年末年始の帰省で大事なものを失くしたことに気づいた

先の年末年始は実家に帰省していた。

帰省初日にやったことは、地元の同級生との飲み会である。

彼とは中学卒業以来交流がなかったが、数年前に出身校のイベントについて確認するために彼の家を訪れたことがきっかけで連絡を再開。

以降は帰省の度に会っている。

そんな彼とは現在の仕事について話をすることが多いが、学生時代の話もしている。

彼は私と違って、中学卒業後も同級生と幅広い交流があり、私にとって懐かしい面々の現在の様子を教えてくれた。

だが、そんな彼であっても、消息不明の人物もいる。

・もう10年以上会っていない

その一人が、この記事に登場したイガラシ(仮名)である。

彼は中学時代から突発的に不登校になることもあったのだが、高校に入ってからは長期間登校拒否になり、中退こそしていないものの、完全な幽霊生徒となった。

しかし、元々学業優秀だったこともあり、18歳で高等学校卒業程度認定試験(旧:大検)を受験して、見事に合格。

その後は地元の大学に進学した。

彼と最後に会ったのは私たちが20歳の頃だった。

たまたま道を歩いていたら、自転車に乗った彼と遭遇して、彼が地元に新しくオープンしたスーパーの帰りということでお店の様子について話をした。

彼の家は家族が不在にしていることが多く、中学時代から不登校ではないものの、部活動などの華々しい学校生活に馴染めない同級生の溜まり場となっていた。

私は小学生の時から、仲の良かった同級生と彼の自宅に招かれ、ゲームをしたり、庭先でワイワイ遊ぶことも多々あったが、中学生になって多くの同級生が集まって、漫画を読んだり、麻雀大会の会場になると、陰気が漂うに感じてしまったため、次第に足も遠退いた。

それでも、彼との間には楽しかった思い出があることも紛れもない事実である。

というわけで、交流がなくなってからも、彼のことは時折気にしていた。

最後に会った時の彼は大学生、私はフリーターだった。

現在の私が当時と大きく異なるように、彼の生活も大きく変わっていることだろう。

今の彼はどんな仕事をしているのだろうか?

今の彼は結婚して家族がいるのだろうか?

今の彼は私と過ごした日々を憶えているのだろうか?

そんな想いを感じていた。

・まさかの衝撃

数日後、私は帰省初日に会った彼とは別の元同級生であるマサル(仮名)と昼食を共にすることになった。

彼とも私が上京して以来、帰省時には毎回会っている。

帰り道は彼の母が迎えに来てくれる手はずだったが、電話に出なかったため、途中のスーパーまで歩くことにした。

当初は私もそこから車に乗せてもらうつもりだったものの、あることに気付いた。

「そういえば、イガラシの実家はここのすぐ近くだったな…」

そう思った私は、マサルと母が合流した後、歩いて彼の家に向かうことにした。

当然、彼の家族とも10年以上顔を合わせていない。

呼び鈴を鳴らして、彼以外の人物が出てきたら、きっと「あんた誰?」みたいな顔をされるんだろうな…

それとも、会ったことがない彼の妻や子どもが出て来たりして…()

ニヤニヤしながらそんなことを考え、彼の家に着いたのだが…

玄関の表札の苗字が変わっていた。

つまり、彼はきっと引っ越したのだろう…

もしかしたら、彼の姉(もしくは彼自身の可能性もある)が結婚して苗字が変わり、引き続き実家に住んでいる可能性もあるが、面識のない人が出て来る可能性が非常に高いので、私は立ち去るしかなかった。

私の地元は衰退著しい田舎町で、帰省の度に馴染みの店が姿を消している。

今回も、実家から東京の自宅に荷物を送るために子どもの頃から利用していたホームセンターで段ボールと梱包材を購入しようとしたら、閉店していた。

そんなことは過去に何度もあった。

元同級生の実家が経営していた個人商店もすでに多くが廃業している。

だが、住居を去った人物は初めてだった。

私が彼の家で楽しい時間を過ごしたのはもう20年以上前のことになるため、それも時の流れと言えばそこまでである。

だが何度も訪れていた家だったから、やはりショックは大きい。

私は東京で生活しており、実家には年に1,2回帰省するだけである。

これから先も、故郷が朽ち果てていく姿をただ耳にすることしか出来ないのだろうか。

新年早々そんな寂しい思いに駆られた。

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