何気ない乗車マナー違反を放置するとこんなモンスターに進化しそう

私は電車で通勤しているのだが、出勤時・退勤時問わず、ドアが閉まりかけているのに、全力疾走でホームを突っ切って電車のドアに飛び込む大バカ者を毎日のように目にしている。

いわゆる「駆け込み乗車」である。

中には、閉まりかけのドアに腕を差し込んだり、鞄を挟んだり、他の乗客との衝突などお構いなしで無理やり乗り込むクズまでいる。

12時間に列車が一本やって来る程度の本数が少ないローカル線ならまだ気持ちは分かる。

しかし、私が住んでいるのは東京の都心部である

ラッシュ時は35分待てば必ず次の電車がやって来る。

それなのになぜ少なくない人間が毎日のように危険な駆け込み乗車を行うのか

数分待てば乗れるのになぜ駆け込むのか

駆け込み乗車をする理由は単純ではない。

しかし、よく観察していると、いくつかのパターンに分類できる。

「自分だけはうまくやれる」という楽観バイアス

他人の駆け込み乗車を目撃して、「この人はこんなにも一生懸命なんだ!!」と感動するバカは皆無であろう。

多くの人はその浅ましい姿を見て、嫌悪感を持つと思われる。

しかし、そんな人も自分がその立場になると、平然とやってのけことが少なくないのだ

「自分はギリギリ間に合う」

「自分はどうしても急いでいるから、仕方ないんだ!!」

こうした根拠のない自信と「自分にはやむを得ない事情がある」という、いわゆる楽観バイアスが強く働いている。

他人がやれば危険、自分がやれば正当という倒錯した心理である。

「成功部分だけを成果だと思い込む」自己正当化

駆け込み乗車に成功した瞬間、人は大きな満足感を得る。

その快感により、迷惑をかけた事実や危険行為だった側面は脳内から消える。

「結果的に乗れたんだから、良いじゃないか」

という自己正当化が発動する。

「次の電車はきっとんでいて乗れないだろう」という都合が良い解釈

都心部の通勤ラッシュで満員電車が多く、他人を押し込まないと乗車できないことも少なくない。

「そんな電車に乗るくらいだったら、わずかな隙があるこの電車に駆け込みで飛び乗った方が得だ」

彼らにとっては待つ=損」、「駆け込む=得」という都合が良い二者択一になっている。

もちろん、大都会東京と言えど、実際はそうでないケースが大半である。

「自分のためならルールを破ってもいい」という価値観

最も危険なのはこれだ。

歩きスマホやエスカレーターの駆け下り駆け上がりについても同じことだが、駆け込み乗車をする人の中には「自分の利益のためかつ、誰かに文句を言われなければ、ルールやマナーは破って良いものと思っている者がいる。

公共の場における秩序より、自分の都合が常に優先されるのだ。

もちろん、命にかかわったり、犯罪者を追いかける場合など、本当にやむを得ない場合があれば仕方ないが、特別な仕事に関わっている人間でなければ、そんな状況など一生に何度起こるというのだろうか?

こんな自己中心的な思考でありながら、「日本の治安は外国人に脅かされている」という謎の被害者意識を有している者も少なくない。

はっきりと言わせてもらうが…

外国人よりも、おめーえの方がよっぽど怖いわ。

・試合終了後の得点は無効

駆け込み乗車は鉄道会社や他の乗客に迷惑を掛けるが、警察に逮捕されて、容疑者として全国に大々的に報道されるレベルの犯罪でもないため、「これくらい良いだろう?」という軽い気持ちでやっているのかもしれない。

だが、「時間に間に合わなかった自分が悪い」という自身の非を受け入れられず、駆け込み乗車というルール違反を犯して悪あがきしている姿は、多くの人から嫌われているある人物とよく似ている。

XがまだTwitterと呼ばれていた頃なので、数年前になるが、こんなつぶやきを見かけた。

「サッカーでもバスケでも制限時間内に決めた得点しか認められず、試合終了後にいくらゴールを決めても得点にはならない

「試合終了のホイッスルが鳴った時点で、点数が少なかったら、どんなに悔しくても負けなの」

この発言は何に対してなされているのかというと、残業ありきで部下に仕事を命じるパワハラ上司にである。

労働時間はあらかじめ決められており、その時間内で達成された成果のみで評価すべきである。

「部下が残業しなければ職場が回らない」と嘆くのは、「試合終了に決めたゴールも得点にカウントしろ!!」とトンデモ理論を展開しているようなものである。

この比喩は多くの共感を集めていた。

私も全くの同意見である。

だが、考えてみて欲しい。

駆け込み乗車をやめられない人間は、この上司と同じ思想構造ではないのか?

車掌の笛や駅の発車メロディが鳴り終わり、ドアも閉まっている時点で、乗車不可となり試合終了のはずである。

どんなに悔しかろうが、それまでに間に合わなかった時点で負けなのだ。

にもかかわらず、敗戦を受け入れられずに、駆け込み乗車という暴挙に出て、その試合終了後の得点を主張するその姿は、残業前提で業務を割り振っている上司と全く変わらない。

こんな思考を持った人間が会社で権限を持つと、間違いなく部下に残業を強制する側に回る可能性が高い。

残業強制パワハラ上司についてはほとんどの人が反感を持つだろうが、駆け込み乗車の多さを目の当たりにすると、その兆候を隠せずにいる人間は決して少なくないように見受けられる。

将来悪の道へ進む者の兆候は身近な所ですでに芽吹いている。

駆け込み乗車を我慢できない者は自らと同類であるパワハラ上司の悪口を言う権利などないと言えるだろう。

2列で並んでください」を無視する人の心理

首都圏にあるJRの駅の多くは、乗車位置に「2(または3列)に並んでください」と書かれ、足元に並ぶ位置の目印が示されている。

しかし、なぜかこれを無視して、列の真ん中に立ち、隣に人が並ぶことを妨害する者がいる。

日本語が読めない可能性もあるが、このような人間の考えについてある仮説が思い浮かんだ。

公共の場のルールを重んじる私は、列の先頭に並ぶ時は必ず2列の片側に立つ。

当然、反対側に別の人が立つので、2列の並びが出来上がる。

さて、電車が到着すると、降車客の通り道を空けるために、それまで乗車位置に並んでいた人たちがドアの脇へ移動する。(この習慣は地域によって異なるのかもしれない)

このタイミングで、降車客も2列で出て来ることが多いのだが、左右均等に出てきてくれれば特に問題は起きない。

ところが、どちらか一方のみに偏ると、反対側に隙間が生じる。

もしも、その隙間が生まれるのが自分とは反対側で、なおかつ、そちら側の列の先頭に立つ人物が、抜け駆けで乗車したとしよう。

すると「赤信号みんなで渡れば怖くない」の精神で、後ろに並んでいた者も続々と雪崩れ込む。

その結果、降車客はこのシャケの逆流(なんて呼んだらシャケに失礼か…)を避けるために、ますますこちら側から電車を降りるので、自分は列の先頭に並んだはずなのに、乗車にかなりの遅れを取ってしまう。

もちろん、諸悪の根源は抜け駆けで乗車する不届き者と、傾けられた盥の中の水のごとく、それに続く破廉恥な大群であることは言うまでもないのだが、2列に並んだ場合はこのように反対側に並んだ者に先を越されるリスクが生じる。

真ん中に立てば、誰横に並ばせなければ、自分だけが先頭に立って、そのドアからは最初に乗車出来ることは確実である。

彼らはこれをやりたいのだろう。

昨今、高速バスを一人で利用する際に、隣の席に誰も座らせないために、2席を予約して出発直前に1席をキャンセルする通称「相席ブロック」呼ばれる迷惑行為が問題となっている。

「相席ブロック」で大迷惑、高速バス会社は払戻手数料値上げなどでブロックへ…1人で10席予約し直前に9席キャンセルしたケースも : 読売新聞

高速バスは他の交通機関と比べるとキャンセル料が低いことが多いことが、この手法のハードルを低くしているようだ。

当然、そんなことをされたら、他の乗客が利用する機会を失うし、バス会社も本来得られたはずの収益を失ってしまう。

私が最初にこのニュースを知った時は「よくもまあ人の善意に付け込んで、こんな醜いことができるな…」と怒りを感じた。

おそらくほとんど人も同意見で、この手法を聞いて

「目から鱗だ!!」

「何て賢い人なんだ!!」

と絶賛する者など皆無であろう。

それくらい悪質な迷惑行為である。

だが、どうだろう。

本来は2列で並ばなければならないホームの乗車位置で「他の客に先を越されたくない!!」という自己中心的な動機から、隣に人が並ぶことを妨害する行為もこの相席ブロックと全く同じではないか?

のような輩は「自分の快適さ>>他者の権利」、「自分の得のためなら他人の不便は当然」という思考なのである。

相席ブロックなんて破廉恥なことをする奴は、「自分が住む世界とは違うどこか遠くにいる汚れた人間」だと思いがちだが、それをやっていそうな人間は意外と私たちの近くいるのである。

何気ないマナー違反危険思想の露呈である

残業強制上司も、相席ブロックも、「そんなことをやるのはとんでもない悪人に違いない」と他人事として叩いている人が大半だろう。

だが、彼らは生まれた時から悪人だったわけでも、突然悪の道へ目覚めたわけでもない。(後者については完全否定できないが…)

駆け込み乗車、「2列で並べ」を完全無視した真ん中立ちといった日常の些細なマナー違反を積み重ねることで、次第に歯止めが利かなくなり、「自分だけは特別扱いされるべき」、「他人の不便は自分の得のために犠牲にしてよい」という極めて自己中心的な考えが形成され、その思想の延長にあるものが、残業前提の労務管理、相席ブロックなのである

電車のホームは、そうした人間性が最も顕著に現れる場所である。

駆け込み乗車をしたり、2列ゾーンに真ん中立ちをしている者は、日頃から時間にルーズで部下に残業を強制したり、高速バスの相席を防ぐために隣の席を予約して直前にキャンセルするという悪質な人間へと進化(社会的には退化)する可能性が非常に高い。

もしかしたら、すでにそういうことをやっているのかもしれない。

こういう人間は痛い目に遭わないと更生は難しいと思うので、良い子の皆さんはこんなお下劣な人間にならないためにも、乗車マナーはしっかりと守りましょうね。

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