WBCを通して感じた素晴らしい人間になるために必要なもの

日本時間の322日。

野球の国際大会であるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の決勝戦が行われ、日本代表がアメリカ代表を3-2で破り、14年ぶり3度目の優勝を果たした。

その件についてはテレビやネットのニュースで散々報道されたこともあり、普段は野球に関心がなくても「日本が優勝した」ということは多くの人が知る所となっただろう。

栗山英樹監督やMVPを受賞する活躍を見せた大谷翔平選手を始め、選手、関係者の皆様は本当におめでとうございます。

彼らの激闘ぶりについては、すでに多くのメディアで報道じられているため、わざわざここで取り上げるつもりはないが、今日は今大会を通して私が個人的に学んだことについて話させてもらいたい。

・偉ぶらない指導者はカッコいい

私は普段から野球について話をする韓国人やアメリカ人の友人がおり、今大会の開催中もその話を多くすることになった。

そして、日本の優勝が決定した日、彼らから立て続けにこんなメールが送られてきた。

「日本優勝がしましたね。おめでとう!!」

彼らは日本代表の健闘を称え、素直に祝福する気持ちから、この言葉を述べたのだろう。

もし、韓国やアメリカが優勝したら、私もきっと同様の言葉を送っていた。

だが、間違っても、私が彼らの言葉に「ありがとう!!」などと答えてはいけない。

だって、頑張ったのは私ではなく、日本代表の選手なのだから。

私も含めた日本人の大多数は彼らと同様に選手に対して「おめでとう!!」と言う側の人間なのである。

オリンピックで日本人がメダルを獲得した時や、ワールドカップで日本代表が勝利した時も同様に、たまたま同じ「日本人」という理由で、アスリートと自分を同一視し、発情期のように「日本!! JAPAN!!」と叫びながら、彼らの姿を自分の活躍のように誇り、他国を見下し、侮蔑的な態度を取る哀れな人が少なからずいる。

私の職場にも、当日は大騒ぎして「今日は日本の優勝を記念して、皆でビールを飲もう!!」と同僚に呼びかけるバカがいた。

甚だしい勘違いである。

私はオリンピックやワールドカップには全く関心がないため、そこで同様のことをやっている人を見ても「おかしな人だな…」くらいにしか思わないが、自分が好きな野球をダシにそれをされると不愉快である。

「頑張ったのは選手であって、お前じゃないだろ!?」

その言葉を何度言いたくなったことか…

今から25年前の1998年、監督就任1年目にして、当時の横浜ベイスターズを38年ぶりのリーグ優勝、さらに日本一へ導いた権藤博という人物がいた。

ベイスターズに限らず、その年は箱根駅伝で神奈川大学が総合優勝し、日産自動車が都市対抗野球で優勝、甲子園では横浜高校が春夏連覇を達成するなど、横浜の街はスポーツ界にとってミラクル・イヤーと呼べる1年だった。

あのときなぜか、僕はベイスターズが…… – 小野瀬雅生の名言 – Number Web – ナンバー (bunshun.jp)

そんな空気だったこともあり、権藤氏を称賛する声は多方面から挙がったのだが、それでも彼は一切偉ぶることなく

「やったのは選手ですから」

「私ではなく選手を褒めてやってください」

と答えた。

優勝監督という最高の賛辞を受ける立場にありながら、そんな発言が出来るとは、なんて素敵な人だろうか。

勝手に熱狂しているだけで、代表選手の活躍を自分の功績のように思い込んでいる人たちには彼の謙虚さを少しでも見習ってもらいたいものである。

ちなみに、今大会の投手コーチを務め、今年から千葉ロッテマリーンズの監督も務める吉井理人氏は権藤氏の教え子に当たる。

彼も今回代表入りした大谷選手や佐々木郎希選手も指導した名コーチであるが、威圧感を与えて萎縮させないよう、選手の前では絶対に腕を組まないことを信条とし、写真撮影のためにカメラマンからポーズを依頼されても断っているという。

下記の記事で監督会議の写真が見られるが、そこでも一人だけポーズが違うことから、彼がいかに腕組みを嫌っているかがよく分かる。

「セ・パシャッフル」12球団監督会議で仰天プラン 魅力あるプロ野球へ聖域なし― スポニチ Sponichi Annex 野球

輝かしい実績とは裏腹に、一切偉ぶらない指導者は本当に素敵である。

侍ジャパンの活躍に便乗する傲慢な人物たちを見たことで、彼らの素晴らしさを再認識出来た。

・歩きスマホはやめよう

決勝戦の開始時間は日本時間の22日午前8時。

平日の午前中ということで、出勤しなければならない人も多く、彼らは試合の経過が気になって仕方なかっただろう。

私も出勤中に駅のホームで電車を待っている時や、車内で隣に座った人を観察していると、スマホで野球中継を見ている人が多くいた。

それくらいだと、特に何とも思わないが、試合が気になってしょうがないのか、歩きながら観戦している大バカ者も少なくなかった。

歩きスマホという最低な行為をしながら試合に熱中する最低な人間には応援するなど資格ない。

マナーが悪い観戦は応援などではなく、ただの野次馬根性である。

実際に私が駅で階段を下っていると、試合に動きがあったのか、前を歩いていたクズ野郎がスマホを片手に立ち止まり、接触しそうになった。

もし、ぶつかって階段から突飛ばしてしまったら、どう考えても原因は相手だが、こちらの方が責任を押し付けられてしまう。

先ほどの野球をダシに大騒ぎしてスッキリしたり、選手の姿に自分を投影して勝手に誇らしい気持ちになっている人は単に「不快」という感情のレベルに過ぎないが、こちらは実害を及ぼしている。

選手が一所懸命戦っているというのに、そんな態度で観戦して恥ずかしくないのだろうか?

自分の身すら律することが出来ない人間に、誰かを応援することなど出来るはずもないだろう。

大勢で盛り上がっている時や、調子がいい時だけ一緒に応援する人たちを蔑む「にわかファン」という言葉がある。

だが、そのような他人に迷惑をかける人間は「にわか」と呼ぶにも値しない。

そこで、今大会の盛り上がりを利用して、ぜひともACジャパン(公益社団法人)には栗山監督や大谷選手らをCMに起用して歩きスマホ撲滅の広告を作って頂きたい。

「人に迷惑をかける応援は僕らの力にならない」

「侍ジャパンは世界一になった。応援するファンも世界一を目指して」

そんなフレーズを使って、歩きスマホをやっているような不届き者の目を覚まさせてもらおう。

昔からよく「スポーツには不良や問題児を更生させる力がある」と言うではないか。

彼らの戦いぶりに感動を与えてもらった人は、きっと喜んで従うはずである。

・休暇は計画的に取得しよう

決勝戦は多くの人が仕事をしている時間帯に行われていたため、試合が気になって仕事が手につかなかった人もいたことだろう。

もしかしたら、仮病で仕事を休み、自宅で観戦していた人もいたかもしれない。

私の職場にも、理由こそ「体調不良」だったものの、当日になって欠勤を申し出た人物が2人いた。

念のために断っておくが、私は野球観戦のために、有給休暇を使用したり、前もって休みを申請することについては、どうこう言うつもりはない。

私が感心しないのは、「なぜ事前にしっかりと休暇を申請しなかったのか?」ということである。

法律に反して有休の権利が付与されないブラック企業に勤めている人であれば、強硬手段を取らざるを無かったことに同情の余地はあるが、決勝戦は平日の午前中に行われることがあらかじめ分かっていたはずである。

もしかして、「日本が決勝まで勝ち進むなんて思ってなかった」とでも思っていたのか?

それとも、「最初はそこまで熱を入れていなかったけど、日本が勝ち進む姿を見て、どうしても応援したくなった!!」と言うつもりだろうか?

歩きスマホで観戦することも問題だが、試合を見るために職務放棄するような人間にも、誰かの応援など出来るのだろうか?

人に「頑張れ!!」と言う前に、「先ずは自分が頑張れ」と言いたい気分である。

調子が良い時だけ群がり集ってくる人間は本当に浅ましい。

ちなみに、自分の職場の恥を何度も晒すようで忍びないが、日本がリードして後半戦を迎えたという情報を聞いて、

「勝っているなら、今からでも見たい!!」

「『アメリカ相手だから勝てないかもしれない』と思って、家のビデオに録画していなかったけど、こうなるなら録画しておけば良かった」

というとんでもない発言をする者もいた。

そんなことを人前で堂々と口にして恥ずかしくないのか?

やはり、彼らはただの野次馬である。

全国で盛り上がりを見せる中、いろいろと水を差すことを書いたが、私も日本が優勝したことには喜ぶべきことだと思っているし、選手や関係者には心から「おめでとう」と言いたい。

彼らが頑張って世界一になったからこそ、次の大会では観戦する側の人間も反省を踏まえて、彼らの顔に泥を塗ることなく、「世界一のファン」と呼ばれるように節度をわきまえた人間にならなければならない。

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