「今年もこの季節がやって来たか」
そう思ったのは、今から2週間ほど前のことだ。
私がそう感じるほどの毎年恒例となっているのは、バレンタインデーでも、卒業式でもない。
それは確定申告である。
私はごく普通の会社勤めをしており、高収入でも、株や副業による収入があるわけでもない。
ハッキリ言って、会社に年末調整を任せたら事足りるのだが、それでも毎年自分で確定申告をしている。
そうすることで、毎年の収入と納税額を把握することが出来る。
これは意外と重要で、この記事に書いた通り、世の中にはいい歳をした大人であっても、年末調整の書類すらまともに記入出来ない人間が少なくない。
出来ないだけならまだしも、そもそも覚える気すらない人も多い。
さらに、自分がどれだけの税金を納めているかも知らずに、「日本は税金が高すぎる!!」と憤慨するバカもいる。
彼らは私にとって反面教師であり、決してあのような人間になりたくないと思っている。
だが、確定申告の最大の醍醐味はなんと言っても、源泉徴収で天引きされた税金の一部を還付金として自分で取り返せることである。
年末調整でも同様に返還されるが、その他の収入の一部として組み込まれていることと、自分で確定申告をして取り戻すことは喜びが全く違う。
今年の還付金はおよそ2万円。
元々、自分の給与として稼いだお金の一部だったとはいえ、この歳になってもお年玉を貰えたような気分だ。
こうして毎年確定申告を楽しんでいる私だが、初めての時はとても気が滅入る思いをしていた。
・忍び寄る恐怖の影
私が初めて確定申告を経験したのは、10年以上前の2013年だった。
年が明けた1ヶ月が過ぎた頃、市役所から「前年の所得が確認できないため、確定申告をするか、送付した書類に収入を記入してほしい」という案内が届いた。
当時の私はすでに成人していたが、それまで確定申告とは無縁の生活を送っていた。
ではなぜ案内が届いたのか。
それは…
前年の年末に無職だったからである。
そう言われても多くの人は、「何だそんなことか~(笑)」と拍子抜けするだろう。
だが、私は大きな関門が聳え立っているように怯えていた。
なぜなら、無職になる前に勤めていた職場とは、このブログで度々取り上げているブラックバイトだったから。
私はそこをバックレ同然で退職した。
その報復のつもりか、それまで銀行振り込みだった給与が手渡しに変えられてしまった。
それでも諦めるわけにはいかなかったので、それまでの人生で五指に入るであろう長い一日を経て、なんとか回収した。
こんな別れ方をしたので、その職場とは今後一切関わりを持ちたくなかった。
しかし、もしも、確定申告の際に彼らが発行する書類が必要だったら…
考えただけでぞっとした。
そもそも私は確定申告が必要なのだろうか…?
それすらも分からなかった。
年末調整の書類をまともに記入できない人をコケにしているが、かつての私も全く同じだった。
そこで、送られてきた書類を記入し、市役所の相談窓口を訪ねた。
相談の結果、確定申告が必要であることが判明。
担当者から「半月後に市役所近くの申告会場へ行って、この書類と必要書類を提出してください」と言われた。
「必要書類」とは一体何だろう?
それについても訊ねたところ、印鑑や口座が確認できる通帳やカード、身分証明書と共に聞きなれない名前も言われた。
それは「源泉徴収票」である。
私はそれが何なのか分からず、ネットで調べたら、どうやら給与支払者、つまり勤め先が発行する書類とのことだった。
そうである。
これこそ私が恐れていたものだった。
バックレた上に、奇襲をかけて手渡しの給与を回収した相手に、今更どのツラを下げて「源泉徴収票を送ってください」などと言えばいいのだろうか…
…と頭を抱えていたが、あることを思い出した。
「そういえば、手渡しにされた給与を受け取った時に、給与明細とは別の書類が入っていたような…」
その時の封筒はまだ保管していたので、恐る恐る中を確認すると、その書類が残っていた。
紛れもなく、それは源泉徴収票だった。
これで、何とか確定申告は乗り越えられそうだ。
だが、無事に申告が完了するまで油断できない。
そうして、当日まで怯えながら確定申告会場まで向かった。
その結果は…
無事に提出が完了した。
この後で、「添付書類が不足していましたので、提出をお願いします」と連絡が入らない可能性が全くないわけではないが、何とか無事に確定申告の壁を突破できた。
・確定申告とはその後も付き合う
「もうこんな思いはコリゴリだから、確定申告とは無縁の生活を送りたい」
そう思っていたが、現実はそう甘くなかった。
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就業前の(国民年金などの)社会保険料の控除申告漏れ
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提出書類の不備
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12月に転職して、年末調整に必要な書類の発行が間に合わない
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そもそも会社が年末調整をやってくれない
こうした理由で、結局毎年確定申告をすることになった。
しかし、自分で還付金を取り戻す楽しさを覚えた結果、年末調整だけで済む年も、あえて確定申告をするようになった。
思い返せば、2013年に初めて確定申告を経験して以来、色んな事があって、やり方もずいぶん変わった。
初年度こそ地元の会場で一から書類の記入をしたものの、翌年からは確定申告の書類を自分で作成して、税務署を訪れることになった。
担当者と一緒に内容に間違いがないかを確認していたのだが、親切に接してくれる人もいれば、人のことを見下す腐れ役人のような者もいた。
しばらくこのスタイルで行くのかと思ったが、2年後に訪れた時からは提出と相談が分けられて、事前に作成した書類を税務署に提出して控えにハンコを押してもらうだけになった。
東京へ出てからも同じようなことが続いていたが、一昨年(2023年)は期間中に平日5日勤務の仕事をしていたため、休日に税務署のポストに投函するという寂しい提出になった。
しかも、押印された控えを返送してもらうため、切手を貼った返信用の封筒を同封するという面倒なことも必要だったし…
そして、去年は遂にe-taxデビューを果たした。
こうして振り返ると、やはり10年以上の付き合いがあるためか、いろんなことがあった。
特に地元で経験した初年度から数年は、私も若かったためか、ハローワークに通っていた時の思い出と同じような青春の1ページのような懐かしさすら感じる。
・ブラック企業はこんなところでも従業員の敵意を掻き立てる
さて、ここまでは、自身の手で行う還付金の返還や確定申告の思い出など楽しい話(読者の心情はともかく、私は楽しかった)が続いたが、最後に私が「今後も勤め先の年末調整に頼らず、確定申告を行う」と決意することになった少し胸糞悪いエピソードを紹介させてもらいたい。
これは私が初めて確定申告を経験して以降、唯一行わなかった年の話である。
当時は当ブログで何度か登場したモーレツパート班長が猛威を振るう職場で働いていた。
その年は年明けに違う仕事をしていたものの、源泉徴収票も、その他の控除証明書等もすべて漏れなく提出が完了し、年末に退職するわけでもなく、勤め先の年末調整だけで問題なかった。
「確定申告をやらずに済むのは何年ぶりだろう…」
そんな安堵感があった。
しかし、年末調整後の給与明細を見たら唖然とした。
還付金として戻って来た金額は数百円だったのだが、問題はその名目としてこんなことが書かれていたのである。
「ボーナス」
これにははらわたが煮えくり返る思いをした。
人のことをバカにしてんのか!?
元々私の給与から過剰に天引きした金額を返済しただけなのに、何を「自分たちが払ったあげた」ヅラをしているんだ?
もしかして、「従業員なんて所詮は雇われのバカで、源泉徴収の意味も知らない奴だから、そんなことも知らないだろう(笑)」と思っているのだろうか?
しかも、元々ボーナスなど出ないアルバイトに対して、それを「ボーナス」と呼ぶのは人の神経を逆なでしているとしか思えない。
この記事でも触れた通り、本社の社員は普段から2週間に一回のペースで内部監査にやって来るほど暇でしょうがない上に、現場の事を信頼していない連中だとは知っていたが、ここまで無神経なことには驚いた。
さすがに、還暦を迎えた老婆を最低賃金と毛の生えた程度の手当で、班長として社員並みの責任を押し付けてコキ使う非人道的な企業がやることである。
こんな腹が立つ思いをするのは二度と御免被る。
そんな動機もあって、年末調整だけで済む場合であっても、今でも私はあえて確定申告をしているのである。