職場で涙を流すのは本当にダメな人たちなのか?

昨日、この記事を読んだ。

https://netallica.yahoo.co.jp/news/20190706-91812496-sirabee

どうやら、近頃の若者は職場で泣くことが珍しくないらしい。

この記事を書いた人は読者が

「まったく、最近の若いモンは親に叱られた経験もないもんだから、下手に叱るとすぐに泣いてしまう。そして、『パワハラだ!!』と騒ぐ。彼らとはどう接したらいいのか分からない…」

「精神的に打たれ弱すぎだ!!」

「失敗したら泣いて許しを請うのではなく、失敗したからこそ、もう一度、自分から立ち向かうだけの強さはないのか?」

と、(実に嬉しそうな顔で)嘆くことを期待しているのだろうが、私はこれを読んで全く違うことを思った。

へぇ~、最近は涙を流すほど熱心に仕事をする若い人が増えているんだあ。

・心の護身術

ちなみに、私は仕事のことで泣いたことなど一度もない。

理由はもちろん、私が人前で涙を堪えることができる強い人間だからではない。

私は単に涙を流すほど熱心に仕事に取り組んでいないだけである。

皆さんもご存じだと思うが、電化製品にはヒューズという装置がついている。

一定以上の電力が流れて、この装置が作動すると、電気の流れが止めるので機械の故障や火災を防ぐことができる。

どうやら、私の心にもこの装置とよく似た何かがあるようで、雷を落とされて、延々と説教(場合よっては罵倒)される場合には、(無意識の内に)この安全装置が作動して、口では「はいはい」と言うものの、相手の怒りを完全に遮断する防御モードに切り替わる。

そして嵐が通り過ぎたら、心の中で一言

はぁ?? 知らんがな!!

と唱える。

私はこのようにして、自分の心を守っている。

余談だが、かつて関西出身の人と働いていた時に、彼がこの言葉を使って開き直る姿を何度も見ていたので、私も真似させてもらうことにした。

だから、泣きはしないが反省もしない。

自慢するようなことではないが、仕事中に怒られたことは何度もあるものの、その結果、「自分が悪い」と思ったことなどほとんどない。

働き始めた10代の時は怒られて落ち込むことはあったが、ここ数年は全くない。

仕事など所詮は食い扶持であり、その程度の姿勢で十分だと思っている。

それに比べたら、(悲しいにせよ、悔しいにせよ)

仕事中に涙を流すとは、なんて真面目で情熱を持った人なのだろうか!!

決して、皮肉ではなく率直にそう思う。

・新入社員の涙

先ほど申し上げた通り、私は職場で泣いたことなどない。

だから、ここでは参考までに、職場で同僚が涙を流していた時の経験について書かせてもらいたい。

3ヶ月前の記事で、かつての勤務先の経験を書いたことがある。

その中で、派閥支配で職場を仕切る工場長代理(通称:軍団のボス)が、自分のミスを新入社員のせいにして、派閥のメンバーもボスの失敗に気づかないフリをし、その新入社員を一斉に非難したという出来事を書いた。

その日の終了時刻は定時から2時間以上遅れることになり、遅れる原因を作った(冤罪甚だしいのだが)新入社員が作業終了後、一人ひとりに謝っていた。

彼女が私に謝りに来た時、私は彼女が涙を流している様子を見たわけではないが、彼女が涙声で謝っていたので、私は彼女が泣いているのだと悟った。

幸い、周りには私たち以外に誰もいなかったので、私は彼女を励まそうと思い

「そもそも悪いのは無能かつ無責任なブス…じゃなかった、ボスであり、あの腰巾着もボスのミスを見て見ぬフリするために、あなたを非難しているだけだから、あなたが謝る必要はありません」

と伝えた。

しかし、彼女は真面目な性格だったため、たとえボスのミスでも、確認しなかった自分が悪いと言って自分を責めていた。

それを聞いた私は彼女にかける言葉を見つけることができなかった。

A君の余裕

今度は、先ほどの真面目な新入社員とは全く逆のメンタリティを持つ人のエピソードを紹介しよう。

これは20代で販売のバイトをしているA君のケースである。

彼はこれまでも同じ業種で働いた経験があったため、新入りではあるが、この仕事についてはある程度把握しているつもりだった。

ある日、A君が商品に値札を貼る時にミスを犯した。

しかし、本人は自分のミスに気づかなかった。

それは彼が今まで働いていた職場では全く問題になることではなく、違法行為に当たるわけでもなかった。

ただ、それは会社の内規に反する行為であり、A君はそのことを知らなかったのである。

翌日、たまたまA君の職場に内部監査が入り、A君が値貼りした商品が運悪く見つかってしまった。

A君の上司は、その職場で最も勤続年数が長く、最低賃金+お小遣い程度の役職手当で「班長」という役職を与えられた60代のパートの女性だった。

ちなみに、その60代パート女性(班長)がA君に指示を与えるものの、会社の規定では「管理職は正社員でなければならない」とあったため、A君の職場から30キロ程離れた店舗の部門長(仮名:B氏)が名目上はA君の管理責任者になっていた。

というわけで、A君のミスは職場から随分と離れたところにいる管理責任者B氏が負うことになった。

班長は自分の仕事に強いプライドを持っており、バイトのA君にもそれ相応の働きを求めていた。

だから、そのミスがどうしても許せず、彼を強く叱責した。

「いつも言っているでしょう!?」

「お金を貰うってことは大変なことなのよ!!」

「仕事をナメないで!!」

だが、当のA君は口でこそ「すいません」と言っているが、自分が悪いことをしたとは全く思っていなかった。

彼は内心、

「仕事をナメてるのは、60を過ぎたパート従業員の老婆に最低賃金+100円の小遣いで『班長』などやらせている上に、ここから数十㎞も離れた場所で働いているB氏を責任者にしている会社の方だろ!?」

と思っていた。

通常、バイトのミスは上司である社員のみが始末書を書くことが習慣だったが、A君のミスを重く見た班長は自分も始末書を書き、A君にも始末書を書かせて反省を促そうとした。

班長は尚も凄い剣幕でA君を叱りつける。

「社会人が始末書を書くということが、どれだけ重大なことなのか分かるの!?」

「あんたはそれだけ大変なことをしたんだよ!!」

しかし、A君はここでも「はい。すいません」と返事をするだけで、始末書を書くことの重大さなど全く理解しようとしなかった。

腹の中では、鼻の孔ほじりながら「ほ~ん。で?」と言ってそうな様子で

「俺はそんな宗教観を持ってないから、始末書なんてあんたの個人情報と同じくらいにどうでもいい、ただ紙クズとしか思ってないよ」

「つうか、こんな時だけバイトも社会人扱いなんだwwwwww

と思っていた。

A君には「自責」という概念がないのか、どこまでも余裕を持っていた。

名目上の責任者であるB氏が始末書を書かされた上、それが次のボーナスの査定に影響する可能性があるという話を聞かされても、

B氏は可哀そうだなぁ。人件費をケチるために、数十キロも離れた場所で働く人にそこまでの責任を負わせるなんてヒドイ会社だ!!」

と他人事のように思い、その後にようやく「そうか、原因は自分だった」と気づくほどである。

翌日もA君は「昨日のことなどどこ吹く風」とばかりに平気な顔で出勤していた。

・間違っているのはどっちかな?

察しの良い人なら薄々勘付いたと思うが、このA君とはかつての私のことである。

私が自分の過去の失態をわざわざ公開したのは「職場で涙を流すような奴は社会人失格だ!!」と憤慨している人に問いたいからである。

①:人のミスを自分のミスだと思い、自分を責めて涙を流す真面目な人間

②:自分がミスを犯しても、泣くどころか、屁とも思わぬ態度で「はいはい」と言って、「自分が悪い」などとは全く思わない人間

さあ、あなたが部下として欲しいのはどちらですか?

あなたが社会人失格だと思うのはどちらですか?

ほとんどの人は①を選ぶでしょうが、それでも職場で泣く人のことを責め続けますか?

それとも、「どっちも社会人失格!! 自分が若い時は~」とか言いながら記憶を捏造しますか?

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