ゴールデンウィークに突入した先週の週末。
私はいろいろと事情があって、普段は行かない地域に赴き、レトロな雰囲気のレストランで食事をしていた。
その店を利用するのは初めてで詳しくは分からないが、おそらく個人経営のお店なのだろう。
煩わしい日常を離れ、平穏な時が流れていたが、ある騒ぎが起きた。
近くのテーブルに座っていた子どもがジュースをこぼしたのだ。
すぐに店員がやって来て、テーブルを拭きながら、子どもにこんなことを言った。
ジュースをこぼした子どもに対して優しく振る舞う店員の姿は有り触れた光景に思えるが、ある場所では、これが当たり前の行動ではない。
・気が利かない店員と客の不満
これは2年ほど前に、職場のお昼休憩上がりに遭遇した出来事である。
近くの席の同僚が休憩から戻って来るなり、隣の席の同僚とこんな話をした。
同僚A:「ねえ、聞いてよ。そこの○○(コンビニ)でコーヒーを買ったんだけど、お金払った後でレジの前に落としちゃったの。店員がそれを見ていたのに知らん顔して、新しいのに取り替えてくれなかったんだよ!!」
同僚B:「わー、それ最悪!!」
同僚A:「あのバイト、本当に気が利かなくて腹立つ!!」
その話が耳に入った私は、自分が言われていたわけではないのに、はらわた煮えくりかえる気持ちになった。
なんという傲慢な態度なのだろうか!!
私が彼女たちの会話に腹を立てたのは、かつてコンビニでバイトをしていた経験があり、その店員の気持ちが痛いほど分かるからである。(ちなみに、同じブランドのコンビニだった)
コンビニの店員が、客がダメにした商品を取り替えてくれないのは、決して気が利かないからではない。
したくても、出来ないのだ。
もちろん、あまりにも客が哀れでいたたまれない気持ちになり、新しい商品を用意することはあるだろう。
だが、そんなことをしたら…
廃棄する商品は、店員が自腹で買い取らないといけない。
それを聞いて驚く人もいるかもしれないが、コンビニとはそのようにドライな世界なのである。
「客が可哀そうだから…」と情けをかけたら、そのお金は店員が負担しなければならない。
・客にそんなこと言えるの?
私がコンビニで働き始めて1週間が経ち、本格的にシフトに入った頃。
客から弁当の温めを頼まれたのだが、付属のマヨネーズを外し忘れてしまい、レンジから取り出したらマヨネーズが爆発したことがあった。
その時は、たまたま同じ弁当の在庫があったため、それを再度温めて提供することで事なきを得たが、先輩に温めに失敗した弁当の処理方法を訊ねたら衝撃的な答えが返ってきた。
私はそれまでも食品を扱う仕事をしていたことがあり、多くの食品を没にしてしまった経験があるが、そのことでお金を請求されたり、給料から天引きされたことは一度もなかったため、それを聞いて驚いた。
なんて酷い会社だ!!
もっとも、その会社が酷かったのはそれだけではなかったが…(詳しい話はこちら)
その先輩とは一週間で別れ、後に多くの時間を共に過ごすことになったのは、このブログでも度々登場している軍曹(仮名)である。(最新の登場記事はこちら)
彼と出会って数日の間は「気さくな人」という印象だったため、気軽に話ができた。
そこで、マヨネーズ爆発事件で衝撃を受けたことを話したのだが、その際にこんな質問をした。
早川:「もし、お客さんが自分で落としたりしてダメになった場合はどうなるんですかね?」
軍曹:「もちろん、買い取ってもらうよ」
早川:「え!? お客にそんなこと言って納得してもらえるんですか!?」
軍曹:「こっちも商売だから、納得してもらうまで説明するしかないよ」(注:私たちが入っていたシフトは深夜であり、オーナーを呼び出すのは現実的ではない)
早川:「もし、説得してもゴネ続けたら?」
軍曹:「だったら、新しい商品をお渡しして、廃棄分は僕たち店員の責任で買い取るしかないね」
なんて酷い会社だ!!(本日二回目)
相手の過失とはいえ、お客に「あんたのせいだから、責任持って買い取りなよ」なんてこと言えるの!?
しかも、ゴネ続ける客に根負けしたら、店員が買い取れなんて…
この店のオーナーはどんだけ小さい男なんだろうか?
店員、お客の両方にとっても最悪な店であることは間違いない。
こんな店でも、本社の看板があれば次々に客が集まるのだから、フランチャイズ店の影響力には恐れ入る。
私がその店で働いていたのは2ヶ月だけだったが、客が不祥事でダメにした商品の買取を請求するなど怖くてできなかったので、ずっと「お願いだから変なことはしないで」と祈っていた。
・究極の逃げ得システム
コンビニで商品をうっかり落としたりしてダメにしても、店員が交換を申し出てくれない理由はお分かり頂けたと思う。
私が働いていた時は、「フレンドリーな接客姿勢を忘れずに」などというポスターを掲示していたが、実際はコンビニの仕事で同情は禁物なのである。
「同情するなら金をくれ」ならぬ「同情するから金を出す」覚悟が必要なのだ。
ちなみに、軍曹との会話にはこんな続きがある。
早川:「もしも、お客さんがしれ~と商品棚に戻し場合も、それを見逃した店員の責任になるんですか?」
軍曹:「さすがにそれはないよ(笑)。監視カメラがあるから、犯人を突き止めることは出来るかもしれないけど、普通の神経をしていたら、二度と店には来られないだろうから、逮捕したり損害賠償を請求することは難しい。そうなったらオーナーが泥を被ることになるだろうね」
なるほど。
商品がダメになった場合の対応を加害者と行動別にまとめるとこのようになる。
・店員→本人が買い取り
・過失を認めた客→本人が買い取り
・ゴネ続ける客→説得できない店員が買い取り
・逃げた客→オーナーが負担
見事なまでの逃げ得なシステムである。
それまでに働いていた会社では、商品に損害を与えたのが、従業員でも、客でも、原則は会社が負担していたが、この店のオーナーは責任を追及する相手が居なくなって、ようやく重い腰を上げるのである。
どんだけ器が小さくて、不誠実な奴に甘いんだよ!!
正直者がバカを見るなんてレベルじゃねえぞ!!
私がコンビニで働いていたのは10年以上前で、今でもこのような運営方法を取り続けているのかは不明である。
だが、これこそ私が身をもって体験した、我々が普段から愛用し、欠かせないものとなっているコンビニの裏の顔である。
確かにコンビニは便利だが、その代償として大切なものを忘れている気がしてならない。
もしも、あなたがコンビニでダメにした商品を交換してもらえずに、不服を申し立てたくなっても、「それがコンビニというシステムである」と割り切り、納得できないなら、そんな店とは見切りを付けて、お客も従業員も大切にしてくれる店で買い物をすべきである。
次回は私がコンビニで働いた時の話と、それに匹敵するヤバい香りがプンプンする職場の話をしたいと思う。