今でも忘れられない「サザエさん症候群」に陥った時のこと

これは今からちょうど1週間前のできごとである。

私は知り合いの韓国人から送られてきたLINEの返事を書いていた。

彼とのやり取りは大体、週に2回程度である。

だが、その日は、私がメッセージを送った直後に、彼から返信があった。

・日曜の午後の不安

内容はいつもと同じお互いの国の話だったが、これまでに見られなかったタイミングで返信が来たことには戸惑った。

たとえ、このタイミングで彼から返事が届いても、メールを開かずに、数日経った後で返事を書けば何事もないのかもしれないが、まさかこんなに早く返事が来るわけがないと高をくくっていた私は、彼のメッセージボックスを開けたままにしていたため、既読状態となってしまった。

このまま放置して数日後にメールを送れば、気まずくなることは間違いない。

かといって、話のネタがすぐに思い浮かぶわけでもない。

私は彼に「今回は返信が早いね」と言ってみることにした。

すると、彼からこんな答えが返ってきた。

韓国人男性:「明日の仕事のことが頭から離れなくて少しナーバスになっているんだ。だから、気を紛らわせるために誰かと話をしたいんだ」

彼が私にこのメールを送ってきたのは日曜日の午後である。

彼によるとこの時点でも神経質になっているが、イラ立ちがピークに達するのはもう少し時間が経った、夕方から夜にかけてのようである。

日本でも、その時間帯になると、彼と同じような気持ちになってしまう人はいる。

そのような感情に襲われることを「サザエさん症候群」と呼ぶ。

これは別の韓国人から聞いた話だが、韓国には月曜日の出勤を憂鬱に感じる「月曜病」という言葉は存在するが、日曜日の夜の気持ちを表現する言葉はない。

だが、2020年まで20年間続いた「ギャグコンサート」というお茶の間でお馴染みの番組があり、その放送時間帯が日曜の夜であることから、「サザエさん症候群」という言葉を説明したら、「まるで、その番組を見ている時の気持ちのようだ」と妙に納得されたことがある。

このように、日曜日の午後は居心地が悪くなるのは、何も日本に限った話ではなさそうである。

そこから、彼とはサザエさん症候群について話をすることにした。

彼は製造業で事務の仕事をしており、ちょうど今の時期が取引先との調整の繁忙期であり、残業が続いている。

それに加え、最近、やって来た上司が会社のルールよりも自分のやり方を優先したがる人物のようで、「彼の機嫌を損なわないか」と常に心配しなければならないことが彼の悩みの種である。

彼曰く、月曜日の朝の時間はそこまで苦痛ではない。

おそらく、仕事の準備でバタついているからだろう。

一方で、日曜日の夜の時間帯は特にやることがない時間が長いためか、余計なことばかり考えてしまい、その時間の居心地の悪さに耐えられないのである。

・日曜日の夜に憂鬱を感じなかった理由

自分の悩みを告白した彼は、私にも「日曜日の夕方は同じことを感じないか?」と尋ねてきた。

私の答えはこうである。

「あまりそこまで憂鬱は感じない」

日曜日の夜は翌日の弁当の準備が少し多くなることが常であるが、それを面倒に感じることはあっても、「憂鬱」とまでは思わない。

単純に、今の職場がそこまでひどい労働環境ではないだけなのかもしれないが…

話をつなぐために、どうしてもひねり出すとすれば見つからないことはない。

たとえば、数ヶ月前に、翌日から作業場とロッカーの配置が変更されるため、出社後の段取りが変わることと、分からなかった時に声をかけるように言われている担当者が全く面識がないことで、前日から不安に駆られていた。

だが、それはあくまでも、その日限定のものであり、翌週からは解消された。

そのため、それを「サザエさん症候群」と呼べるのかは疑問である。

この記事に書いた通り、私が土日祝日休みの仕事で働くようになったのは比較的最近である。

それまでは、シフト制の仕事で働くことが多かったため、日曜日に仕事をするだけでなく、23日出勤して、1日休みという勤務形態がほとんどだった。

そのため、休みの日の午後に「明日から5日連続で会社へ行かなければならない…」と思うことはなかった。

たとえ、連休でなくても、「今度も2日(もしくは3日)行ったら、次の休みがある」と思えたから、その方が気楽だった。

暗い感情に襲われた時の対処法を身に着けていない若い時に「サザエさん症候群」に陥る可能性がない働き方をしていたのは、幸運だったのかもしれない。

一方で、最近は土日休みの仕事で働くことが多いが、それでも特に「連続して5日も働くのは嫌だ!!」と感じることはない。

それどころか、固定休の上に連休だから、「予定が組みやすい」と感じている。(「あんたに何の予定があるのか?」というツッコミは入れないこと)

このように、ある程度、経験を重ねてから土日休みの仕事を始めると、負の側面の影響もあまり感じることはない。

・夜勤前の苦痛

それでは、私は「サザエさん症候群にかかっている人の気持ちには無理解なのか?」と言われれば、それは否定したい。

彼が感じているように、サザエさん症候群の本質は仕事に行く直前の恐怖感ではなく、出勤前にある程度の時間があることで感じる不安感や漠然としたイラ立ちや落ち着きのなさであると思う。

実は、コンビニのバイトをしていた時に、私もそのような症状に陥っていたことがある。

このブログでも何度も紹介している通り、その職場は覚えなくてはならない仕事が多いだけでなく、筋金入りのブラック企業体質であり、客も無礼を通り越して、犯罪すら行われていた。

その職場へ向かう前は「今日はどんな恐ろしいことが待っているか分からない…」という不安で頭がいっぱいだった。

それだけなら、単に「嫌な職場」くらいの存在だったのだろうが、問題は私の勤務時間帯が夜勤だったことである。

当時の始業時刻は午後10時からだった。

仕事前に起床するのは午後4時頃だったため、出勤するまでの時間が6時間ほどあることになる。

この出勤前の時間が嫌でしょうがなかった。

起床後、とりあえずはボーっとテレビを見たり、犬の散歩へ出かける。

すると間もなく、家族が帰ってきて、一緒に夕食を取る。

夕食を終えるのはおよそ午後6時頃。

そこから出発前の時間帯が本当に地獄だった。

私は出勤前の情態であるため、気が落ち着かないが、家の中では、酒を飲んだ父親がテレビにツッコミを入れたり、学校での1日を終えたことで思う存分遊びに興じる妹や、大声で世間話をする祖母によって、雑音で溢れていた。

仕事のことが頭から離れず常にピリピリしている私は、その中にいることが苦痛で堪らなかった。

このように、出勤前は頭を空っぽにしたかった私は、食事後部屋に引きこもって、眠りはしないものの、テレビをつけて横になっていた。

それでも、周囲との温度差を感じずにはいられず、いつもイライラしていた。

仕事日の前日ではないものの、時間が有り余るが故の出勤前の苦痛という点に関しては、これもサザエさん症候群と似たようなものだろう。

そんな生活を送っていた私はこんなことを考えた。

「たとえ、仕事がクソでも、朝に出勤していたら、毎日こんなに苦しむことはなかっただろうなあ…」

朝の8時や9時に出社する場合は、起床後、12時間で出勤するため悩む時間もないだろう。

また、つらいのは起床してから出勤までの時間だけではない。

仕事を終えて帰宅した後も、その日の夜にまた出勤しなければならないことを考えると気が休まる暇がなかった。

もし、日勤なら、仕事でひどい目に遭った日も、帰宅した後は、就寝前に楽しい時間を過ごせば、多少の癒しを得ることができる。

だが、夜勤の場合はそれすらも得られないのである。

・戦場へ向かう前の息抜き

出勤前に家にいることが苦痛だった私は、通勤時間が車で20分ほどだったものの、1時間以上前に家を出た。

いつもの日課は、通勤途中に職場から1kmほど離れているドラッグストアに立ち寄り、コーヒーを1本買って、駐車場に停めた車の中で飲むことだった。

職場へ到着するための時間調整の意味もあったが、その時間は私にとって、どこから弾が飛んでくるか分からない戦場へ向かう前の貴重なオアシスだった。

それがなければ、家の中でも、職場に着いてからも、もっと収まりが悪かったことだろう。

一度、勤務開始の2時間前に家を出て、職場から5kmほど進んだ場所にある大型ショッピングモールで時間を潰したこともある。

その理由は、母親から私の勤務先で買い物をしてきたことを告げられ、しかも「とても、綺麗で明るい店だった」と褒めたことで、「こんな時にも仕事のことを思い出させるなよ!!」と本気でキレそうになり、思わず家から飛び出してしまったからである。

そのショッピングモールへ立ち寄るには大きく回り道をしなければならなかったが、それでも、今の自分を受け入れてくれそうな場所へ行きたかった。

その時は生鮮食料品コーナーで野菜を眺めていたことを今でも覚えている。

普段の買い物であれば、そんな場所へ向かうことなどないが、コンビニの仕事で疲弊していた私は、以前働いていた野菜販売の仕事がとても恋しくなり、「あの時に戻りたい」という思いで、それまで見慣れていた商品を見つめていた。

コンビニの仕事は、最後まで慣れることはなく、出勤前はいつも憂鬱だった。

今は夜勤でもなければ、出勤前に憂鬱を感じる職場でもない。

すべてに満足しているわけではないが、そのことに感謝して、明日からも頑張っていこうと思う。

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