前回の記事では、かつての勤務先がいかにひどい会社であったかを語る同僚の話をした。
そこで話題に挙がった企業は、いずれも私の地元にある会社である。
地元を離れてしばらく経ち、その間に労働改革なども実施されたが、その時の会社も少しはマシになったのだろうか?(そもそも存続しているのだろうか?)
記事を書いていると、そんなことが気になり、あの時彼らが口にした会社名を検索していた。
その結果、複数の求人情報を発見した。
地方ということもあるが、正社員であっても月給は額面で17万~20万といったところで、時間外労働も月平均20時間といった、満足とは言えない労働条件である。
もっとも、それすら嘘の可能性もあるが…
こうして見ると、東京の生活に嫌気が差してきているとはいえ、やはり「地元に帰って平穏に暮らす」ということは難しそうである。
だが、別の視点も頭に浮かんだ。
そのような恵まれない条件で働いていた人がいたことも事実である。
・正社員として働く人は大変そう
私は高校1年生の時にスーパーのアルバイトとして初めての仕事に就いた。
その時の上司はこの記事に登場した男性で、自慢話や説教をされることも多かったが、バイトの私やパートのおばさんに仕事を丸投げすることもなく、それなりに面倒を見てくれたと思っている。(妙に上から目線で申し訳ない)
当時の私は正社員の労働条件など考えたことがなかったから、彼がどんな待遇で働いていたのかは知らない。
ただ、学生の時から「正社員という働き方は、勤続年数に合わせて給料が上がり続け、福利厚生も充実しているもの」と聞かされていたので、「彼もきっとそのような感じなんだろう」と思っていた。
次に働いたのは、ハローワークの求人に応募して働くことになったこの会社。
前職の上司は休日に急な呼び出しをされることもあったが、少なくとも毎週1日以上は休むことが出来ていた。
しかし、こちらの職場の上司は月に1日しか休みがないこともザラだった。
彼は同じ会社であるものの、元々は配送の仕事をしており、その時の習慣から、当初は日曜日が休みだったようである。
そして、販売職に転じてからも、同じく日曜日が休みという条件だったのだが、売上が多い日曜日に、唯一の正社員である自分が休むということは気が引けたようで、しばらくの間は休みなしで働いていた。
もちろん、彼の体調は心配していたが、当時はブラック企業という言葉も普及しておらず、「正社員は会社から呼び出しがあれば、常に出勤しなければならないから、仕方ないのかも」と思っていた。
その対価として、手厚い福利厚生や年功賃金という恩恵を受けられるのだから。
だが、退職後にハローワークで、たまたまその会社の求人票を見た時は驚いた。
彼が退職したのか、正社員として募集だったのだが、社会保険以外の手当等は一切なく、月給も額面で最大17万だったのである。
そして、休日は日曜だけの週1日と書いていたが、彼の勤務状況を思い浮かべると、それも本当なのか疑わしい。
この時は「とんでもない会社だ!!」と思ったが、その後でいろいろな仕事を経験すると、休日はともかく、給料や手当については似たような会社ばかりであった。
その一方で、「仕事も給料相応で問題ない」と言われていたかといえば、そうではない。
彼らは正社員ということで、常に私たちバイト・パートの不祥事の尻拭いをしたり、残業したり、上からの矢面に立っていた。
それも、決して文句を言わずに。
月給50万円程貰えるのであればともかく、あれぽっちの給料で同じことをやるなど、私には出来ない。
彼らはなぜあそこまで一生懸命働いていたのだろう?
生活のため?
家族を養うため?
正社員としての立場を失わないため?
その理由は分からないが、彼らがあそこまで必死に働いていたのは、正社員としての責任感があったからなのではないかと思う。
・この人は本当に正社員なの?
当時はそれが当たり前だと思っていたが、今では、彼らがとても大変な仕事をしていたことがよく分かる。
なぜなら、今では私自身が正社員として働く責任の重さを毎日のように痛感しているから…
…というような展開を期待していた人もいるかもしれないが、そうではない。
私がかつての上司たちの偉大さを理解出来たのは、その後、あまりにも無責任な正社員を目の当たりにしたからである。
たとえば、この記事に登場したカワグチ(仮名)とか、直接面識があるわけではないが、元ルームメイトの話に出てきたパワハラクソババア(仮名)などである。
彼らは「責任感」という以前に、人として問題がある極端な例だが、東京で働き始めてからは、ろくな業務管理も出来ずに、失敗を犯した部下を「自己責任」だと切り捨てる正社員に何度も出くわしてきた。
また、正社員のみ在宅勤務を認めている会社は、大雪や台風の日に、部下である派遣やパートのみ出社させて、自分たちはのうのうと在宅勤務をする社員がかなりいた。
お前らそれでも正社員か!?
と言いたくなったのは一度や二度ではない。
かつての私の上司たちも、その姿を見たら同じことを感じるに違いない。
一昔前までは「お気楽な非正規と違い、正社員は雨が降ろうが、槍が降ろうが、地べたを這いつくばって会社へ行く責任がある!!」という論調も少なくなかったが、そんなものは完全にハッタリであり、危険を感じたら、現場を非正規に丸投げして、真っ先に逃げ出す正社員だって少なくない。
ただ、誤解がないように言っておくと、東京に出てきてからも、最初に働いた職場やこの記事で紹介した上司は決してそんなことはなかったため、これは地域差によるものではなさそう。
そうすると、やはり、「責任感」という個人の資質の問題だろうか?
彼らを見ていると重大な勘違いをしているように思える。
「部下(非正規)の失敗をカバーするのも正社員の仕事」という認識の欠如。
そのような汚れ仕事も行い、会社の命によって勤務地や職種の変更も受け入れるため、その対価として、年功賃金や手厚い福利厚生を得られる。
にもかかわらず、
「非正規の仕事をカバーするために残業するのは嫌!!」
「地方へ転勤になるのは嫌!!」
「事務から現場へ回されるのは嫌!!」
というわがままを連発する正社員も数多く目にしてきた。
「あなたたちはどうして正社員として働こうと思ったんですか?」と言いたい気分である。
彼らは「自分が優秀だから、高い賃金を得られる」とでも勘違いしているのだろうか?
そんな人たちの末路を紹介したのがこちらの記事。
「正社員は非正規と違って、責任がある仕事をしている!!」
口ではそのように言っているが、本気でそれだけの覚悟を持っている人間など、果たしてどの程度いるのだろうか?