先日、書類をコピーするためにコンビニへ立ち寄った時のこと。
コピー機の順番待ちをしていると近くにあったフリーペーパーの棚が目に入った。
棚の中にはファッション誌と共に求人情報誌も並んでいるようだ。
私は今でこそ、専ら派遣会社のオンライン求人に申し込んでいるが、昔はハローワークに通ったり、このような求人誌を必死に読んでいた。
そんな懐かしい気持ちになったのだが、別の記憶も蘇った。
かつて私はコンビニの求人誌によって、人生に大きな汚点を残すかもしれない事態に直面したのである。
・二度も驚かされる
およそ10年前の2012年12月。
私はこの職場を辞めて、留学の準備をしていたが、1ヶ月以上経っても次の仕事が見つからず、少々焦りを感じていた。
当時は週2日ハローワークに出向いたり、毎週発行されていた大手の求人情報誌をコンビニで集めていた。
ある日、ハローワークの帰りにたまたまコンビニに立ち寄った。
その日は愛読(!)している求人誌の発行日ではなかったが、書籍コーナーの一番下の棚に見慣れない求人誌が置いてあるのを偶然発見した。
手に取ってみると、いつも読んでいる物よりも随分と分厚い。
私はその求人誌を買い物カゴに入れた。
以前も無料の求人誌を手にした時は、同じように買い物カゴに入れたまま会計を行い、店員さんに商品と一緒に袋に入れてもらっていた。
だが、自身がコンビニ店員として働いて以来、人のことをロボットや奴隷のように扱うことに嫌悪感を抱いた私は、「彼らに余計な手間をかけさせてはならない」と思い、すぐにバックにしまうようになっていた。
それでも、その日の私は掘り出し物を見つけたかのような良い気分になって、以前のように、求人誌をカゴに入れたままレジに向かった。
この日もこれまでと同じように、店員さんは会計時に求人誌も一緒に袋に入れてくれるはず…
と予想していたのだが、彼の動きを見た私は驚いた。
なんと彼は、求人誌の背表紙をスキャンしたのだ。
そして、これまた衝撃が走った。
その雑誌はフリーペーパーではなく、200円の値段が付いた売り物だったのである。
よくよく思い返してみたら、確かにそれは普段読んでいるフリーペーパーとは違う棚に置かれていた。
しかし、有料ということは、中身は無料版よりも質が高いのでは?
そんな期待もあって、車に戻りページを開いてみたが、さらなる現実に打ちひしがれた。
たしかに求人情報ではあるのだが、それはホストやキャバクラといった水商売専門の求人内容だった。
泣きっ面にハチとはこのことである。
もちろん、私はその世界で働くつもりはなかった。
結局、私は読みもしない雑誌のために200円を無駄に使ってしまっただけだったのである。
・不運だと思っていたけど…
それ以来、私は見慣れない求人誌を手に取る時は必ず無料かどうかに加え、内容も確認するようになった。
その甲斐あってか、今日まで同じ失態は犯していない。
ちなみに、当時は求人誌に200円払わされたことも、それが水商売専門のものだったことも、「なんて不運だったんだ!!」と嘆いていたのだが、10年経った今では別の視点も見えてきた。
もしもあの時、求人誌を買い物カゴに入れず、バックにしまっていたら、私は気付かずに万引きをしてしまうところだったのだ。
しかも、それは店員さんを気遣っての行動によるものだから、それで犯罪者になってしまうのなら、それこそ不運なんてものではない。
その損失に比べたら、役に立たない求人誌に200円も払ってしまったことなど安い物ではないか。
私は自分が不運だと思っていたが、実はついていたのだ。
もっとも、私が手に取った時点で、内容を確認していたら、スルーして何の問題も起きなかったのだが…
2年前に、かつて車の運転をしていた時にあわや事故を起こしそうになったという記事を書いたことがある。
その記事でも書いたことと同様に、私が今日に至るまで罪を犯すことがなかったのは、良い人だからでも、ルールを守る人だからでもなく、偶然そうならなかっただけなのかもしれない。