体調不良なのに出社を強要する者はテロリストである

前々回の記事は水泳の授業がテーマだった。

近年は悪い方へ原点回帰しつつあるが、水泳の授業や通勤ラッシュの混雑はコロナのおかげで一時的にでも抑え込むことができた。

個人的に3大コロナの功績と呼べるものが上記の他にもう一つあると考えている。

それは、体調不良で堂々と仕事や学校を休めるようになったことである。

・病欠3日は多すぎると憤るバカ

これは私が高校生だった1520年前のことである。

私が通っていた高校は進学校ではなかったため、日頃から教員連中に口やかましく

「青春などどうでもいいから、とにかく勉強しろ!!」

「人生を成功させるために、一流大学に合格しろ!!」

と勉強を煽られたことはなかった。

一方で、就職への備えのつもりか、事あるごと「社会の厳しさ」と称した指導がなされた。

たとえば、入学して間もない頃に行われた、高校生活を送る上でのオリエンテーションでのことである。

生活指導の教員が、「企業の採用担当者は、成績よりもむしろ、学生の日頃の生活態度を気にしている」と言った。

彼はそこで担当者との具体的なエピソードを話した。

かつて、彼は優秀な成績の教え子をそれなりの有名企業に推薦したのだが、先方の担当者は、その生徒の出席記録を見るなり、「え~、この子は体調不良で3日も休んでいるんですか!?」と嫌な顔をされて、その後は案の定、不採用になったという。

彼はその時の体験から、私たち生徒に「風邪程度では絶対に休むな!!」と訴えた。

今になって思うと、そんな破廉恥な人物が採用担当を任されている会社に、大切な教え子を送り込もうとしたこのセンコーも大概ヤバい奴だが、この社会では、他人の健康などお構いなしに出社を強要するバカが幅を利かせていたのである。

たとえば、この記事に登場した上京前のバイト先の店長は、年末にインフルエンザに感染したが、繁忙期ということで社長から出社を強要されていた。

ところが、コロナが蔓延した2020年頃には、感染拡大を防ぐことが社会的な目標になり、少しでも感染の疑いがある症状があれば、他人への接触を避けるために、仕事や学校を休むことが推奨された。

そのおかげで、この社会もよ~やく「体調不良で休むことは、サボりではなく、他人のためでもある」ことが認識されるようになった。

この記事でも紹介した通り、「1日も休まずに学校へ通うことが偉い」と考える皆勤賞などという下らない風習も廃止されつつある。

そんな中、体調不良での出社(出席)を強要する大バカ者も、反社会的な悪者としての自覚を持って、改心しつつあった。

・インフルエンザの感染は個人の怠慢ではない

ところが、出社強要モンスターの中には、往生際が悪く、改心するどころか新たなヘリクツを展開し始める者もいる。

そんなバカが好んで使うフレーズが「体調管理も仕事のうち」である。

念のために断っておくが、私は「仕事に備えて体調管理を行うことが大切」という考え自体には同意する。

たとえば…

  • 翌日の出勤に備えて、残業はしない。

  • くだらない会社の飲み会などにも参加しない。

  • 精神的に病まないように、勘違い上司の自慢話からは全力で逃げる。

  • 職場や通勤中の感染リスクを避けるために、積極的にテレワークを行う。

  • 個人の症状が悪化したり、職場で感染拡大を防ぐために、無理に出社しない。

これらはどれも、業務を遂行するための体調を整えるという意味では大切なことである。

普段は偉そうな顔で「体調管理も仕事のうち」と説教している人は、当然同意してくれるはずである。

ところが、連中の口からはこんな言葉は全く聞かれない。

それではどんな時に使うかといえば、体調不良で休む人を糾弾する時である。

ある意味では一貫しているのだが、ここまで病欠を認めるのが嫌いな様子を見ていると、「彼らの方が何らかの病気に感染しているのでは?」と疑いたくなる。

出社の強要はあくまでも業務命令だから、そのことで損害が生じたら責任を負わされるが、こちらはその責任すら持つつもりはなく、結果論で自己責任を押し付けるのだから、より質が悪くなったと言える。

ちなみに、この類のバカは、他人の体調管理には厳しいクセに、自分たちの失策によって、他人の健康に害を与えていることには、清々しいまでに無関心である。

これは、かつて同僚だった派遣社員から聞いた話である。

彼は翌月限りで契約を終えるため、仕事をしながら次の職を探していた。

そこで、同じ派遣会社から紹介された職場に面談に行ったのだが、派遣会社の営業から「先方が面談中はマスクを外すことを希望している」と言われたという。

彼は嫌な予感がしつつも、言われた通り、マスクを外して面談を行ったのだが、その結果…

すぐに体調を崩し、インフルエンザに感染した。

どこで感染したのかは一目瞭然である。

さらにひどいのは、彼は面談中に「この仕事はテレワークを行うつもりはないので、出社するための体調管理も仕事のうち」と言われたそうなのだ。

出社とマスク外しを強要して、インフルエンザに感染させておきながら、「よくもヌケヌケとそんなことが言えるな…」と驚いた。

その加害者意識の無さには恐れ入った。

「体調管理も仕事のうち」と言っている人間がいかに無責任かがよく分かる。

ちなみに、インフルエンザの感染については、本人の責任は全くないとは言わないが、社会の怠慢によるものが大きいと思う。

たとえば、2020年はインフルエンザの感染者が激減した。

【医師監修】インフルエンザが減少している理由はコロナ禍?ウイルス感染を防ぐ方法 | アルコール手指消毒剤手ピカジェル |健栄製薬 (kenei-pharm.com)

その理由は、コロナの感染拡大を防ぐために、マスクの着用、手洗い、消毒、換気、密を避けるための行動が徹底されていたからである。

毎年、インフルエンザの季節になると、「マスクだ!! 予防接種だ!!」と訴えかけているが、「人類が危機感を持って、本気を出せば、インフルエンザ程度は簡単に防げるんだ…」と思い知らされた。

社会全体で取り組めば、大した脅威ではないインフルエンザが蔓延することは、感染者本人の責任ではなく、社会全体が平和ボケして気が緩んでいる証なのである。

もっとも、一番の戦犯は、テレワークを認めずに、多少の体調不良では病欠を認めない出社モンスターなのだが…

・コロナ渦を耐え抜いてより凶悪化する

コロナのおかげで病欠による休養に寛容な社会になり、体調不良でも出社を強要するヤバい人も多くは自粛、もしくは更生することになったが、生き残った者はより凶悪化して、「体調管理も仕事のうち」という伝家の宝刀を(間違った意味で使いながら)振りかざすようになってしまった。

まるで、殺虫剤が普及したことで、多くの蚊やゴキブリを駆除出来たが、その中を耐え抜いた猛者は免疫を作り、種としてはより強力になる構図とよく似ている。

奴らは体調不良で出社を強要するだけでなく、自己責任論という武器を手に入れたことで、今後はますます図に乗って横暴になることは間違いない。

最近は新変異株によりコロナの感染者が急増している。

新型コロナ第11波が本格化 経済負担や熱中症が追い打ち、救急・医療も逼迫 – 産経ニュース (sankei.com)

国や医療機関は対応に追われているが、出社モンスターは自分たちの責任などな~んも考えず、たとえ職場に感染者が出てても、「感染者が増えているのに、体調管理を怠った自己責任」と笑って切り捨てるであろう。

だが、はっきりと言わせてもらいたい。

体調不良での出社を強要する者はテロリストである。

奴らは、病人に出社を無理強いした結果、より感染を拡大させるなど、病気にかかった人の命だけでなく、職場、さらには社会全体までも脅威に晒している。

こんな危険人物はテロリスト以外の何者でもない。

「たかが風邪で休む者は社会人としての自覚が足りない!!」などという説教は、殺人者として咎を負う覚悟がある人間のみが使うべきである。

かつてはそのような無責任な輩で溢れかえっていたが、コロナ渦で感染者どころか、多くの人が出勤できなくなって判明したのは、この社会では、体調不良を堪えてでも出勤しなければならない仕事をしている人など、本当にごくわずかで、ほとんどの会社では、病欠で数人休んだ程度で、業務に支障が出る仕事などやっていないという事実である。

にもかかわらず、「体調不良なんかで休まれたら困る!!」などと憤っているのは当人のマネジメント能力のなさが原因と言える。

彼らの言葉を借りるなら、「病気で欠員が出ても、支障がないよう業務管理を行うのも仕事のうち」であり、それが出来ないのは本人の自己責任と言えるであろう。

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