なぜか派遣社員の私が新入社員に仕事を教えることになりました①

今の私は派遣社員として一般事務の仕事をしている。

いろいろな動きがあるため、どんな仕事であるかを説明するのは難しいが、事務といってもこの時の事務仕事に比べればはるかに易しく、派遣社員がやるような組織の末端としての事務作業である。

そんな平穏な日々は今から3ヶ月ほど前に突如一変した。

私の勤務先に新入社員がやってきて、派遣社員の私が正社員の彼に業務を教えることとなってしまった。

今日はその時の話をしたい。

なお、今回は実際の仕事内容について触れることが多いが、情報保護のため、実際の内容から少々アレンジを施していることをご容赦願いたい。

・青天の霹靂

私は東京の一等地に事務所を構える大企業で総務の仕事をしている。

大企業ということで、毎年4月になると学校を卒業したばかりの新人が入社する。

私の就業部署は元々は新人が配属される予定は無かったが、コロナの影響で新入社員が配属される予定だった支店が受け入れ困難となり、私の勤務する部署が宙ぶらりんになった彼を受け入れることになった。

しかし、急な話だったため、彼に任せる仕事はすぐに見つからなかった。

そこで課長は、彼が本来配属先で担当するはずだった仕事をここで教えようと思い立って、たまたま就業先でその仕事を担っている私が、彼にその業務を教えるハメになってしまった。

もちろん、私は仕事の一部を教えるだけであって、彼の専属の教育係ではない。

会社で働く上での基礎教育や、取引先や他の部署との顔合わせのような社員らしい(?)仕事の教育は社員が行う。

そして、彼は配属前の、1ヶ月程の間、本社の方で新人合同研修を受けていた。

そのため、新卒の社員と言っても全くのゼロからのスタートというわけではない。

しかし、それでも私には荷が重い。

中途採用の相手なら、前職の経験をネタにすることで、コミュニケーションを取ったり、スムーズに仕事を教えることができるのだが、新卒者にはそれがないため、会話の前提を共有することが難しい。

その上、私が不適切な指導を行った場合、逃げたり、やり過ごしたり、上手い具合に上司に告げ口をしたりすることで自分の身を守る知識も期待できない。

万が一にも、私の振る舞いが原因で、早期退職、最悪、自殺なんてことも起こりうるかもしれない。

この薄汚れた手で、ガラス細工のような新入社員を扱わせるなど、この会社は一体何を考えているのだろうか?

・素人に教育などできるのか?

1年前の記事にも書いたが、人に教えるという仕事は誰にでも簡単にできる仕事というわけではない。

もちろん、私は人に何かを教えるための訓練を受けたことなどない。

ちなみに派遣社員である私は社外の人間だから、新入社員だろうが、教育すべき相手だろうが、立場上相手は「お客様」ということになる。

そんな相手に「仕事を教えろ」などと言われても、どう接したらいいのか分からんし、向こうも困惑するに決まっている。

というよりも、素性もよく分からん派遣社員によくもそんなことをやらせようと思ったな。

自分のところの大事な新入社員が私のような人間から悪影響を受ける危険性を想定していないのか?(私が仕事に対してどんなスタンスなのかを知りたい方は「新入社員に贈りたい言葉(2019年版2020年版)」もしくは「仕事関係で伝えたい言葉」という記事を読んでもらいたい。また、私がこの会社で働いている目的についてはこちらの記事をご覧いただきたい。)

ちなみにこの会社、パソコンの初期設定とプリンターへの接続を除いて、業務のマニュアルなど存在しない。

典型的な「仕事は習うよりも慣れろ」気質な会社である。

そして、教えるのは素人の派遣社員である。

この会社ヤバくない?

ちなみに、私が課長から彼に仕事を教えるように頼まれたのは彼が配属される2日前だった。

彼はすでに入社をして合同研修を受けているわけだから、どんな人なのかを課長に尋ねた。

課長から得られた回答は

彼は

××大学を卒業している

・趣味は毎週X曜日に行うバレーをすること

という人らしい。

そんな情報いるかぁぁ!!

学歴を伝えるのなら、せめて△△学部卒業って言えや!!

新卒だから前職の経験がないのは仕方ないにせよ、適性検査や面接の結果で「こういう長所と短所があるから、最初にこんな仕事から教えてあげて」みたいな指示は無いんか!?

ただでさえ、教育の面ではド素人で、なおかつ社外の人間である私が、何の情報も与えられず、会社が高コストを払って採用した右も左も分からん新人に仕事を教えるなんてこと恐ろしくて務まらん。

課長は「前任者から教わったことをそのまま教えるだけでいいから」などと言っていたが、かくいう私も前任者からは4日という短期で、しかも口頭のみによるいい加減な引継ぎしか受けておらず後々大迷惑を被った。

マジでこの会社ヤバくない?

・「何をすべきか?」よりも「何をすべきではないか?」から考える

課長も会社も当てにならん。

ということで、私は独自に戦略を練ることにした。

先ずはこれまで出会ってきた(数少ない)仕事上の恩人とも呼ぶべき教育者のことを思い出してみよう。

数人思いついたぞ。

そして、その中から私にでもできそうな振る舞いを取り入れよう。

・「分からないことは何でも聞いてくださいね」と言って全力で「あなたの味方です」アピールはできない。

・「凄い! よくできたね!」などと仕事の一つ一つを褒めることもできない。

・「休日は何をしているの?」などと気さくな世間話をしながら距離を縮めることもできない。

できないことばっかりじゃねえかぁぁ!!

発想を変えよう。

これまで、自分が仕事を覚える時や教わる時に苦労したことや嫌な経験を思い出して「何をすべきか?」よりも「何をすべきではないか?」について考えてみよう。

これはもっとスムーズに出てきた。(反面教師とすべき人は派閥のボス、腐れマネージャーX氏勘違い派遣社員A二度と行きたくないと思った日雇い派遣の面々「この仕事を覚えるためには時間がかかる」と言いながら即戦力を求める人たち,etc…)

先ずはこのような人たちのようにならないことを心がけよう。

こうして、以下の方針を固めた。

:事前にマニュアルを作成しておく

:つまらないことにこだわらない

:信頼関係が築かれるまでは、好かれることよりも、嫌われないことを優先する

:同じことを聞かれても、何度も粘り強く答える

:他人を自分の手足のように扱わない

ひとつずつ解説していきたい。

:事前にマニュアルを作成しておく

先ずは一にも二にもマニュアルを作ることから始める。

そんなものを頼らずに「直接聞けばいい!!」とか「見て覚えろ!!」と豪語するバカがいるが、そのような人間は十中八九、仕事を把握していない。

以前、何かの話で聞いたことがあるのだが、最も知識がつく勉強法とは「他人に教える」つもりで学ぶことらしい。

人に説明するというのは生半可な知識では務まらない。

そのため、それが上手くできないということは自分もその仕事(または勉強)に精通していない証拠である。

ちなみに、「教える側も暇ではないのだから社会人は常に自分でメモを取れ!!」などと説教を垂れるバカもいるが、「メモを取ることに集中していて、仕事を覚えることに頭が回らなかった」となる方が本末転倒である。

そして、結局、何度も聞きに来ることの方がはるかに時間の無駄である。

そんなことが言えるのは、本人が責任を持たないその場限りの勢いだけの発言だからである。

:つまらないことにこだわらない

私が彼に教える仕事はパソコンを使う仕事と、手作業で書類を扱う仕事、そして来客対応などの仕事があるが、どれもその気になれば「相手を気持ちよくするため」と称して、かなり細かいところまで突き詰めていける。

たとえばExcelの幅や書式の設定とか、ホッチキスの角度とか、挨拶の声のトーンとか。

しかし、どれも最低限のことをやれば、くだらないことにはこだわらない。

これは決して、「寛容になろう」というわけではない。

些細なことにあまりにもこだわりすぎると、本当に注意したいことであっても、「うるせーな、毎回毎回どうでもいいことにこだわりやがって」と思われて、まともに聞き入れてもらえない危険性がある。

オオカミ少年の逆パターンである。

:信頼関係が築かれるまでは、好かれることよりも、嫌われないことを優先する

信頼とは時間をかけて構築されるものである。

そのため、相手が仕事に慣れて、私との間に信頼が生まれるまでは、決して感情的になってはいけない。

この記事にも書いたが、人は不安に陥った時に敏感になるものである。

それから、後々トラブルが発生して「分からないけど、質問できなかった」と言われないために、無用なプレッシャーを与えてはいけない。

真面目な話だが、わがままな人や理不尽な人も「自分は良い人」だと思っていることが少なくない。

たしかに機嫌がいい時はそうなのかもしれないが、そういう時に良い人になることは当たり前なのである。

だから、「普段はこんな良い人である自分をここまで怒らせたのだから、これは100%相手が悪い!!」と思って残酷な振る舞いができるのである。

なんともバカバカしい話ではあるが…

しんどい時や苦しい時の振る舞いこそ本当の強さが分かる。

そもそも良い人かどうかを決めるのは自分ではなく他人である。

だから、相手に好かれることよりも、感情的に振舞って嫌われないことを第一に考える。

:同じことを聞かれても、何度も粘り強く答える

先ほどの話とも関連するのだが、「分からないことを聞きたいのだけど、怖くて質問できない…」と萎縮してしまうことは多々ある。

よくあるケースは分からないことを聞いているのに「~の場合はどう思う?」などと、延々といたぶりを楽しむことである。

質問している側は分からないから聞いているのである。

にもかかわらず、「自分で考えるクセをつけさせるため」と称した教える側の一方的な都合でそんなネチネチとした説教をすることは、自分の立場(もっと言えば「組織の力を借りた地位」)を自分の能力と勘違いした傲慢な人間の所業である。

そこまでキチガイでなくても、同じことを聞かれた時に「前にも教えたでしょう?」などと嫌味を言う人も珍しくないが、これも相手に無用なプレッシャーをかけるだけのNG行為である。

最初は誰でもできなくて当たり前。

この記事で書いたように、「一般論はそうだけど、自分の職場では違う」とならないように注意しよう。

:他人を自分の手足のように扱わない

私の仕事は新人に仕事を教えることであって、彼を私の仕事の手伝うための手足として扱うことではない。

別に倫理的な理由からこんなことを言っているのではない。

そう思う方が自分のためだからである。

「最初は仕事ができないことが当たり前」と頭では分かっていても、自分が簡単にできることに手を焼いている人を目にすると、「どうしてこんな簡単なことに時間がかかるの!!」とイライラしてしまうことがある。

また、勘違いや説明不足から、相手が自分の言った通りのことをやってくれないこともある。

そんな時は、「所詮他人だから」と思って、自分と相手を同一視しない。

そもそも他人が自分のやってほしいことを100%完璧に理解し遂行することなど有り得ないのである。

「上手い、下手の問題ではなく、やる気があるのかさえ疑わしい」と思う時もあるかもしれないが、そもそも好きで仕事をやっている人など一握りである。

ほとんどの人は多かれ少なかれ手を抜いている。

でも、それはそれで仕方がないことである。

他人が仕事にどんな気持ちで挑むかは変えられない。

というわけで、仕事を上手くできなくても、やる気を見せなくても、「そもそも他人は仕事のやる気などないもの」だから仕方ないと割り切る。

私の新人教育の方針はこのように固まった。

そして、これまで、パソコンのメモ帳に保存していた作業工程をワードに貼り付けて、写真を取り入れたマニュアルを1日かけて作成した。

次回へ続く