・ネイティブ英語と非ネイティブ英語
イギリス、アメリカ、オーストラリアなど英語を母国語として話す人たちの英語を「ネイティブ英語」という。
一方で英語以外の言葉が母国語である人たちがコミュニケーションを取るための共通語として使う英語を「非ネイティブ英語」という。(「非ネイティブ英語」を「グローバル英語」とも呼ぶ人もいるが、今回はその名称は使わない。)
私が勧めることでもないが、意中の英語圏の国があって、その国の生活を楽しみたいと思うなら「ネイティブ英語」を学んで、単に「外国人と話ができればいいいいや」と思う人なら「非ネイティブ英語」を学べばいいと思う。
ちなみに、私は海外の人がどんな生活をしているのか興味があって、彼らから話を聞くためには英語を学ぶことが手っ取り早いと思って英語を学び始めた。
だから、ネイティブを避けるわけではないが、限定もしていなかった。
私の目的は英語圏の国で働くことでも、移住することでも、流暢な英語を話せるようになって、ネイティブの友達や恋人と仲良くすることでもなかった。(一時は気持ちが揺れたりもしたが・・・)
だから、「ネイティブはそんな言い方しない」とか「ネイティブはそんなふうに考えない」とか言われても、「俺はネイティブじゃないし。そもそもネイティブになりたいわけでもないし・・・・」と思って、ほとんど相手にしていなかった。別にネイティブに憧れてないし・・・
働いた経験のある人なら思い当たると思うが、大した仕事をしているわけでもないのに「俺は口で仕事を教えたりしない。俺みたいになりたいのなら見て盗め!!」とか「黙って俺のまねをしろ!!」とか真顔で言っていた人がいたと思う。
それを見たあなたは、
「いや、こっちは仕事としてやらないといけないわけで、別にあんたに憧れてないし・・・ってか、あんた、どんだけ自分が仕事できると思ってんだ?」
そう思ったことだろう。
まさにそんな感じである。
書店で山積みにされている「ネイティブの~」と銘打った本は、もちろん素晴らしい本もあるが、日本人がなかなか英語を話せないことに付け込み、不安を煽ってものを売る、コンプレックス商法として販売されているものも多いと思うので、それを見てあまりいい気はしない。
ネイティブの意見を聞くことは大切だが、すべてを取り入れる必要はない。そんな中で、私がもっと早くネイティブの意見を参考にすべきだと思っている点は「発音」である。
ただし、目的は正しい発音を出すためではない。
リスニングのためである。
・知らない音は聞き取れない
英語の発音の本を読むと発音記号や日本人には同じ音にしか聞こえない「RとLの違い」などいろいろなことが書いてあるが、私が最も重要だと思う点を2つ紹介する。
①子音が消える。
日本語はすべての音にa,i,u,e,oの母音がついている。
しかし英語にはd,t,gなどの子音で終わって、母音がついていない単語がたくさんある。
これが日本語との違いだが、厄介なことに、これら子音が単語の終わりに入る時は発音されない。(少なくとも私には聞こえない。)
たとえば、食べ物を意味するfoodは「フー(ドゥ)」で、足を意味するfootは「フー(トゥ)」となる。
意識して聞いていなければ両方とも「フ―」としか聞こえない。
私はこれを初めて聞いたとき「こんな違い分かるわけないだろう!?」と思った。
しかし、英語は日本語とは違う。
だから、ネイティブの発音はそのようにしか聞こえないと思うしかないのである。
②前後の単語に合わせて発音が変わる。
・Stop it
これをそのまま読んでみると「stop」と「it」の2つで「ストップ」と「イット」。
先の法則に倣って語尾の子音を消せば「ストッ イッ」となるのだが、この場合は「stopのp」と母音から始まる「itのi」が連結されて「ピ」の音が作られて「ストッピッ」と聞こえる。
このように単体では「ストッ」と「イッ」となるものが連結されることによって「ストッピッ」と音が変わることをリンキングという。
これ子音で終わる音と母音で始まる音がつながったケースだが、
「met(メッ)」と「her(ハー)」が連結して「met her」となると「her」の「h」の音が消えて「メッター」と聞こえる(「メラ―」とも聞こえる)などいくつかのパターンがある。
興味がある人は「リンキング」というワードで調べてみてほしい。
私がこれを知ったのは英語の勉強を始めて4、5年くらい経ってからなので、それまでのリスニングの練習はただただ聞こえもしない音に耳を傾けているだけで、莫大な時間と労力を無駄にしていた。
非ネイティブの英語でも構わないと思っている方でも、私と同じ間違いはしないでほしい。
・ネイティブスピーカーの意外な悩み
話を戻すが、重要なことは「彼らはこういうふうに発音する。日本人が英語をカタカナ読みした時のように子音で終わるものに無理やり母音をつけたり、一言ひとこと区切って発音したりしない」ということを知ること。
そのことを頭に入れておけば、自分はネイティブと同じ発音が出来なくても問題はないと思う。
ところで、「ネイティブは~!!ネイティブは~!!」と言って他人の英語をダメだしする人がいるが、そもそもネイティブは非ネイティブが使う英語に対してそんなに不寛容なのか?
私はそうは思わない。
フィリピンの宿に泊まっていた時、食堂で朝食を食べているとオーストラリア人の旅行者がやって来て、いろいろと話しをしたことがあった。
彼は私に面白いことを話を聞かせてくれた。
彼はフィリピンに来たのは今回がはじめてで、来る前はフィリピンでは多くの人が英語を喋ることができると聞いていた。
しかし、実際に現地の人と会話をすると英語がなかなか通じなくて困ったらしい。
空港の中で、タクシーに乗って行先を告げる時、ホテルで宿泊の手続きをする時、そして一番ショックだったのはマクドナルドで食事をした時に、注文したメニューがなかなか理解してもらえなかった上に、店員が何度も言った「here」という簡単な単語が聞き取れなかったことらしい。
そう言って、彼は私に「なぜ自分の英語がフィリピン人に通じないのか?」ということに意見を求めてきた。(とは言っても私はネイティブの英語とフィリピン人の英語の違いが分かるほど、英語に精通していないので、何も言えなかったが・・・)
その話を聞いて、私が驚いたのは、彼がネイティブである自分にとってわかりづらい英語を話すフィリピン人を非難するのではなく、フィリピン人と会話ができない自分の英語力を悩んでいたことである。
ネイティブでも「俺は英語のネイティブスピーカーだ。俺の話す英語こそが本物の英語だ。お前たち非ネイティブが俺に合わせろ!!」という主張は一切せずに、現地の人の英語と向き合い、自分が変わろうとしていたのである。
本当の国際人とはネイティブの英語の猿真似をする人のことではなく、彼のような考えを持っている人のことなんだろうと思った。
このように、ネイティブも自分たちにとって分かりづらい、もしくは間違っている英語を使っている人に対して、その英語を直すように要求するのではなく、自分が非ネイティブの人たちとも分かり合える英語を使おうと努力している。
だから、「ネイティブは~!!ネイティブは~!!」と言って、こちらが完全に譲歩し、彼らに歩み寄ることだけが正しいとは言い切れない。
・まとめ
①ネイティブの意見を聞くのは自分がネイティブになるためでなく、相手のことを知るため。
②ネイティブも、自分の英語が非ネイティブに通じない時は悩んでいる。