
このように、不法移民の追放と外国人労働者の受け入れは、論理的にも、政策的にも全く矛盾しない。
支持者にとっては「期待していたのはこれじゃない!」と感じることはあったとしても…
小野田議員の立場も、まさにこの延長線上にある。
ちなみに、2012年から2020年まで7年8ヶ月にも渡る安倍政権では外国人労働者が100万人以上増加した。
〝開国政権〟7年間で100万人増加した外国人労働者 「開国政権」が開いた「移民国家」への扉(1) Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)
一貫して外国人労働者や観光客を大幅に増やす政策を行った安倍政権時代が7年8ヶ月も続いたが、今回の件で小野田議員に失望したり、威勢よく「外国人を日本から追い出せ!!」と叫んでいる人は、その時に政権反対デモや批判活動をやっていたのだろうか?
むしろ、全く逆に「安倍さんは外国の脅威から日本を守ってくれる!!」と言いながら、政権に全幅の信頼を置いて、1mmの批判も向けることがなかったのではないか、と感じるのは私だけだろうか。
支持者に夢を見せながら、その裏で現実的な政策を着々と実行していた安倍晋三という人は、とんでもなく有能な政治家だったのかもしれない。
功罪は別にして…
・利用していた人からのしっぺ返し

今回の件は小野田議員にとって、とんだ災難だったと言える。
しかし、一方で逆のパターンが存在することも事実だ。
それは、政治家自身が、選挙に当選したり、党内で要職を得たりするために、意図的に「世論ウケの良いポジション」を取りに行くケースである。
選挙期間中には、
「海外の脅威や不良外国人から日本を守る!!」
「増税を企てる財務省から国民生活を守る!!」
といった、わかりやすい敵を設定する主張が繰り返し語られる。
複雑な政策課題を単純な善悪二元論や陰謀論に落とし込み、有権者の怒りや不満を代弁することで支持を集める手法である。
この段階では、現実的に実行可能かどうかよりも、「どれだけ刺さる言葉か」が優先される。
その過激かつ分かりやすい主張に共鳴した支持者(バカ)は、対立相手を「外国のスパイ」、「既得権を手放さない抵抗勢力」、「税金への集り」などとデマも交えて攻撃することで、強力にサポートしてくれる。
ところが、こうした単純明快な主張によって当選したり、政治の中枢を担う立場になると、状況は一変する。
官僚から具体的なデータが示され、現場の悲鳴が届き、「それをやれば(または、やらなければ)社会が回らなくなる」という現実に直面するからだ。
結果として、政治家は現実的な路線へと舵を切らざるを得なくなる。
しかし、その瞬間に、かつて熱狂的に支えてくれたネット上の親衛隊から、
「裏切られた!!」
「お前も既得権益側か!!」
と激しい攻撃を受ける。
これは、支持者が政治家本人を見ていたのではなく、「自分の怒りを代弁してくれる役割」を見ていたために起きる現象である。
このような手法で権力を手にした政治家は、皮肉なことに、自らが利用していた親衛隊によって、真っ先に、そして最も激しく糾弾されることになる。
見事なまでのしっぺ返しと言えよう。
現実の政治において「敵を倒せば全て解決する」なんて局面はほとんど存在しない。
単純な物語を信じさせれば信じさせるほど、軌道修正した際の反動は大きくなる。
この構造は、特定の人物に限らず、日本の選挙政治全体に共通する問題だ。
本当に誠実な政治家とは、耳障りの良い答えを簡単に提示しない存在である。
敵を単純化せず、「それは難しい」、「現実はもっと複雑だ」と語る政治家は、選挙では不利かもしれない。
社会を運営するという点では、そうした態度こそが必要とされる。
だが、間違ってはいけないのは、これは決して「もう手遅れだから、何もやらな~い。でも、議員としての給料はもらうね♡」という開き直りや現状維持を好む人間を選べばいいというわけではない。
複雑な現実に向き合って解決しようとする熱意と覚悟が大事なのは大前提だが、それは分かりやすいスローガンを掲げたり、敵を見つけて「悪と闘っている自分」を演出することではない。
そうした姿勢は政治家だけでなく、有権者にも求められるのかもしれない。









