ネットで知り合った既婚女性から夫を紹介されたらどうなるのか?

先月、台湾人の知り合いが東京へ旅行に来る予定だったが、コロナの影響で中止することになった。

彼と私は実際に会う予定だったが、それもご破算となった。

彼が旅行の中止を伝えた時、こんなことを言った。

「今回は日本へ行けずとても残念です。でも絶対にまた来ます。今度は友達と一緒に来ようと思います。だから、その時は私だけでなく彼とも会ってくれますか?

うーん…

彼が友達と一緒にやって来ても、私は彼と上手く話しができるだろうか…

私がその友達の立場なら、気まずくてしょうがないだろうから、できれば会いたくない。

   と困惑していたが、そういえば、以前も似たようなことがあった。

・紹介されたのは「友達の友達」ではなかった

今から2年ほど前、同じようにペンパルサイトで知り合ったアカネ(仮名)という台湾人が日本へやって来る時に、彼女は私だけでなく、私の友達にも会いたいと言った。

それに難色を示した(というよりも友達がいなかったから、そもそも無理)私に対して、彼女は

「なぜ『この友達は会社の人』『この友達は学校の人』というように、カテゴライズして、グループが違う人同士は、お互いに会う前から避けるのか?」

「一緒にいることが楽しいから「友達」じゃないのか?」

「友達の友達は『友達』じゃないのか?」

と反論してきた。

どうやら「友達の友達とは『友達』になれる」という考えは台湾では珍しくないらしい。

とはいっても、私にはそのような習慣がないのだから、もしも、そのような人と会うことになったら、どのように接したらいいのか分からない。

先日、この話を彼女にするとこんなことを言われた。

アカネ:「友達の友達と何を話したらいいのか分からない?」

早川:「そう。だから、仲良くなるとまではいかなくれも、せめて最低限のマナーや失礼にならないような接し方を教えてほしい」

アカネ:「だったら、私が知り合いを紹介するから、その人のやることを見てみたら?」

そうして、彼女は知り合いのLINEのアカウントを私に紹介した。

その人のプロフィールがこちら

名前:ワン(仮名)

性別:男性

年齢:30

居住地:台湾

紹介者との間柄:

いや、とんでもない相手を紹介されたんだけど……

「友達の友達とは何を話したらいいのか分からない」なんて言っていたが、彼女が紹介した人物は友達の友達などという甘っちょろい相手ではない。

彼は私にとって「友達の夫」である。

そんな人と話すことになったら、もっと気まずくなるわ!!

この女にはデリカシーというものがないのか?

自分の妻に「この人は私の友達です」と言われて見知らぬ男を紹介される人は一体どんな気持ちになるのだろう…

彼女が私に自分の夫を紹介したのは冗談なのか?

それとも本当に彼と私が仲良くなれると思ってのことなのか?

もしも冗談なら、「冗談はやめてよ」と言いながら笑って逃げることができるが、彼女が本気なら、私が彼を拒絶してしまうと、彼女との信頼も損なわれてしまう。

迷った私は彼に連絡することにした。

ただし、彼女には、私が連絡することと、その理由を前もって彼に伝えてもらうことにした。

・彼にとっての私の存在とは何なのだろうか?

アカネによると彼女の夫は彼女ほど流暢ではないにせよ、日本語の読み書きはある程度できるらしい。

というわけで、今回は彼女の時と同様に日本語でメールのやり取りをすることになった。

早川:

はじめまして。

日本人の早川と申します。

アカネさんとは2年前にペンパルサイトで知り合いました。

先日、アカネさんに台湾の人と仲良くなりたいという話をしたら、あなたのことを紹介されました。

よろしくお願いいたします。

とメッセージを送ることから始まったが、その後は何と続けるべきか?

友達の友達と仲良くなることが難しい理由は、相手との自分の立ち位置が分からないため、会話の糸口がつかめないことにあると思う。

彼は私から見れば「私の友達の夫」という明解な地位がある。

しかし、彼から見た私は何なのだろうか?

妻の男友達……

私が彼女と知り合ったのは彼らが結婚する1年ほど前だから、彼は私が既婚者である彼女に手を出したとは思わないだろう。

だが、彼女が結婚した後も連絡を取り続けた上、(成り行きとはいえ)夫にも連絡を取る私のことを彼は一体どのように感じるのだろうか?

「あんた一体何なん?」

と奇妙な目で見られるに違いない。

彼は私以上に気まずい思いをするだろう。

・共通の知人の話題が出せないもどかしさ

数分後、ワンから返事が届いた。

ワン:

こんばんは。

ワンです。

話はアカネから聞きました。こちらこそよろしくお願いします。

彼は「話はアカネから聞いた」と言ったが、彼は一体どこまで私のことを聞いたのだろうか?

かつて一緒に会ったことがあること。

彼女が結婚した後も連絡を取り続けていること。

彼はこんなことも知っているのだろうか?

そして、そんな私を彼はどう思っているのだろうか?

私はそれが気になって仕方ないが、怖くて聞けない。

さて、彼が返事を送ってくれたのだから、何か話をしなければ。

こういう時は、紹介してくれた共通の知人の話題で話をつなぐことが定石なのだろうが、今回に限ってはそれができない。

やみくもに彼女の話をしようものなら、「私はあなたの知らない彼女との思い出があります」と言って挑発しているように受け取られかねない。

とりあえず、彼女のことは置いといて、彼のことについて質問してみよう。

早川:「ワンさんは今、どんなお仕事をされているのですか?」

ワン:「コンピューターの修理やセッティングの仕事をしています」

コンピューターの修理か……

そういえば、アカネも以前IT関係の会社で働いていると言っていた。

「お二人は仕事を通じて知り合ったんですか?」   と聞きたくなったが、危うく彼女の話題に触れてしまうところだった。

危ない。危ない。

私はその後も彼についての質問を続けた。

出身地、休みの日の過ごし方、日本語を覚えるようになったきっかけなど。

彼は私の質問にすべて答えてくれた。

しかし、文章はどれも短めで、感情を隠しながら淡々と事実を並べている感じがした。

その一方で彼は私に全く質問してこない。

やはり、自分の妻が結婚後も連絡を取り続けていたどこの馬の骨ともわからない男のことを警戒しているのだろうか?

・あなたのことはよく知っている

私は自己紹介を装って、探りを入れてみることにした。

早川:「今度は私について話させてもらいたいんですけど、何から話せばいいですか? ワンさんはアカネさんから私のことを聞いたと言っていましたけど、私のことはどこまで知っているか教えてもらってもいいですか?」

ワン:「アカネは以前から、私とよく似た日本人の話していました。彼は東京に住んでいるけど、都会の生活が好きではないこと。人見知りな性格で、よくアカネに振り回されていること。昨日、それがあなたのことだと知りました。アカネが東京であなたと会った時の話も聞きました。私もよく彼女と同じようなことをしていました。私はあなたとアカネが他にどんなことをしたのかを聞きたいです」

え!?

予想に反して、彼からは妻と連絡を取り続ける男に対する嫉妬や怒りは感じられず、とても友好的な人のように見える。

しかも、彼の方から、彼女の話をしてほしいと要求してきた。

私はホッとした反面、不安が残った

はたして、それは彼の本心なのか?

それとも、私を油断させて、私と彼女の関係を聞き出す腹積もりなのか?

迷っていると、以前彼女に言われた言葉が頭に浮かんだ。

「ずっと信じていた」

彼女はそう言って、私の胸を貫いた。

だから、私も彼女を見習って、彼女が結婚した相手のことを信じよう。

私は彼に私の知っている彼女の話をした。

知り合った初日に日本語でブチ切れられたこと。

実際に会うまでは彼女のことを信用できなかったこと。

実際会った時の彼女は太陽のように輝いていたこと。

彼がプロポーズした時は、家族や友達に囲まれていた当時の生活が気に入っていたため、もしも結婚したら、その関係が壊れるかもしれないと悩んでいたが、彼と結婚するのなら、今までと同じ自分でいられると確信できたと言ったこと。

彼は彼女の結婚前の葛藤の話には驚いていたが、それ以外のことは「いかにも彼女らしい」と納得していた。

・既婚女性の夫と友達になれるのか?

アカネの話を通じて、彼女の夫であるワンと親睦を深めたところで、どうしても彼に聞いておきたい質問をした。

早川:「日本では男性が、知り合いの女性が結婚した後に連絡を取り続けるだけでも非常識とみなされ、さらにその夫にも連絡をすることは言語道断だと言われます。あなたの国ではこのような行動に問題はないのですか?

ワン:「アカネが『私と離婚してあなたと結婚する』と言い出したら怒るかもしれません。だけど、あなたは彼女の友達です。だから私はこれからもあなたとアカネには仲良くしてほしい。あなたは彼女のことを『太陽』と言いました。太陽の輝きは私が独り占めするのではなく、多くの人を照らしてほしい。それが、私が好きな彼女の姿なのだから」

彼の言葉は彼女が結婚した後も連絡を取り続けていたことに対する私の後ろめたさを払拭してくれた。

そして、今回の件を通して、台湾人の友がもう一人増えたと確信した。

彼とのやりとりが終わった後、私はアカネにあるお願いをした。

「今度から、彼の写真を送る時は顔のモザイクを外してほしい」と。

「友達の友達とはどのようにしたら仲良くなれるのか」という当初の目的など遥か彼方にすっ飛んでしまい、一時はとんでもない修羅場になることも覚悟していたが、終わってみれば、彼と知り合えてとてもよかったと思う。

彼は最後にこんなことを言った。

「私はあなたとアカネが東京で会って、一緒に散歩や食事をした話を聞いてとても羨ましいと思いました。今度は私も一緒に行くから三人でやりましょう」

知り合いの女性が結婚した後も連絡を続けるだけでなく、その夫も交えて三人で仲良くするなど、常識的に考えるとありえない光景だが、彼らとなら、笑ってそんなことができる日が訪れそうな気がする。

・今日の結論

ネットで知り合った既婚女性から夫を紹介されたら、友達になれることもある。

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