先月、都知事選挙による迷惑な街頭演説の話をした。
選挙も終わって1ヶ月経って、ようやく平穏な朝が訪れたと思ったのも束の間、彼らが毎日朝立ちをしていた駅前では、新たな者が猛威を振るっている。
それは、企業の宣伝のためのティッシュ配りである。
・暑い日にスーツでティッシュ配りをするという狂気
駅前に限らず、街頭のティッシュ配りは頻繁に目にするし、そのこと自体は全く気にしていない。
にもかかわらず、今回私がどうもスルー出来ないのは彼らの服装である。
彼らは暑い日が続くこの時期だというのに、スーツを着てティッシュを配っているのである。
彼らの雇用主は一体何を考えているのか?
こんな暑い中でスーツを着せることに何の疑問も持たないほど他人への共感力がないのか、他人が苦しんでいる姿を見て喜ぶサイコパスなのかは分からないが、彼らは頭がおかしいということだけは間違いない。
念のために言っておくが、この暑い時期であっても、長袖を着ないといけない仕事は存在する。
たとえば、建設現場や、医者・研究者など。
しかし、それらはいずれも長袖を着なければ業務に支障が出る場合である。
建設現場であれば事故が起きた際に身体を守るためであり、白衣は衛生面から必要とされる。
対して、ティッシュ配りをスーツで行うことにどんな理由があるのか?
アホな幹部共は「ブランドイメージを保つためにどうしてもスーツでなければダメなんだ!!」とでも考えているのかもしれない。
ところが、ティッシュ配りに従事していた者は男女共に若くて、男女共に黒のリクルートを着ていたため、見ている側は(少なくとも私は)「公衆の面前で若手をシゴいているパワハラ気質丸出しの会社」という印象しか受けない。
ちなみに、この会社はテレビやネットで頻繁にCMを目にする某進学塾である。
そのことも私の心に引っかかる要因となった。
・人生の最大の汚点
私はこれまで日雇いも含めて多くの仕事を渡り歩いてきた。
その中で、自分の中でワーストと言える最悪な仕事は、塾や家庭教師などの学習支援サービスを展開する会社のテレアポ業務である。
以前、この記事に書いた通り、過去に資料請求をしてきた際に取り溜めた個人情報を基に片っ端から電話をかけて、キャンペーンの案内をする仕事なのだが、相手の都合など一切考えずに、一方的にこちらの話だけをしたり、見込みがない客でも、しつこく粘ってさらなる個人情報を聞き出すことを強要された。
はっきり言うと、やっていることは「迷惑電話」である。
しかも、上司は清々しいまでのパワハラオヤジで、他の社員も自意識過剰なキモい連中で溢れていた。
私は結局、一週間も持たずに辞めたものの、あんな仕事に手を染めてしまっていたことは、一生消せない黒歴史になってしまった。
これまでも、コンビニバイトや引っ越しのバイトのように「時給3,000円でも二度とやりたくない!!」と思う仕事はあった。
とはいえ、それらは労働環境としては最悪でも、お客様には「ありがとう」と言ってもらえる仕事だった。
それに引き換え、迷惑電話の仕事は、ただ相手にも迷惑をかけるだけである。
「職業に貴賎なし」という言葉があるが、私はその時初めて「世の中には『存在しない方がマシ』という次元を超えた『存在してはいけない』仕事がある」ということを知った。
このように自分たちの都合しか考えていないにもかかわらず、企業理念として「社会貢献」などと掲げているのだから、開いた口が塞がらない。
社員が、自意識と行動が乖離している連中ばかりなのも、「こんな会社に染まったら、そうなるわな」と納得である。
とどめにこの会社は「ブランドイメージだから」という理由で、顧客との接触がない内勤だというのに、全員スーツ着用を強制されている。
それだけならまだしも、染髪も禁止されており、同じ場所で面談を受けた応募者が、地毛で若干茶色がかっていたため、黒く染めることを強制されるような人権侵害著しい会社だった。
思い返すと、「何でそのタイミングですぐに辞退しなかったのか…」と悔やまれる。
たとえ、自分が言われたわけではなくても、そんなモンスターはちょっとしたきっかけで自分に牙をむくことは分かり切っていたではないか…
・早く足を洗ってもらいたい
真夏にスーツ姿でティッシュ配りをしている若者を見ていると、「暑そうで大変だな」という気持ちだけでなく、かつて同じ学習塾業界でひどい目にあった自分の姿を思い出した。
勤め先企業こそ違うものの、同じ業界ということで、きっと彼らも同じくらい真っ黒な会社に勤めているんだろう。
学校教師の待遇があまりにもブラックだと問題になって久しいが、教育業界の労働環境がろくでもないのは公務員・民間、または企業間に関係なく共通しているのかもしれない。
スーツでティッシュ配りをさせられていた彼らもきっとパワハラ上司から
「何でティッシュ配りにそんなに時間がかかっているんだ!!」
「もっと大きな声を出して呼びかけろ!!」
と毎日のように罵倒されていることだろう。
そんな彼らには同情して思わずティッシュを受け取りたくなるが、私は決して受け取らない。
私が彼らに願うことは、すぐにこんな荒んだ業界から足を洗って、堅気として真っ当に生きてもらうことである。
そのために、ティッシュを受け取って、彼らに束の間の喜びを味わってもらうことではなく、いかに下らないことをやらされているかに気付いて欲しい。
彼らはまだ若いから、人生をやり直すチャンスはいくらでもある。
一方で、真夏だというのにスーツで働くことに固執し、それによって自分たちのブランドイメージが保たれると信じ、そのためなら死人が出ても構わないと思っている学習塾業界は更生不可能の凶悪犯と言えるだろう。