前回の記事で触れた通り、先の年末年始は帰省していた。
これは帰省の旅も終盤に差し掛かり、実家の最寄駅を通る路線に乗り換えた時の話である。
その列車は乗り換え駅が始発なのだが、乗り換え前の電車が到着するのは、発車時刻の1分前である。
終電ではないため、乗り換えに失敗しても次の列車に乗ればいいのだが、次の列車がやって来るのは1時間後になってしまう。
私は列車が到着する前に身支度を済ませ、乗り換え先の列車と対面になるであろう車両の位置まで移動していた。
そうした策もあって、辛うじて乗り換えに成功。
…と言いたかったのだが、反対方面からやって来る別の接続列車の遅れに合わせて、結局この列車の発車も5分遅れたため、そこまで焦る必要ななかった(笑)
・帰省する資格なし
というわけで、列車に揺られることもなく、車内ではゆっくりと空席を探すことが出来た。
しかし、空席がなかなか見当たらない。
決して、車内が満員だから座れないのではない。
人ではなく荷物に占領されている座席が多いから座れないのである。
私が乗車したのは、2人掛けで進行方向に合わせて向きを変えることができる「転換クロスシート」と呼ばれる、地方ではなかなか豪華な座席を備えた列車だった。
2両編成の車内を見渡したところ、2人掛けであるにもかかわらず(「だからこそ」と言った方が正確かもしれない)、1席に自分が掛け、もう1席に荷物を置くといった形で、定員2名の区画を1人で占拠している者で溢れていたのである。
そんなこともあり、座れずに立っている人が1人や2人ではない。
にもかかわらず、奴らはそんなこと気にも留めない様子で、スマホに熱中したり、ヘッドホンで外界との接触を遮断している。
あいつらは何様のつもりなんだろうか?
荷物は網棚に置かれないほどではないが、それなりに大きかったことから、おそらく帰省客だろう。
こちらに実家こそあるものの、生活の拠点は都会であり、日常生活の利害関係でなくなったことで気が大きくなった所謂「旅の恥はかき捨て」という心情なのか、あるいは「俺は都会で暮らす人間だから、こいつら田舎者共とは違う」という選民思想の持ち主が凱旋帰国気取りでオラついているのか?
いずれにせよ、このように地元の人々に迷惑をかけることに恥じらいがない人間には、帰省をする資格などない。
・田舎生活の数少ない希望
そんな腹立たしい気持ちを抱えていたが、ここから1時間近くは乗車しないといけないので、出来ることなる座りたい。
ゴミが溢れる車内を見渡すと目が眩みそうになったが、そんな中、隣の席を空けるというしごく真っ当な女性がいた。
私が一通り車内を見渡して、「座れるのはここしかないかなぁ…」と思っていると、彼女は一段と窓際に詰めてくれた。
しかも、私が隣の席に座る前に一言「すいません」と声をかけると、笑顔で会釈までしてくれたのだ。
なんという素敵な人だろうか…
それに引き換え、欲の皮が突っ張った他の連中と来たら…
彼女は小さめのハンドバッグを持っていたので、おそらく地元で生活している方なのだろう。
その後、彼女は数駅進んだ駅で下車した。
態度が悪い帰省客は、自己中心的で他人への配慮などかけらもない(東京が代表的だが)都会の闇に染まっている。
対して、地元(田舎)で暮らしているであろう彼女は、気配りと優しさの心に溢れている。
この対比が凄まじかった。
ネットの戯言には、
「優秀な人は就職や進学でみんな都会へ出ていくから、地元には落ちこぼれだけが残り、治安は悪化の一途を辿る」
「そんな場所に希望なんてあるはずがないから、一刻も早く都会へ脱出を!!」
などという書き込みで溢れている。
こちらの記事で、マクドナルドが地元の中学生の入店を拒否したニュースを取り上げるにあたり、いろいろと情報を検索していると、やはりそのような書き込みが目立った。
ところが、今回繰り広げられた光景は全く逆ではないか?
衰退著しい地方での生活だが、周囲への迷惑など微塵も考えないクズの帰省客が普段の生活から隔離されているのだから以外と希望はあるのかもしれない。
もっとも、都会の闇に染まった元地元民が帰省により猛威を振るうという逆輸入状態で治安が悪化するというのであれば、たしかに「田舎=ヤバい」の法則は当てはまるが…