今日は前回と前々回の続きで「あの国は日本よりも凄い!」という話は本当なのかを当事者に聞いて確かめる企画の第3弾。
今日のテーマはこちら
・アメリカ人は自分で大学の学費を払っているのか?
最近まで、日本では大学生の学費は親が払うものだと言われていた。
大学の学費は決して安くはない。
目安としては国公立大学の授業料が年間50万、私立大学では年間100万、それに加えて入学金、施設使用料などが加算される。
たとえ、可愛い我が子のためであっても、この出費は親にとって大きな負担である。
子どもが真面目に勉強してくれるのなら、親としても救いはあるが、やれサークル活動だ、合コンだ、コンパだ、海外旅行だ、と勉強以外のことしか頭にない学生に憤っている人も珍しくない。
そんな時によく使われる格言がこちら。
しかし、日本でも最近は親の所得低下や学費の値上げなどで、親が学費を払えず、奨学金(という名のローン)を借りて大学に通う学生も増えてきている。
この資料によりと日本で奨学金を借りている学生は2.7人に1人になっているらしい。
そして、何とか卒業は出来たものの、返済が滞って社会問題になっている。
そんな時に使われる常套句がこちら。
この記事によるとアメリカの公立大学の年間平均学費は約91万円。
私立は約236万円。英語版の原文はこちら
さらにアメリカでは75%の学生が奨学金を借りているらしい。
日本の学生の2.7人に1人と比べると、アメリカでは多くの学生が奨学金を利用していることがわかる。
その上、もう一つ重要なポイントがある。
日本では在学中に就職活動を行って、卒業と同時に仕事を始め、返済のための収入を得ることができる。
しかし、アメリカには新卒一括採用なんて概念はない。
そのため、職が見つからないまま大学を卒業し、無収入のまま返済が始まってしまうことも珍しくない。
それにひきかえ、日本は何て恵まれたことか・・・
というよりも、アメリカ人はローンを背負って大学に通うことが怖くないのか?
もしも私がアメリカ人なら、そんなリスクを背負ってまで大学に行こうとは思えない。
恐ろしくて、毎晩、悪夢にうなされるだろう。
というわけで、私はアメリカ人に奨学金を利用したかどうか、それから、滞りなく返済できているのか聞いてみた。
・1人目(前回のようにA,B,Cと仮名をつけるのは面倒だから辞めにした)
(質問時の)職業:IT関係
たしかに僕が大学に通った時はローンを組んで学費を払ったよ。
それから、君の言う通り、アメリカでは大学を卒業してもすぐに仕事に就けるとは限らない。
僕も卒業してしばらくは、仕事をしていなかったり、インターンをしていたから、返済できる余裕なんてなかった。
だから、親に助けてもらっているよ。
え?
親が返済を肩代わり?
これは盲点だった。
75%のアメリカ人が奨学金を利用していることは事実でも、彼ら全員が「すべて自分で返済しており、親の助けは借りていない」とは言っていない。
このことに注意して、他に3人のアメリカ人にも聞いてみた。
(注:奨学金は英語で scholarship となるが、これでは返済不要の給付型を思い浮かべてしまうことがあるため、質問はすべてstudent loanという単語を使った。)
・2人目
職業:金融会社勤務
学費:奨学金
返済:自分で返済中
・3人目
職業:ファーストフード店勤務
学費:奨学金
返済:自分で払うこともあるが、厳しい時は親が援助
・4人目
職業:空港職員
学費:親が全額負担
2人目は自分で奨学金を借りて、卒業後に自分で返済。
典型的な自立したアメリカ人の姿である。
3人目も奨学金を借りて大学に通う。
しかし、質問時はファーストフード店で働いているところから想像すると、十分な給料を得ることができる仕事に就けなかったのだろう。
一応、本人で払おうとはしているが、親の援助がないと厳しいようだ。
4人目にいたっては、最初から親が学費を払ってくれている。
聞き取りをした人数はたかだか4人だが、これを見てアメリカ人は自分で学費を払っていると思えるだろうか?
何の気負いもなく親に払ってとお願いすることが珍しいことではないように見えるが・・・
これは私の仮説だが、入学時に「これから数年間は毎年100~300万払え」となった場合、家が裕福で貯金がある学生は親に払ってもらっているが、いきなりこの大金を用意できない家庭の学生は、支払いを立て替えるために、奨学金を利用しているのではないのだろか?
というよりも、本当にアメリカに「親に学費を払ってもらうことは恥だ!!」という概念があれば、ネットで知り合っただけの半匿名の相手に「僕は大学の学費を親に払ってもらっています」などど馬鹿正直に話すとは思えない。
結論
・アメリカの大学の学費が高額なことと、多くの学生が奨学金を借りていることはおそらく事実である。
・ただし、アメリカ人も結局は親が援助してくれていることが多い。
・アメリカには馬鹿正直だが良い人が多い。
・アメリカ人は本当に成人したら実家から出ないといけないのか?
日本には成人後も親と同居して非正規の仕事に就いているフリーターと呼ばれている人が大勢いる(念のためではあるが「フリーター=親と同居」ではないことを断っておく)。
彼らが夢を追いかけたり、資格の勉強をしたりしながら、現実の高い壁に阻まれつつ、それでも必死に自立しようとしている人であれば応援したくなるが、多くは「自立も定職に就くこともカッタリ~」と言って楽な仕事をしながら、生活費を浮かせるために親と同居しているだけである。
そんな彼らに喝を入れるための伝家の宝刀がこちら。
これまた分かりやすい、アメリカ人は自立していて日本人は甘えている論である。
この「アメリカ人は成人後に親と同居してはいけない」という説が本当なのかアメリカ人に聞いてみた。
・1人目
職業:金融会社勤務
住まい:未婚で親からも独立
意見:たしかに、アメリカにはそういう文化があります。アメリカでも最近は若い人が自立できないと言われていますが、この国では一生懸命勉強して仕事をすれば、誰もが自立した生活を送ることができます。
・2人目
職業:販売
住まい:未婚で姉と同居(本人は男性)
意見:そんなことはありません。大人になっても親と同居している人はいます。私は親と一緒に住んでいませんが、仕事の都合で実家を出ただけです。それに一人が暮らしができるほどの収入もありません。だから、アメリカでは全員が成人後に親から独立するということはありません。
・3人目
職業:IT関係
住まい:未婚で父親と同居
意見:そういう考えの人もいますが、全員が親と同居していないというわけではありません。私もこの仕事に就くまで、低賃金の仕事を続けていたので一人暮らしができる余裕はありませんでした。
・4人目
職業:企業でインターン中
住まい:未婚で両親と同居
意見:そんなことはありません。なぜ日本人はそんなふうに思っているのですか? アメリカ人の親はそんなに子どもに対して冷たくありません。
・5人目
職業:通信会社勤務
住まい:既婚で妻と子どもと同居(親からは独立)
意見:私の父は若い時にあなたが言ったことを両親からよく言われたそうです。しかし、私は彼からそのようなことを言われたことがありません。
親が死んだら自分たちで生きていかなければなりませんが、一人暮らしができるだけの収入を得られる仕事に就ける年齢は人によって違います。だから、どうしても18歳になったら家を出ないといけないということはありません。
2人が親から独立しており、2人は同居、1人は親からは独立しているが姉弟で生計を立てている。
事実として独立している人が5人中2人。
それから、独立できるだけの収入がないから親と同居している人もいるが、そもそも独立は必要ないと思っている人もいる。
アメリカ人は自立しているという人が想像するような「成人後は独立しなければ」と思っている人は1人だけだった。
やはりこれも「アメリカの学生は全員自分で学費を払っている」と同様に「アメリカ人は成人後に独立できるだけの収入があれば独立するが、できなければ親(または他の身内)と同居する」という当たり前の結論になるのではないか?
結論
・アメリカには「成人したら親から独立しなければならない」という考えの人はいる。
・しかし、そのような人も「最近はアメリカでも成人後に親と同居を続ける人が増えた」とは思っている。
・成人しても親から独立できる収入を得る仕事に就けない人は親と同居している。
・そもそも親からの独立なんて必要ないと思っている人もいる。
・アメリカでは何歳で十分な収入を得られる職に就けるかは人によって違う。
・だから「アメリカ人は成人後に親と同居してはいけない」という説は間違い。
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