過去3回にわたって「あの国は日本よりも凄い!」というイメージが本当なのかを当事者に聞いてみた記事を書いてきた。
今日はその最終編になる。
・アメリカ人の女性は本当に仕事と家庭を両立しているのか?
少子化著しい日本では「婚活」というものが流行っている。
理想の結婚相手を見つけるためにたくさんの婚活パーティーが開催されるが、どうも女性は相手に高額の年収を求める傾向がある。
たしかに結婚相手を決める時に相手の年収は重要である。
「専業主婦になって、(東京都)港区の高級マンションに住んで、庶民を見下すリッチな生活を手に入れるために、最低でも年収2000万は稼ぐ相手じゃなきゃ嫌だ!!」
「収入がそれ以下の男は結婚しようなんて思うな!!」
というようにクソ醜い顔と真っ黒に腐りきった腹で現実性の乏しいことをほざいている人はそう多くないにせよ、結婚したらフルタイムの仕事を辞めて、主婦になるか、もしくはパートタイマーとして働くため、自分と子どもを養うためにそれなりの年収を相手に求めてしまい、結局、相手が見つからないということが多い。
このような様子を見ていると、こんな疑問を持つ人が出てくるだろう。
そもそも、なぜ日本の女性は結婚したら仕事を辞めようと考えているのか?
結婚後も仕事を続けて夫と一緒に家計を支えるという考えはないのか?
そんな時に使われる常套句がこちら
何で日本の女は養ってもらうことが前提になっているの?
結婚したら仕事を辞めて夫に養ってもらおうなんてことを考えているのは日本の女だけだよ。
アメリカ人を見なさいよ。
彼女たちは結婚しても子どもを育ていてもバリバリとフルタイムで働いているでしょ?
あんたたちも自立しなさいよ!!
アメリカ人の女性は旦那に養ってもらうという考えはなく、結婚しても、子どもがいてもフルタイムで働く「自立した人たち」らしい。
これは本当なのか?
実際にアメリカ人に聞いてみた。
・1人目:男性
それは本当です。
アメリカは生活費が高いため、一人で暮らすことも大変です。
だからリッチな家庭を除いて妻が仕事をしないということは有り得ないと思います。
女性がフルタイムで働かないということは日本では金持ちの男性しか結婚できないということなのですか?
・2人目:女性
女性が結婚しても仕事を続けるという考えは正しいと思います。
私は結婚して子供が二人いるけど、普通にフルタイムで働いています。
私は結婚したら仕事を辞めるという考えが理解できません。
なぜ日本の女性は結婚したら仕事を辞めようと思うのですか?
これは珍しい。
2人に聞いたら、2人とも「その説は正しい」と答えた。
アメリカ人女性は結婚しても出産しても普通にフルタイムで働き続ける自立した人たちらしい。
というわけで、日本人女性のみなさんも「結婚したら家庭に入る」なんて甘ったれたことを言っていないで、アメリカ人を見習って仕事と家庭を両立させる自立した人になってください!!・・・
という前に、一つ注意点がある。
アメリカ人が考える「フルタイム労働者」と日本人が考える「フルタイム労働者」はイコールで結ばれるのか?
この疑問は2人目の意見の最後にある「なぜ日本人はそのように考えるのですか?」に返事を書いたところから生まれ、そこから議論は思わぬ展開に進んだ。
早川:
ややこしい話ですが、日本ではフルタイムという働き方は普通にフルタイムとして一日に7,8時間働くということではありません。
(ここから、日本の「正規」と「非正規」の違いと、なぜか日本では「フルタイム=正規労働者」として扱われていることを説明したが、長いのでここでは省略する。)
正社員として働く人は職種や勤務地、勤務時間などを会社の都合で一方的に決められます。
日本では従業員の能力不足の解雇には非常に厳しいですが、育児を理由にこの要求を拒否した労働者の解雇を認める判例※もあります。
極端な話ですが、正社員は会社に言われたことはなんでもしないといけません。
だから、育児をしないといけない人でも「子どもの夕ご飯の時間に家に帰れない」とか「家族と離れて暮らさなければいけない場所に転勤させられる」ということがあります。
それから、もし、子どもがいる女性だけを特別扱いしたら他の社員の人が不満を持つかもしれません。
これが子どもを育てないといけない女性が正社員で働くことが難しい理由だと私は思います。
(※興味がある人は平成12年のケンウッド事件で調べてみてほしい。)
このように答えたら、彼女の主張が変わった。
・2人目の女性:
そんなことで働けるわけないでしょ!?
会社の都合だけで勤務地や勤務時間も一方的に決められるなんて、日本のフルタイムワーカーは奴隷(slave)なの?
日本の正社員の仕組みを伝えたら、結婚しても仕事を続けるという主張から一転して、それは不可能という答えになった。
しかし、「奴隷」ですか・・・
ここで、この「日本の正社員とは単にフルタイムで働く人ではなく、会社に一方的に勤務地や勤務時間までも指定される人である」ということを1人目にも説明して、再度意見を聞いてみた。
・1人目の男性:
え!?
それは初めて聞きました。
それでは子育てをしながらフルタイムで働くことは難しいですね。
私は日本のサラリーマンは何でいつも辛そうにしているのか疑問でしたが、日本のフルタイムワーカーとは勤務時間以外にもたくさんのことで会社に拘束されていたのですね。
やはり、こちらも日本のフルタイム労働者の実情を伝えると「それでは子育てと両立は出来ない」との意見に変わった。
今回は2人にしか意見を聞くことができなかったため数が十分とはいえないが、質問はここまでにした。
彼らに「アメリカ人女性は結婚した後も仕事を続けますか?」と聞いたら、恐らく「はい」と答えるだろう。
その後に私が日本の正社員の仕組みを伝えて「アメリカの女性はこのような環境であっても仕事を続けることができますか?」と聞いても、それは誘導尋問にしかならない気がしたからだ。
2人の意見だけでは不十分かもしれない。
しかし、アメリカ人は結婚した後も仕事を続けるということは事実かもしれないものの、日本とアメリカの働き方の違いを無視して、「アメリカ人の女性は結婚後も自立しているのだから、日本の女も甘えてないで自立しろ!!」という意見は間違いだと思う。
結論
・アメリカ人の女性は結婚してもフルタイムの仕事を続けるという話は本当。
・しかし「日本のフルタイム労働者」と「アメリカのフルタイム労働者」には大きな違いがある。
・その違いを無視して「アメリカ人の女性は自立している」とか「家事と仕事を両立している」と言って、日本の女性を非難するのは間違い。
・まとめ
4回にわたって、「あの国は〇〇だ」と言われているけど、それは本当なのかを現地の人に聞いてみた時の話をした。
最後にもう一度、結果を振り返ってみる。
メキシコ人の労働者は世界一働く:△
オランダはパートタイム労働者の天国である:×
雨に濡れた猫を電子レンジで乾かそうとしたアメリカ人がいる:×
アメリカ人は子どもに勉強を促すために低賃金労働者を貶す:×
アメリカ人の親は子どもの大学の学費を払わない:×
アメリカ人は成人後も親と同居することは許されない:×
アメリカ人女性は仕事と子育てを両立させている:△
今回は多くの人の協力のおかげで記事を書くことができた。
特に「大学の学費は全額自分で払った」とか「実家からは独立して住んでいる」と見栄を張って嘘をつくことができるにもかかわらず、親の世話になっていることを正直に話してくれたアメリカの人たちには感謝しています。