「もはやアルバイトは簡単な仕事ではない」と実感した年②

前回のあらすじ

2024年も半年が過ぎようとするが、私は未だにタイプでも手紙でも誤って「2014年」と記入してしまうことがある。

このような10年前の日付を書いてしまうことは3年ほど前から度々起こしているが、「2014年」という文字を見ると、2013年や2012年とは違う複雑な気持ちになる。

その理由は、その年が私にとって、20代でワーストと言える程のひどい一年だったからである。

海外へ脱出するための資金を稼いでいたバイト先で、「この国で働くのも悪くない」と思い直して、意気揚々と都会へ働きに出たものの、バイトを探していた1ヶ月で「え、本当にこれバイトなの?」と思う会社や、人のことを舐め切っている派遣会社に遭遇してきた。

そんな幸先が悪いスタートながらも、なんとか短期の派遣の仕事に就くことが出来た。

・まさか1ヶ月で…

ゴールデンウィーク明けから働くことになった工場では、顕微鏡を使って、パーツに傷がないかをひたすらチェックしていく仕事をした。

派遣会社から、契約期間の目安は3ヶ月と言われていたが、当時は社会保険なしで初回に1ヶ月契約して、それ以降は社会保険加入の条件で再契約するという形が一般的だった。

定時は8:3017:30なのだが、就業開始直後は毎日のように20:00まで残業して、土日どちらかの出勤もあった。

加えて、座って行うとはいえ、仕事そのものも未経験で慣れないこともあり、とにかく疲れた。

しかし、その仕事が2週間でなくなり、以降は誰もいない倉庫で段ボールを組み立てたり、簡単なデータ入力などの手伝い作業となった。

この頃になると毎日が定時退社で土日も完全に休みとなった。

それは良いことだったのだが、1ヶ月後で契約が切れた後のことが心配である。

契約終了が一週間後に迫った日、派遣会社の営業担当から留守番電話に「今後のことで話があるので、折り返して欲しい」というメッセージが残っていた。

毎日の仕事量を考えるとその後の見当はついたが…

やっぱり、契約の延長はないと告げられた。

1ヶ月で契約を終えることもそうだが、派遣先の社員は毎日顔を合わせているにもかかわらず、営業から告げられるまで一切、教えてくれなかったことにも驚いた。

ショックというよりも、あまりにも態度がドライ過ぎる。

これが派遣という働き方なのか…

そんな洗礼を受けたが、1ヶ月とはいえ、この期間にはわずかなお金以外にも多くの物を得ることが出来た。

それは派遣という働き方についてである。

今でもそうだが、当時から派遣労働に対しては、「就業先からは物のように扱われる」とか「低い給料でコキ使われる(搾取される)」というネガティブな面ばかりが語られ、私も「同じ非正規労働でもバイトの方がマシ」だと思っていた。

ところが、実際に働くと、たしかに短期でクビになったものの、就業中は決して悪いことばかりではなく、バイトで働いていた時よりも時給は300円程高く、派遣先の社員も紳士的な態度で接してくれて、派遣先で問題が起きたら、派遣会社がすぐに間に入ってくれるというスタンスだったので、むしろ働きやすかった。

というわけで、派遣会社から次の仕事を紹介されることはなかったが、次も別の派遣会社で派遣社員として働くつもりだった。

・求人数は多い

私が住んでいたのは県庁所在地だったので、求人誌にはたくさんの派遣の事務の求人が載っていた。

しかも、「未経験歓迎」と謳うものも多く、時給1,000円というのも、前年は750円で働いていた私にとっては魅力的だった。

前回の仕事で、派遣の快適さを知った私は、次もそんな職場で働くつもりでいた。

工場の派遣の仕事が終了になったのは6月の中頃。

ちょうど10年前の今頃である。

雨の日も増えてきて、毎日家に居られることに若干の有難さを感じていたが、親元を離れているため、遅くとも1ヶ月以内に次の職場を見つけたかった。

私は未経験でも応募が可能な派遣の事務職に片っ端から応募し、事務所で登録とスキルチェックを行うことまでは出来たが、経験がないためか、求人誌に載っていた派遣先への紹介へは至らなかった。

それどころか、希望していた仕事職は紹介されず、今までと同じ肉体労働系ばかり勧められた。(その時の詳しい状況はこちら

もちろん、事務職と比べると時給は低い。

ちなみに、一社だけだが、スキルチェックの結果、「未経験でも紹介は可能」と言われたことがあった。

だが、当時の私は毎週月曜日の19時に中国語の教室に通っていたため、毎週月曜は定時で帰らせてほしい旨を伝えたら、先方は突発的な残業に対応できる人を求めているので、それでは紹介出来ないと断られた。

何で、正社員でもないのに、たかだか週一日に残業出来ないだけで、採用に支障が出るのだろうか?

前回の記事の繰り返しになるが、「そんなに人のことを拘束したければ、正社員を雇え!!」と言いたくなった。

そんなことをやっていると、あっという間に1ヶ月が過ぎた。

たしかに、事務職には就きたいけど、このままではいつ金銭的に破綻するか分からない。

そう考えた私は、これまでと同じアルバイトや肉体労働に戻ることも考えた。

・どいつもこいつも勝手過ぎる

希望していた派遣の事務職以外の仕事へ応募することになった理由は、少しでも仕事に就ける可能性を広げるためである。

だが、これがさらなる悪夢を呼ぶことになった。

先ずは工場でお菓子を箱詰めするアルバイトに応募することにした。

時給は事務職と比べると大きく下がり、800円である。

それでも仕事に就けるだけマシかと思ったが、面接でこんなことを言われた。

応募先の社員:「お菓子の箱詰めの求人を見たと思うけど、来週からはトラックを運転して取引先のお店への運搬もお願いすることになったから、免許は必須になります」

いや、勝手過ぎるでしょう!?

先方の言い分としては、突然数日前に取引先からお願いされた(脅された)ことらしいが。

それだけでも、すでに働きたくなくなったが、さらにこんなことを言われた。

応募先の社員:「募集1人に対して、応募者は20人だからかなりの狭き門になってしまうけど、ご縁があればよろしく!」

なんで、お菓子の箱詰めのアルバイトにそこまで応募者が殺到しているのだろうか…

私が住んでいた場所は県内でもトップクラスに栄えているはずだが、ここだけ就職氷河期なのか?

その後、結果について連絡が来ることはなかったが、そのことに対する怒りよりも、これから先もこんな変な会社に応募してしまわないかが心配になった。

次に応募したのは、派遣の工場の仕事である。

精密機械の検査ということで、「前職と似ているのでは…」という思いで応募したのだが、電話で応募連絡をしたところ、突然こんなことを言われた。

派遣会社:「あの…今のご自宅から転居されることは可能でしょうか?」

は!? いきなり何を言っているんだ!?

話によると、その仕事の就業場所は自宅から500kmも離れた某工業都市だという。

また、就業場所詐欺か…

派遣ではこのような就業場所を偽ることが常識なのか?

アルバイトや肉体労働に応募しつつも、希望していた事務職にも応募はしていた。

そんな時、30人という大量募集のデータ入力の案件を見つけて、応募することにした。

派遣会社での登録には、数十人が集まっており、全員で今回の仕事の説明も受けた。

仕事内容は某大手クレジットカード会社での、個人情報の登録や登録内容の変更の仕事である。

登録会ではあったものの、就業開始日や就労してからの留意事項などの話もした。

私の希望は、月曜日は残業せずに定時で退社することだが、これについては問題ないとのことだった。

就業開始日は2週間後だが、貯金もあるので、すでに就労が決まっているなら、特に不安はない。

ちなみに、時給は1,100円とこれまでの最高額である。

1週間後には勤務初日の詳細の連絡をすると言われ、「それではよろしくお願いします」と言って、引き受けることにした。

これで無事に仕事が決まった。

少し長くなったが、無事に希望の仕事にも就くことが出来た。

と思っていたけど、1週間を過ぎてもなかなか連絡がない。

私はいても立ってもいられなくなり、連絡予定日の3日後に派遣会社へ連絡することにした。

そこで、驚くべきことを告げられた。

派遣会社:「予定よりも応募者が増えて、数名は採用することが出来なくなってしまいました。ですので、申し訳ないですが、早川さんの採用はお見送りになりました」

は!? ふざけんなよ!!

30人以上ライバルがいる中で不採用にされた上に、何でこちらから問い合わせるまで一切の連絡をしないんだ!?

ここまで愚弄されると、単に「仕事先が見つからない」以外のダメージを受ける。

・まだまだ続くおかしな会社(その2

次はアルバイトで玩具の販売の仕事に応募した。

時給は800円とかなり安い。

変な会社にばかり応募してしまったので、次第に「仕事に就けること」よりも、「まともな会社に出会えるか」の方が気になってしまう。

この会社は店舗数こそ多くないものの、それなりに全国展開もしており、名前を聞いたらピンと来る人もいるかもしれない。

そんな会社だったので、応募前は少し安心していたが…

必要最低限の人数で職場を回すため、土日は絶対に休めないことや、会社から命じられたシフトを厳守することを告げられた。

私は、英語の試験を受けるために3ヶ月に一度は日曜日に休みたいことや、中国語の教室に通っているため、月曜日は休みか早番のシフトしか入れないことを申告したら、その場で不採用を告げられた。

最初の方にも同じことがあったが、この仕事もアルバイトである。

何度でも言うが…

それって、アルバイトの仕事じゃないでしょう!?

子どもに夢を売る仕事が、裏ではこんなブラックなことをやっているのだから、世も末である。

次の変な応募先は、不動産業のショールームの案内である。

この仕事は前職を失った直後に、事務の求人に応募したことで登録した派遣会社から紹介された。

登録して2ヶ月以上経って突然連絡した経緯は不明である。

事前に確認されたことは、「基本は日曜日が出勤となるが問題はないか?」と「立ち仕事になるので体力の不安はないか?」だった。

普段はそんなことを聞かれても何とも思わないが、ここまで不採用が続くと、「自分の存在価値は日曜日に働けることと、若くて体力があることだけだ」と言われた気になってしまう。

段々とメンタルが病んできているのかもしれない。

就業場所は自宅から徒歩15分だが、担当者との面談は15km程離れた場所にある本社で行われることになり、派遣会社の営業の車で向かうことになった。

車の中でも多少の打ち合わせをすることになり、今回先方からは些細なマナーを厳しく見られたり、なかなか答えづらい質問をされるから気を付けるように言われた。

いや、そんなネチネチした人間が上司であることを事前に教えてくれたら応募なんてしないのだが…

ところが、実際の面談では全くそんなことはなかった。

「思ったよりも良い人だった」というような喜ばしい意味ではない。

これまでの職歴について聞かれた以外は、私に対してほとんど関心がなく、終始「ふ~ん、そうなんだ…」という態度だった。

帰宅後、派遣会社から正式に不採用の連絡が入ったが、もうこの時点で不採用となることは察しが付いた。

採る気がないなら、最初から呼ぶな!!

この記事で取り上げた話のように、ドラマ相棒で放送された就活ネタのようにコーヒーをぶっかけたい気分である。

だが、面談後は車を運転した営業担当者と何気ない世間話が出来たのは、ひと時の楽しみとなった。

この時点で失業期間は3ヶ月を迎えようとしていた。

次回へ続く

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