日本もようやく台風で休める社会になってきている

先週は東日本に立て続けに台風が上陸した。

関東在住で、上陸日の16日が仕事だった私は、台風7号の影響をもろに受けることになった。

幸い、当日は無事に出勤できたものの、前日の夜から当日の朝にかけては、台風上陸の影響による交通機関の運行情報を頻繁に確認していた。

今回はJR東海が東京ー名古屋間で東海道新幹線の運転を終日取り止めたことを始め、多くの鉄道路線で計画運休が行われた。

台風 交通機関影響 運休 欠航は JR 東海道新幹線 東京-名古屋 計画運休【8月15日】 | NHK | 台風

計画運休については、これまでも何度かあり、度々「最近の鉄道会社はすぐに運休し過ぎ」と批判されることもあるが、動かない電車を当てにして、駅に乗客が殺到したら、それこそパニックになるため、やむを得ないとも思っている。

一方で少し意外だったのは、コンビニやスーパーも次々と休業を発表したことである。

コンビニなども一部の店舗で休業 (15時現在)|NHK 首都圏のニュース

最初にこのニュースを耳にした時は、運休する路線の駅構内の店舗を休業するのかと思っていたが、そうではなく、台風が直撃する可能性が高い地域の店舗のことだった。

台風がやって来ることになれば、お店も事前に休業を宣言するのか…

この流れには驚いたが、喜ばしいことである。

なぜなら、かつて私は台風の中、無理やり出勤させられた経験があるから。

それも正社員ではなく、アルバイトの仕事をしていた時に。

・開店時間までには出社してね

今から9年前の2015年。

当時の私は、翌年にオーストラリアでワーキングホリデーをする計画を立てており、そのための資金稼ぎとしてアルバイトに勤しんでいた。

バイト先はこの記事にも登場したディスカウントストア内にテナントを出店している青果販売店である。

店舗の従業員は、私の勤務初日こそ店長のカワグチ(仮名)と年配の男性がもう一人いたが、私がやって来て1時間も経たずに二人が喧嘩して、年配の男性が去ったため、以降は私と店長の二人だけになってしまった。

その会社で働き始めて3ヶ月程経った時に大型の台風が上陸。

朝から殴りつけるような雨風が飛び交い、とても車の運転など出来そうにない。

当然、地元の鉄道やバスも運休している。

私の出勤時刻は8時なので、毎日730分には家を出ていたが、天気予報によると、9時がピークとのことだった。

この時点で出勤が不可能なのは明らかである。

私は店長に電話で、出勤時間が遅れそうになることを告げた。

すると、彼は渋るような声でこんなことを言った。

店長:「うーん、分かった。だけど、俺は市場に行っていて開店時間には間に合わないから、せめて開店時間までには出勤してね」

その店の9時に開店する。

つまり、出勤時間を遅らせて、開店時間ギリギリに到着しようとすれば、今よりもさらに危険なことになる。

そのことを告げると、彼は他人事のような態度で一言。

店長:「じゃあ、今から出た方が安全なんじゃないの?」

回りくどい言い方をしているが、要するに「台風だろうが、構わず出社しろ!!」と言っているのである。

この時は前年の苦い経験から、すでに「もはやアルバイト=簡単な仕事ではない」と認識していたが、それでも、アルバイトなのに、台風の中で出社させられるとは思ってもいなかった。

今の私だったら、その発言を聞いた時点で「こんな天気でも出勤させられるくらいなら、仕事辞めます」と言って退職宣言するが、当時はどうしてもワーホリの出発を遅らせたくなかったので、嫌々ながら出勤することになった。

免許を取得して、すでに4年目を迎えていたが、こんな天気で車を運転したことはない。

案の定、出発早々、強風に煽られ真っすぐ走ることを出来ず、ワイパーの超高速モードを初めて使わなければならない程、雨が打ち付けて来る。

道路の真ん中に木や看板が倒れていることもあった。

・台風の中で営業しても、得をするのはバカと悪人だけ

何とか無事に辿り着いたものの、本当に腹が立った。

開店1時間後にやって来た店長からは当然、謝罪も、お礼も、心配する言葉もなかった。

この時、私は2年前に働いていた職場のことを思い出した。

その頃の私は工場で働いていたが、同じように台風がやって来るということで、正社員のキモトやB(共に仮名)が本部や取引先と掛け合って、仕事を早めに打ち切って、私たちパートやアルバイトを早退させ、「自分たちが残りの仕事は片付ける」と宣言してくれた。

当時は「正社員だから、それは当たり前」くらいに思っていたが、世の中にはカワグチのように、その責任を全うしない正社員も少なからずいるので、彼らのような人物が上司であることがいかに恵まれていたことかを実感した。

彼がアルバイトの私に出社したのは、私が開店時間までに出勤しないと、商品の陳列や不良品の破棄などが出来ず、販売できる状態にならないため、「それは困る!!」というディスカウントストアからの圧力でもあったのだろうか?

さすがに、普段から「持ちつ持たれつ」と言いながら、植民地支配をしているだけでのことはある。

だとしたら、そんなことを強いるディスカウントストアにも抗議すべきだった。

だが、本当にそうなのだろうか?

私が働いていた時は、彼らのことを「テナントを植民地だと思っているとんでもない連中」と思っていたが、この記事で取り上げた通り、後に働いていた職場で、彼らは意外にも取引先には寛容で、大雪によって指定日の納品が厳しくなった時は「天気だから仕方ないですよ」と言って、認めてくれた。

つまり、店長が勝手に「何としても開店時間に間に合わせなければ」と追い込まれていただけなのではないか?

ちなみに、店は定刻通り、午前9時に開店した。

「こんな天気で開店したところで、やって来る客なんているのか?」と思ったが、いたのである。

前回の記事の冒頭に取り上げた、ショッピングセンターのフードコートに何時間も居座るような暇でどこにも居場所がない哀れな高齢者が。

こんな天気の中で店を開けることにこだわる店もバカだが、平然とやって来る客も同じレベルのバカである。

台風の中で店を営業しても、得をするのは従業員を危険に晒すことを厭わない悪徳企業と、買い物をする店以外に居場所がない哀れな客だけである。

お店ではないが、現代だとテレワークを認めない会社も同類に含まれる。

こんな悪人共が幅を利かせないように、これからは台風の日にはどんどん閉店して欲しい。

警察や自衛隊、インフラ事業の従事者のように、自然災害の時こそ、命を懸けて職務を遂行しなければならない仕事も存在するが、大半の労働者は1日や2日休んだところで大した影響がない仕事をしている。

そんなことはコロナ渦で多くの仕事が休業や事業所のロックダウンに追い込まれた時に痛感したはずである。

ブラック企業やパワハラ上司の常套句である「お前の代わりはいくらでもいる」とは、決して間違いではないのだ。

もっとも、それは彼らの望みとは、全く逆のことを示しているのだが…(笑)

今回の台風接近に伴う動きを見ると、日本もようやく「台風の日は休業する」という当たり前の社会になりつつあるようである。

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