今年に入って、何度同じことを言っているは分からないが、時の流れは本当に早いもので、もう9月も後半である。
私が今の職場で働き出したのは去年の10月だから、そろそろ1年を迎える。
働き始めてから、今日までの大体折り返し地点に当たる今年の3月。
就労開始時からお世話になっていた同僚の派遣社員が退職した。
実は、彼女との世間話で衝撃的な想いをしたことがあり、彼女が退職した4月以降にその件に触れようと思っていたが、あっという間に半年が経ってしまった。
今日はその話をさせてもらいたい。
・同じ派遣社員なのにボーナスがある!?
彼女は私と同じ派遣社員であるが、所属している派遣会社は違う。
これまでも、同じ職場で別の派遣会社に所属している人とは共に働いたことはあった。
おそらく収入は私たちと同じであるため、派遣社員同士では特に詳しい話をすることはなかった。
ところが、彼女は派遣社員であるものの、「ボーナスや退職金がある」というのだ。
私も派遣社員だが、多くの人がそうであるように、そのような手当ては一切ない。
彼女も就労前はそのようなことを期待しておらず、雇用契約書に記載されていた「賞与:あり」、「退職金:あり」という文言が目に入った時は思わず二度見した。
とはいうものの…
私は彼女の話を聞いても全然羨ましく思わなかった。
なぜなら、たしかに賞与、退職金が支給される旨は記載されているものの、備考欄にはこんなことが書かれていたという。
「賞与、退職金は時給に含めてお支払いします」
要するに…
ただのヘリクツで、実際は「ない」と言っているに等しい。
無論、仮に私の時給が1,500円だとして、彼女が1,700円だったとしたら、まだ筋は通る。
しかし、実際は私よりも低い1,450円だったりする。(くどいようだが、金額は比喩)
細かい金額は定かではないが、おそらく時給の内訳はこんなところだろう。
・基本給:1,300円
・賞与:100円
・退職金:50円
「ものは言いよう」という言葉もあるが…
詐欺だろう、それは!?
私が所属している派遣会社のように最初から「ボーナス、退職金:なし」と言っている方が遥かにマシだしフェアである。
ちなみに、2020年に派遣労働者の待遇を改善するための同一労働同一賃金制度がスタートして、今では派遣社員でも通勤手当が支給される会社が増えたが、以前は「派遣と言えば、交通費は自腹」であることが圧倒的に多かった。
そんな時代に、私や彼女が所属している会社とは別の派遣会社が、自社サイトのコラムに交通費が出る場合と出ない場合の給与モデルを記載していたことがあった。
その中で交通費なしのケースのことを繰り返し「時給に交通費が含まれる場合」という言い方をしていた。
百歩譲って一回だけなら、まだ許容できるが、あえて長くて言いにくい言葉をこうもしつこく連発している様子を見ると、正直に「『交通費なし』と書いたら、誰かから怒られるから忖度しているのか?」と勘繰ってしまう。
・建前だけでも自尊心は満たされる?
前段で述べた通り、交通費だろうが、ボーナスだろうが、退職金だろうが、「基本給に含まれる」などという回りくどい言い方をせずに、「無いものはないとハッキリ言え!!」というのが私の意見。
これは元同僚の彼女も同じだった。
一瞬期待したものが裏切られた怒りもあるのかもしれないが、その不誠実な姿勢には心の底から呆れて、以後は別の派遣会社を利用することに決めたという。
最近は前段でも触れた同一労働同一賃金の流れもあり、非正規労働者にもボーナスが支給されるケースが増えてきている。
それは喜ばしいことのように感じるが…
先の派遣会社ほど質が悪いケースはそう多くないものの、実際に支給されたら、「あれ、思っていたものと違う…」と感じてしまうことも少なくない。
たとえば、こちらの記事のように、契約社員は正社員と違って一律3万円とか。
記事の中で、質問者はあくまでも正社員に支給される額と比較して不公平感を持っているのだが、そもそも一律3万円のボーナスなんて、もらって嬉しいのか?
お金は多いに越したことはないが、そんなお小遣い程度の金額を渡されて、「非正規労働者にもボーナスを支給しています」という事実が形成され、「だから、『私は正社員じゃないから…』という甘えた考えは許しません!!」と強硬な態度に出られ、定時退社や飲み会の辞退という非正規労働者としては当然の権利を抑制されることにつながることを心配してしまう。
言い換えれば、半年に一度3万円を貰うだけで、正規・非正規の(企業にとって)おいしい所取りをされてしまう気がするのだ。
この記事で特集した契約社員という働き方に対する疑問点と同じように。
そんな舐め切った考えから「ボーナスを支給してあげている」と言われるのであれば、私はボーナスなど出ない方がマシだと思う。
これらはあくまでも私の意見であり、もちろん、「たとえ、少額であってもボーナスが欲しい」という考える人はいる。
たとえば、ボーナスの季節に、恋人や友人から「そろそろボーナスの時期だけど、パーッと旅行や遊びに行かない?」と言われて、「実はボーナスがないんだ…」と口にするのが辛らく、見栄を張って支給されているフリをしたり、作り笑いで話を合わせている人とか。
そのような人は、たとえ少額でも支給されたら、「自分もボーナスを支給されているから、仲間外れではない」という安心感を得ることができるだろう。
もっとも、臨時のお小遣いのような少額を得たところで、財政状況が改善するわけではなく、それと引き替えに失うものも少なくないのかもしれないが。
私も、元同僚も全然納得していない派遣会社のインチキボーナスだが、そういった人たちには心のお守りとしての需要はあるのかもしれない。
・「お金がないから払えない」という一目瞭然の理屈を否定する理由
時給は他社と大差ない(むしろ低い)にもかかわらず、「ボーナスや退職金は支給するが、時給に含んで前払いする」と言い張るのは詐欺以外の何物でもない。
だが、「自分にはボーナスがない」という現実を認めるのはあまりにもみじめだから、それを否認するために、そんなヘリクツでも信じる。
それは不健全だし、止めた方が良いとは思うけど、彼らに対しては同情もできる。
一方で、大迷惑な動機から、こんな下らない話を真に受けるどうしようもない人もいる。
このブログでも度々話題にしているが、この社会には、私の上京直前の職場のように、正社員であってもボーナスや退職金どころか、交通費すら支給しない会社は存在する。
それらの手当を支払わないことは犯罪ではないので、「正社員なのにおかしい」と思っても、他所は他所、ウチはウチと諦めるしかない。
彼らがそのような手当てをもらえない理由は何か?
それは単純に、会社にそのようなお金を支払えるだけの資金がない(もしくは、社長が金がないフリをして、がっつり溜め込んでいる)からである。
はい。それだけ。
とても悲しい話であるが、それ以上でも以下でもない。
ところが、困ったことに、世の中にはこんな簡単な理屈も分からない(分かりたくない?)人もいるのだ。
そんなアンポンタンが信じて疑わない理屈が、先程の派遣会社と同じ「ボーナスや退職金は基本給に含まれている」である。
彼らは前段の悲しき派遣社員とは全く別の理由からこの理屈を支持している。
それは、「正社員なのに、ボーナスや退職金はもちろん、交通費すら支払わない会社なんて存在するはずがない!!」と思いたいからである。
この記事に書いた通り、この国には、傷病手当、出産手当金、育児休業給付金のように、公的保険が原資となって支払われる手当を「正社員として働くことで、会社から付与された特権」だと思い込んで、「正社員として就労すれば、この社会で生きて権利が与えられる」と考える正社員信仰者が存在する。
彼らにとって会社とは、日々の生活の糧となる給与を稼ぐための場所ではなく、自分と家族の人生をご加護してくださる神であり、まるで、「神を信じる者だけが救われる!!」というように妄信する。
そんな彼らが、「正社員なのにボーナスも退職金もない」という現実を受け入れることは自分を守ってくれる神への冒涜に他ならず、「偉大なる会社様が正社員をぞんざいに扱うはずがない!!」という動機から、何としてでも、会社様を擁護する理屈を欲している。
そこで飛びついたのが、インチキペテン派遣会社がヌケヌケとほざく「それらは基本給に含まれて支給している」である。
バリバリの年俸制で月収100万を超える高給を稼いでいるわけでもなく、毎月の手取りが20万を下回り、「基本給にそんなもん含まれているわけがない」と分かる人たちであっても、そんな現実はもちろん無視。
彼らに大事なのは、「正社員にボーナスを支払わない会社なんてない!!」と主張することだから、そのための言い訳として使えるものだったら、何だって構わないのである。
派遣という存在を忌み嫌い、正社員こそが唯一絶対の正義だと思っている彼らが、悪徳派遣社員の味方をしているのだから、お笑いであり、皮肉というしかない。
このように、「正社員にボーナスを支払わない会社など存在しない」という信じたい結論が先にあり、そうなっていない現実とのギャップを適当な理屈で埋め合わせすることを「動機付けられた推論」と呼び、陰謀論などでよく耳にする言葉である。
もちろん、この国には宗教の自由があり、彼らがどんな妄想に縋ろうとも自由である。
しかし、このようなバカの域を超えた信者がいるから、詐欺師たちが跋扈して、無関係の人が被害を被ることも見過ごせない現実である。