・「外国人とは常に本音で話せ」は正しいのか?
ネットスラングで「コミュニケーション障害」という言葉がある。
元々は自分の考えを人に伝えるというコミュニケ―ションが苦手な人を指す言葉だったらしいが、最近はこれに加えて、否定的なことを言われると、すぐに傷ついて、そのまま相手と一切のコミュニケーションを絶つ人も含まれるらしい。
苦手であるだけなら結構だが、自分はコミュニケーションを放棄する一方で、相手にはそれ相応のものを求めて、その期待を外されたら、相手に勝手な怒りをぶつける「メンヘラ(メンタルヘルスの問題を抱える人)」とか「かまってちゃん」と呼ばれる人がいる。
恥ずかしながら、私はこのようなメンタリティの人は日本や韓国など、言葉を使わなくてもコミュニケーションを行うことができる国に特有なもので、「西洋(とくにアメリカ)にはこんな人はいない」という偏見を持っていた。
よく言われる
という主張を完全に信じていたこともあった。
だが、私の思い込みは数人のアメリカ人によって見事に打ち砕かれた。
今日はそんな人たちの話をする。
・コミュニケーションを拒否するアメリカ人たち
①:即レスしないと怒り爆発
今から3年くらい前、InterPalsで当時25歳のアメリカ人男性(仮名:A)が私にメッセージを送ってきた。
私が「メッセージを送ってくれてありがとう」と事務的な返信をすると
アメリカ人A:
You are very welcome. :D :D :D :D :D(←笑顔を表す顔文字)
I am waiting for you to talk. :D :D :D :D :D
とかなり喜んでいて、すぐに友達申請をしてきた。
初対面の相手に対して随分と距離が近い人だなあと感じた。
私は彼に、最初は何について話すか訊ねたら、「何でもいいよ」と言われた。
親が「子供に今日の夕食は何を食べたいか?」と聞いた時に、「何でもいいよ」と言われるのが一番困るとはよく言われているが、まさにそんな感じだった。
取りあえず、私は「このサイトで他のユーザーと話すことが最も多いテーマは何か?」と聞いた。
これが彼の答えだった。
それを見た私は彼が人と接することが好きな人なのだろうと思った。
その日は、「このサイトで何人と会話をして、実際に会ったことのある人はいるか?」という会話で終えた。
彼は私と話をしたかったようで、その後の数日は毎日のように私にメッセージを送ってきた。
だが、困ったことに彼は自分から話題を見つけることは一切なく、ただ私に話をするように促すメッセージを送るだけだった。
彼は現地時間が深夜の時も、よくオンライン状態だった。(そんなにリアルでは暇なのか?)
そして、私がオンラインになると頻繁に
とメッセージを送ってきた。
もしかして、この人は現実世界に友達がいないのか?
彼は俗にいう「かまってちゃん」で友達がいないから、初対面の相手にもあのように馴れ馴れしく接してきたのか・・・
そんなことが頭に浮かんだ。
そして、数日後、私が他のユーザーと会話中しているとメッセージが届いた。
アメリカ人A:
Don’t you talk with me? 15:56(←時間) (私と話したくないの?)
Why don’t you reply to me? 15:58 (どうして返信してくれないの?)
You seem to be so cold. :( (←しかめ面を表す顔文字)16:00 (あなたって冷たくない?)
私がサイトにいることを見つけるなり、2分単位で怒涛のメッセージ攻撃である。
相変わらず、「かまって!!かまって!!」の連発であり、即レスがないと見ると「あんたは冷たい!!」とまで言ってきた。
ここまでくると、さすがに「人に話をしてもらうことを期待する前に、自分から話題を見つけてきてはどうか?」と言いたくなったが、そこは我慢。
まずは、少しの間だけ待ってもらうことにした。
普段このサイトで「友情の大切さ」について語り合っているという彼なら、私のお願いを理解してくれるはず。
そう思って、
早川:
Would you wait for a minute?
I’m talking to other user now.
If you have something to ask me, would you please send me a message?
I’ll reply to you soon.
少し待ってもらえませんか?
私は今、別の人と話をしています。
もし私に聞きたいことがあるなら、私にメッセージを送ってくれませんか?
後ですぐに返しますので。
と返答した。
すると、こんな答えが返ってきた。
アメリカ人A:
why?
ok I thought you were more warm. You are rather COLD. :(
どうして?
わかったよ。あなたはもっと暖かい人だと思っていたけど、あなたはとても冷たい!!
子供かぁ!?
理由は書いてんのに何がwhyだ!?
と今でこそ思うが、当時の私(英検4級レベル)はcoldの意味が分からずwarmも相まって天気の話をしていると勘違いしていた。
当時は1月でとても寒い日だったが、どうしてここの天気がわかったのか不思議だった。
というわけで、別件のやり取りが終了した後、彼に「How have you been lately? (最近、どう?)」といつものように返信したが、その後、彼から連絡が来ることがなかった。
友達リストから彼の写真が削除されていることに気づいてメッセージを読み返して、彼のメッセージの本当の意味が分かった。
友情の大切さを語る人なら、即レスしなかっただけで、友達リストから外したらダメでしょう・・・
あんたは「LINEで既読スルーされた!!」って言って同級生をいじめる中学生か?
やはり、彼は極度のかまってちゃんだった。
だから、その期待が外された怒りで、私との連絡を絶ち、友達リストの削除までしたのだろう。
私からすれば、とんでもなく迷惑な人だったが、アメリカ人にもこんな人がいるのかと驚いた。
②:怒りに満ちた突然の再来
この出来事から、3ヶ月ほど経ったある日、別のアメリカ人男性(当時22歳、仮名:B)と知り合いになった。
彼は大学生で、彼も初めてメッセージを交換した日に友達申請をしてきた。
メッセージのやり取りも先の人と同じく、特に自分から話を切り出すわけでもなく、私が訊ねた、彼の生活や家族について短い言葉を返すだけで、すぐにネタ切れになり、一週間で連絡を終えた。
これはペンパルサイトでは珍しいことではない。
・・・のだが
最後に連絡を取ってから一週間が経った日、彼からメッセージが届いた。
私は彼が何を言いたいのかわからず、彼に真意を確認してみた。
早川:「Do you mean I escaped? (あなたは私が逃げたと言いたいのですか?)」
アメリカ人B:「Yep. you left me and suddenly ran away. (はい。あなたは私を置いて突然逃げました。)」
私はAとのやり取りを思い出した。
自分から話題を見つけるわけでもなく、「あなたは話しをしてくれない」というかまってメールである。
彼の主張は、今になって思い返してみても腹立たしいが、よくよく考えてみると、当時の私に全く非がないというわけではなかった。
というのも、私は気を使って、自分の思ったことを正直に彼に伝えていなかった。
それが彼を怒らせる原因になったのかもしれない。
というわけで、今回は私が今まで思っていたことを正直に話してみた。
早川:
Have you ever tried to talk to me on your own?
You didn’t it, did you?
Nevertheless, why can you tell me that I run away?
Why don’t you change your way before you condemn me?
あなたは自分から私に話をしようとしたことがありましたか?
そうしませんでしたよね。
にもかかわらず、なぜ私が逃げたなどと言えるのでしょうか?
私を非難する前に、なぜ自分のやり方を改めようとしないのでしょうか?
と返事を送った。
その後、彼から届いたメッセージは一言
子供かぁぁ!?
あんたどんだけ人に頼ってんだ!?
「人に頼る前に自分からコミュニケーションを取る努力をしようね」と注意したらこの様である。
前回は自分の気持ちを正直に伝えなかったことで友達リストから外されたが、今回は正直に伝えて外された。
この種のメンタリティを持った人間にはどう接することが正解なのだろうか・・・
③:愚痴ばっかりで何が言いたいのかわからない
それから1年後、また別のアメリカ人男性(当時24歳、仮名:C)と知り合った。
彼も先の二人と同じく、私と会った日に友達申請をしてきた。
彼が送ってくるメッセージは「(彼が就いていた販売の)仕事がつまらない」とか、「彼の住んでいる地域にはあまり仕事がないため転職できない」だとか生活の不満を書いたものだった。
私は話を引き出すために日本の失業者数や転職の話をしてみた。
しかし彼は
I see. (なるほど。)
You are lucky. (うらやましいです。)
くらいしか答えない。
彼に「そっちの様子はどうか?」と聞いてみたが、「難しいことは分からない」と言われて、唖然としたこともあった。
「あんた、自分の愚痴ばっかり言っていて、私と会話をする気はないのか?」と言いたくなったのは一度や二度ではない。
話す内容はほとんど彼の愚痴(というよりも独り言)になってきて、だんだんと会話のネタが尽きてきた。
いつもなら、このまま自然に関係は消滅するのだが、彼は私と話を続けたかったようで、頻繁にhelloというメッセージを送ってきた。
そんなある日、例によって彼の独り言に返事をしたところ、彼は私にこんなメッセージを送ってきた。
このメッセージを見た私は先の二人を思い出した。
しかし、彼はあの二人と違って、少なくとも自分の気持ちを伝えようという意思はある。
これは彼らとの大きな違いである。
でも、彼の文章はほとんどが短い独り言で、私は彼の考えがよくわからない。
そして、その話だけでは何も発展しない。
というわけで、
早川:
I hate to tell you, but your messages are too short to tell me what you think and want to say.
Would you please write enough sentence to make me see what you think?
こんなことは言いたくないのですが、あなたのメッセージは短すぎて、あなたの考えや言いたいことが私に伝わりません。
あなたの考えを私に伝えるための文章を書いてもらえますか?
と書いてみた。
するとこんな返事が来た。
アメリカ人C:
You are not person I expected.
I’ll never send you my message.
あなたは私が思っていた人とは違いました。
私はもうあなたにメッセージを送りません。
あんたも子供かぁぁぁ!?
俺はあんたのお母さんじゃないの!!
毎日の愚痴を聞かされて、それを全部受け止められる器なんて持っとらんわ!!
彼は私の対応に心を痛めたのか、その後、例によって私は友達リストから外された。
・まとめ
なぜ彼らは人に期待するだけで、自分からコミュニケーションを取ろうとしないのだろうか・・・
しかも、自分たちは母国語、私は外国語を使うというハンデがあるにもかかわらずである。
よく素性がわからない初対面の相手に、すぐに友達申請をするところも「この人なら自分を全面肯定して、すべてを受け入れてくれるかも」という他者依存の表れなのか・・・
そして、屈折した依存心のみが膨れ上がって、即レスしなかったり、傷つくことを言われたりすると怒りを爆発させて、友達リストから削除、そして二度と連絡を取らない。
毎年4月の恒例行事、「今年の新入社員はこんなにヤバイ祭り」で取り上げられる日本の新入社員なんて比じゃないメンタルである。
ちなみに、今回のケースは全員がアメリカ人である。(※:アメリカ人以外で同様の行動を見せる人物はこちらの記事に登場)
アメリカと言えばコミュニケーションの達人のイメージがあったが、何ですか、このガラスのメンタルは?
よく言われる
「日本人は相手に本音を伝えなさすぎ!!」
「外国人とは常に本音で話すべき!!」
という助言は必ずしも正しいとは言えない。
オブラートに包んだ場合でも、突き放した場合でも、期待通りの反応を見せなければ、彼らのようにすぐに傷つく(困った)人たちもいる。
もちろん、この三人とのやり取りだけで、「アメリカ人はこんな感じです」とは言えない。
そうではないアメリカ人もいた。
彼らは実社会が苦しくて居場所がないから、ネットに逃げて、現実では満たされない感情を求めていたのだろうか・・・
先ほど書いた通り、彼らのような人たちとどのように接すればいいのかは私にはわからない。
まとめにならない結論になるが、今回、彼らから学んだことは「現実社会がつらくて、ネットの世界に逃げても、そこで全く別の自分になることは出来ない」ということくらいか・・・