・実は自分も同じようなことが…
先日、職場で研修を受けることになった。
その研修は会議室で同じ部署の社員と2人で受けることになったのだが、その際に彼がある失敗談を語った。
詳しい内容は明かせないが、彼が所属して居た部署が、知らず知らずに法に反することをやってしまい、後々大目玉を喰らったという話である。
それを聞いた私は「そうなんですね~」と流したが、話を聞いた瞬間、こんな反応をしてしまいそうになった。
「私も過去の職場で似たようなことがありましたよ!!」
それを思いとどまったのは、そのエピソードをブログに書いていたからである。
もし、ブログを書いていなかったら、口が滑っていたかもしれない。
口下手で、同僚とは常に打ち解けない私でさえ、前職での話(特に失敗ネタ)は楽しく話してしまいそうになる。
だが、これは危険なことではないだろうか?
半年前、企業の情報漏洩についての研修を受けた。
そこで聞いたのは、サイバー攻撃などによる流出も確かに存在するものの、情報漏洩の大半はうっかりとした人為的なミス、つまり気の緩みで起きるというもの。
代表的なものは、USBメモリなどの記憶媒体を社外へ持ち出したことによる紛失や、メールの誤送信だが、最もアナログな例が、社外での何気ないお喋りだった。
特に退職した後は「もう自分には関係ない」と思って、思わず口を滑らせることもあるが、秘密保持の同意書は退職後も有効であるため、「くれぐれも油断しないように」とのこと。
たしかに、前職のこととなると、どこか他人事となり口が緩みがちになる。
しかも、この手の話は相手の共感を得られると、どんどん暴露してしまう。
実際に、同僚がそうした過去の職場の暴露話をしたことで「そんなひどい会社なんだ」と感じたことは何度もある。
・急いで中国産を隠せ!!
かつて、スーパーでアルバイトをしていた時に、農林水産省の担当者が食品の表示について抜き打ちの監査にやって来たことがある。
監査の対象になったのは、他部署だったものの、その日は私が所属していた部署でも、その話題で持ち切りになった。
そこで、同僚のパートのおばさんが、以前の職場にも同じような監査がやって来た時の話をした。
彼女は小規模な食品工場で働いていたそうだが、そこで食品衛生の立ち入り監査が入り、工場長が大慌てでこんな指示をしたそうである。
それを聞いた私は何で中国産の食品を隠す必要があるのか分からず、彼女に理由を聞いてみた。
早川:「なんで監査が来たら、中国産のものを隠す必要があるんですか?」
同僚のおばさん:「だって、完成品には『中国産』とは一切書いていないから」
なるほど・・・
・・・って、
なにとんでもない秘密を暴露しているんですか!?
笑いながら言っているけど、れっきとした産地偽造である。
しかも彼女は、ご丁寧に「○○で働いていた時に…」と会社の名前をハッキリと出した上で、先ほどの監査の話をした。
これだって、立派な内部情報の暴露になるのではないか?
・あの会社は酷かった
このように話の流れで前の職場の重大な情報を暴露するのは、何も先程のおばさんだけではない。
このブログで度々、オカダ(仮名)という元同僚の話をしている。(初登場はこちら)
彼とは10年程前に同じ職場で働き、年齢は彼の方が20歳以上年上であるが、とても気さくな人物で、二人で仕事をしている時はよく世間話をしていた。
彼が働き出す半月程前に近所に同業者の工場が建設され、元同僚たちが数人そちらへ移ったという話をしたら、彼もそこの会社の面接を受けたことを告白された。
彼曰く、求人票を見た限りでは、そちらの会社の方が魅力的だったが、面接でとんでもないことを言われたという。
先ず、事務職の募集であるにもかかわらず、実態は営業職の募集だったこと。
つまり、完全な偽装(釣り)求人だった。
それ自体は、過去にも経験したことがあるため、そこまで驚かなかったものの、彼はさらにこんなことを言われた。
「社員は基本的に休みがないから」
それを聞いた彼は思わず「え!?」という顔をしたらしい。
その瞬間、担当者の顔がムッとした表情になり、後日、不採用通知が送られてきたという。
とんでもない会社であるが、その話を聞いた別の同僚も、過去の職場について語りだした。
その人物は、前職で運送業に就いていたが、休みは月に2回あれば良い方で、残業代も支給されず、奴隷のようにコキ使われたという。
さらに、取引先のわがままに散々振り回されて、「今ではその会社では絶対に買い物をしないと決めている」とも。
このように、前職でのブラックな労働環境は、それまでの怨念もあるのか、至る所で耳にする。
ブラック企業の場合は違法行為であるため、それを暴露したところで、秘密保持義務違反に該当するかは疑問だが、前職での出来事は些細な油断ですぐに口が滑ってしまうため、注意しないといけない。
逆に言えば、企業側にとっては、(「元」を含む)従業員による情報漏洩を防ぐ一番の方法は至って簡単で、そもそも悪いことをしなければ、彼らから恨みを買うこともなく、彼らからの暴露されることを恐れる必要もない。