仕事で怒られても「自分が悪い」と一切思わなくなったきっかけ

2年前にこんな記事を書いたことがある。

この記事において、私は仕事中にミスをして、上司から怒られたとしても、「自分が悪い」とは一切思わないという話をした。

私はなぜそのような考えに辿り着いたのか?

結論から言うと、サラリーマンの先輩がその心得を伝授してくれたからである。

とはいっても、その人は私の勤め先の先輩ではないし、彼の名前も知らない。

今日はその時の話をしたい。

・就業先は因縁の会社

これは今から5年以上前の2015年のできごとである。

当時の私は、この社会で生きていくことに完全に見切りをつけ、オーストラリアへワーキングホリデーに行く予定だった。

前年は収入と生活費のバランスがマイナスだったものの、2年前に、別の国への留学することを考えて貯金をしていたため、ゼロから全資金を蓄える必要はなかった。

「最低賃金×8(一日の労働時間)×211ヶ月の所定勤務日数)」の金額から生活費を控除した額を貯金に回すと、およそ8ヶ月で到達できる金額である。

というわけで、高時給であるもの、夜勤や肉体的にハードである仕事ではなく、とにかく無難に続けることができる仕事を探すことにした。

そこで見つけたのが、ディスカウントストア内の青果販売のアルバイトの仕事である。

ちなみにその会社は、私がハローワークで初めて見つけた職場と同じく、あくまでもディスカウントストア内にテナントとして出店している個人経営の会社だった。

余談だが、因縁深いことに、今回働くことになった会社とは、この記事で登場した、かつての勤務先を撤退に追い込んだ同業者のB社(仮名)のことである。

スーパー(仮名)による謀略戦の真実は、ここで聞かされたのである。

・店長が本性を見せる

私も元同僚たちと同じく、かつての勤務先を廃業へと追いやった会社で働くことになったわけだが、働き始めの頃は思いのほか順調だった。

その職場は店長と私の二人だけで店舗を運営していたため、最初は「これで職場が回るのか?」と不安だったが、他のテナントや常連とのお喋りを楽しむ店長が店内に入り、私がバックヤードでストックを作る体制を取っていた。

仕事もこれまでの経験からすぐに覚えることができて、文字通り「気楽なフリーター」として留学費用を稼いでいた。

仕事を初めて2ヶ月間はこのような様子で、彼もよく昔話や世間話をしてくれる穏やかな日々だったのだが、ある日を境に一転することになった。

きっかけは社長のかつての仕事仲間が視察にやって来て「店長がバックヤード業務を、私が店内業務を担当してはどうか?」と提案されたことだったが、そこから店長が本性を見せ始めた。

最初は「彼も店内から裏方に回ったのだから、これまでのようなお喋りを止めて真面目に働くのだろう」と思っていたが、それは甘い考えで、実際はお喋りの相手が客から肉屋や魚屋のような別のテナントの従業員に変わっただけで、一向に仕事をしない。

にもかかわらず、私には

「商品の並びが悪い!!」

「スピードが追いついていない!!」

「これは傷んでいるのだから、言われなくても値引きしてよ!!」

などと文句をつけ、自分のことを棚に上げて、商品の不揃いや不良品の取りこぼしなどすべての責任を押し付けられた。

社長の知り合いの助言というのも実はウソで、「本当のところ、店長は私が働き始めた時からこのような段取りを組むタイミングを待っていたのでは?」と思うほど、板についたようなサボり具合だった。

ある時は「売り場の不良品をかき集めて、冷蔵庫に入れておいて」という指示に従ったら、数日後、「あの時引いてきた物を冷蔵庫に放置しておいたから、全部ダメになったじゃないか」とネチネチ嫌味を言われた。

その他にも、客から大口の注文が入った時に、「いつ、誰が、何を」の連絡を一切伝えず、店内で客からその話を聞いた私が大慌てで、彼に尋ねると、「冷蔵庫の隅の箱に○○様注文分って、書いてあるでしょう!? 人に聞く前に何で自分から調べようとしないの??」と罵倒されたこともある。

バイトの私がそこまで仕事をしなければならないのなら、あんたは何のための店長だよ!?

・敵は店長だけではない

店長はそのようなクソ野郎だったわけだが、私を追い詰める敵は彼だけではなかった。

先ず、ディスカウントストアは絶対的に人が足りない。

しかも、私は常に売り場に出て作業をしているわけだから、客の多くはディスカウントストアの店員だと勘違いして、

「アイスはどこですか?」

「お味噌はどこですか?」

と門外漢のことを尋ねられる度に、彼らを探さなくてはならない。

ちなみに、彼らはトランシーバーでやり取りをしているため「この人数でも仕事はできる」と思っているのかもしれないが、テナントの私にはそんなもの与えられないため、地べたを這いつくばって彼らを見つけ出さなくてはならないのである。

その上、私たちは2人(というか実質私一人)だけで売り場を担当しているにもかかわらず、彼らは自分たちと同等のサービス水準を求めてくる。

たとえば、ある夏の日、客からディスカウント宛に「この前、お宅で買った西瓜の中身がダメになっていたから交換してほしい」と苦情が入った。

私がディスカウントストアの店員からその話と客の連絡先を聞いた時は店長が昼休みだったため、とりあえず、私が預かり、彼が戻って来次第伝えるつもりだった。

だが、店長の昼休みは2時間以上に及ぶことが普通であり、その日もしばらくは戻ってこなかった。

私がディスカウントストアの店員から連絡を受け取って、1時間ほど経った時に、今一度彼から、店長に伝えたかを尋ねられたため、私はありのままに、「店長はまだ戻ってきていない」ことと「彼がこのような長時間の昼休みを取ることは珍しくない」ことを伝えた。

すると、その店員は大怒りで、「そんなにお客様を待たせるのなら、昼休み中でも店長に連絡するか、直接自分で対応するかして下さいよ!!」と罵倒された。

そんなもん知るか!!

こっちはお前たちの会社とは違うんだよ!!

私を苦しめる敵は他にもいる。

それは客である。

私が働いていた会社は大手のスーパーが売れないような品を安値で仕入れて、使えるものだけを格安で販売する零細企業である。

当然、「安かろう・悪かろう・嫌なら来るな!!」という個人商店のようなスタンスでなければ商売が成り立つはずがない。

商品棚を定期的に見まわる余裕もないため、売り場に不良品が並んでいることも珍しくない。

常連客はそれを分かっているので、「これ、悪くなっているよ」と言って、親切に手渡してくれるのだが、その事情を分からない一般客は(全国的には無名でも、私の地元では)大手のディスカウントストアということで、世間で名の通ったスーパー並みの品質を期待する。

彼らは粗悪品が売られているとは夢にも思っていないため、商品の状態を詳しく確認しないまま購入し、先ほどの西瓜の件のように、後からクレームが入るのである。

もちろん、店内で不良品が見つかった時は私が怒鳴られることになる。

先ほどのクレームとは別の客だが、ある老婆からこんなことを言われた。

「安くて、おいしい西瓜が欲しい!!」

それを聞いた私は思わず、こう叫びたくなった。

おいしい食べ物が安く買えると思うな、クソ〇バア!!

彼女としては悪気があってこんなことを言ったわけではないことは分かっていたが、当時の私はそんなことを思うほど、メンタルが病んでいた。

・自分が悪いと思ったことは一度もない

このような四面楚歌の状態だった私は、今までであればすぐに退職を考えていただろう。

だが、ここで辞めれば留学が後ろ倒しになってしまう。

早く海外へ脱出したかった私は仕事を辞めたくても辞めることができなかった。

そんな状況だったため、どこにも逃げ場がなく、ストレスフルの日々を送っていた。

そんな折、例によって、就業後に店長からネチネチと20分ほど説教された私は、憂鬱な気分になり、真っ直ぐ帰宅することができず、田舎ではおなじみのピンク色の看板の大型ショッピングセンターに立ち寄った。

フリースペースでジュースを飲んでいると、隣の席にワイシャツを着た2人組の男性が座った。

彼らは会社の先輩後輩らしい。

話を聞いていると、若手社員が仕事で失敗をして上司に大目玉を喰らったようである。

そして、先輩に自信を失ったことを告白する。

そんな彼に、先輩はこんな話をした。

先輩:「俺も若い時にはたくさんの失敗をした。その度に怒られて、謝ることになった。だけど、心の中では自分が悪いと思ったことなんて一度もない

若手:「え!?」

先輩:「たとえ、俺がミスをしても『きちんと確認しない奴が悪い』、『俺にそんな仕事やらせた奴が悪い』と思って生きてきた」

若手:「そうなんですか!?」

先輩:「怒って気が済むのならどうぞご自由に。何なら始末書だっていくらでも書いてやるよ」

傍らでその話を聞いた私は胸がスーッとした。

「たとえ、誰かから責められても、自分が謝ることになったとしても、『自分が悪い』なんて思う必要はないんだ…」

当時の私は毎日のように誰かから非難されていた。

だからと言っても、自分が悪いとは限らないのである。

先ずは仕事をしない店長が悪いし、

こんな会社に売り場を任せている店(ディスカウントストア)も悪いし、

常識ではあり得ない低価格で良質の商品が買えると思っている客もバカである。

逃げ場がなく、味方もいなかった私はそう思うことで乗り切ることにした。

店長やディスカウントストアの店員から文句を言われても、「はい、はい」と答えて適当に受け流して、客から「こんなゴミを売るな!!」と切れられても、「ゴミに釣られたハエが偉そうに!!」と見下すようになった。

こんなバカ共のことなど一々真剣に相手にする必要は一切ない。

私がこんなにも余裕を持って構えることができるようになったのは、この名前も知らないサラリーマンのおかげなのである。

・その後の話

当時の私は自分が置かれていた境遇を呪っていた。

「もう少しで、この国からおさらばできるのに、何でよりによって、こんな会社で働かなくてはならないんだ…」

「アルバイトとして気楽に働きたいだけなのに…」

そのため、「謝るけど自分は悪くない!!」という考えも、逃げ場がない状況での緊急避難程度の認識だった。

だが、今になって思うと、当時にそのような心構えを学んでよかった。

この職場以降も、ろくでもない会社で働くことは何度もあった。

今までであれば、そんな会社はすぐに辞めていただろう。

しかし、この時の経験から、「この程度なら適当にやり過ごせばいい」という選択ができることになった。

また、前年の経験から、口では「フリーターなど認めん!!」とか言いながら、アルバイトに高い仕事を求める社会に嫌悪感を持っていたこともタイミングが良かったと言える。

「安い! 早い! 便利!」に群がるバカな消費者を哀れみの目で見て、「自分はこんな奴らが嫌だから、この国から出ていくんだ!!」というモチベーションにつながった。

ここから先は、例の職場の後日談をさせてもらいたい。

店長が本性を見せてから最初の1ヶ月は地獄だったが、配送担当者が交通事故に遭い、彼がその仕事を担当するようになったことで、午前中の業務は完全に私一人で行うようになった。

最初は彼も私も不安に満ちていたが、意外にも上手くこなせたことで、彼からの信頼を得るようになった。

それでも彼が真面目に働くことはなかったが、彼とある程度の距離ができたことで少しは余裕ができた。

そんな思いで数ヶ月間耐え凌ぐと、ようやく目標を達成して、会社を辞める目処が立った。

というわけで、店長が休みの日に配送のために店舗に立ち寄った社長に退職を宣言。

すると、彼はこんなことを言った。

社長:「それは残念。実は来年○○に新店舗を開店する予定だったから、店長をそっちに回して、この店は君に任せるつもりだったのに…」

は!?

もしかして、店長がバイトの私に仕事を丸投げしていたのはその構想を聞かされていたからだったのでは…

しかし、この記事で登場した女性の発言から、彼は以前から全く仕事をしていなかったようである。

あの時の真相は今でも謎のままである。

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