派遣社員の労働者代表って何を協議するの?

今日は1224日、クリスマス・イブ。

大切な人と一緒に素敵な時間を過ごす日である。

この言葉を聞いたら、心温まる人たちと、冬の寒さがより一層身に染みる人たちの二手に大きく別れるだろう。

たぶん、こんなブログを読んでくれている人は後者が多いだろうから、今日も相変わらず季節感の欠片もない生活臭丸出しの話をしたいと思う。

・何をやりたいのか分からん

先月の終盤から今月の序盤にかけて、派遣会社からこんな連絡がしつこく入ってきた。

「労使協定に基づく労働者代表の信任不信任投票をお願いいたします」

要するに組合の代表を決める選挙に投票しろという連絡なのだが、私は興味がないから、投票を棄権するつもりで無視していた。

だが、催促があまりにもしつこいので嫌々投票した。

労働環境を改善するための組合活動自体は否定しないけど、「派遣会社の労働組合って一体何を協議しているの!?」と疑問に思う。

私がそう感じる理由は、彼らの活動内容が一切見えてこないから。

冒頭で触れた派遣会社から投票を依頼されたページも、まるで選挙の投票所のように候補者の名前が列挙されているが、そこに書かれているのは、「派遣社員としての就労年数」と、「組合員としての経験年数」のみで、組合活動の実績は全く記述されていない。

それどころか、活動理念や、待遇改善等の目指している方向性すら書かれていない。

こんないい加減な情報だけで信任も不信任も決められるはずがない。

私は長らく派遣社員として働いているが、「大きく変わった」と感じたのは、2020年に始まった、正社員と派遣社員との間の不合理な待遇の格差をなくすための「同一労働同一賃金」制度である。

時給や待遇が大きく変わったわけではないが、これにより、大手の派遣会社であれば、原則として交通費が支給されるようになった。

それ自体はとっても良いことなのが、これはお上(政府)からの施しであり、「これを実現するために、労働組合が血の滲むような苦労を重ねて、ようやく実現できた」という話は一切聞いていない。

「労働者代表」という看板を掲げている方は、このような権利を勝ち取るような活動をされているんでしょうか?

・派遣社員が一丸となって主張できること

そもそも、派遣社員は同じ会社に就労しているとはいえ、就業先(派遣先)が違い、利害も全く異なるため、組合活動なんて出来るのだろうか?

たとえば、この時期に世間を賑わせているのが、ボーナス(賞与)の支給についてである。

怠けている正社員が当然のような顔で数ヶ月分の月収に値するボーナスを手にしている一方で、派遣社員はどんなに頑張っても貰えない。

そのような不合理な格差に憤りを感じて、「派遣社員にもボーナスの支給を!!」と主張する人の気持ちは分かるし、そのための改善を目指す組合活動も否定しない。

だが、もし、自分の職場でそれが実現したとして、私が喜ぶかと聞かれたら、それは違う。

当然だが、ボーナスが支給されるということは、仕事振りを徹底的に査定されることになる。(中には前述の正社員のように、仕事の出来にかかわらずに決まった額を貰うことが当然だと思っているツラの皮の厚い人間もいるが…)

営業や販売職のように成果が数字に表れやすい仕事であれば、ボーナスにつながる上司の評価にも納得できるかもしれないが、一般事務のような仕事では、結局、残業時間や契約外の頼まれ仕事を受け入れることで、株を上げざるを得なくなると思う。

それは非正規で働くメリットが限りなく消滅してしまうのではないか?

私は全く逆に、ボーナスなど要らんから、責任のある仕事を派遣へ丸投げしたり、ミスを犯した際に始末書を書かせることを禁止し、朝礼やラジオ体操の参加免除を要求することが、派遣社員としての労働待遇の改善につながると思う。

正社員の組合であれば、職種が違っても、基本給を上げたり、各種手当を充実させて、生活給を勝ち取るという共通の目的によって団結できるが、派遣社員は派遣先も違うし、働く目的も様々なので、代表を通して、会社と交渉しようとしても、一筋縄に話がまとまらないだろう。

もちろん、派遣社員ならでは団結出来ることもある。

たとえば、派遣先による理不尽な差別に対する抗議である。

私自身が実際に経験したことがないため、何とも言えないが、世の中には、「派遣社員と自社の間には雇用関係が無い」ということで、社員割引で提供されている食事や自動販売機での購入や、無料のドリンクサーバー、冷蔵庫の使用を禁止している破廉恥な企業もあるという。

そのような「派遣社員の敵」と呼べる差別企業の情報を事前にしっかりと公表することを義務付けるとか。

派遣社員に対してだけでなく、世間にも公表させる形で。

そんなことをされたら派遣先はいい気はしないかもしれないが、バレされて困るのなら、最初からしなければいいだけである。

情報公開に限らず、そんな幼稚なヘリクツを展開するのであれば、電話対応のような社外の人物とやり取りする際は、同じように「○○会社(派遣先)の△△(名前)です」と名乗らせないように要求したり、他の派遣会社の組合とも連携して、労働者の派遣を引き上げるなど、組合活動を通して対抗しなければならない。

また、全く逆に、待遇面では差別するクセに「派遣社員にも正社員と同様に活躍してほしい!!」とほざく派遣先もある。

そういった厚かましい会社についても、同様に事前の情報公開を求める必要がある。

私自身はそんな会社で働くことにヘドが出るが、人によっては「派遣でも、正社員と同じように輝ける!!」と喜ぶ人もいるだろうから、情報公開自体はすべての派遣社員にとってメリットがあると言える。

・組合が守ってくれたら…

私は派遣社員として働いていた時に、仕事内容や労働環境の不満から「契約更新しない(=退職する)」という手段に出たことが何度もあった。

そういった時は、大体、派遣会社にその不満を述べる。

中にはこのような妥協案を示した会社もあったものの、大半は派遣先が一切苦情を聞き入れず改善する意思がないことから、交渉決裂で退職に至る。

そんな時は毎回、こんなことを思う。

「派遣社員は組合が守ってくれないから、失業のリスクを背負って、『契約を更新しない』という手段で対抗するしかないよなあ~」

こうすることで、単純に私自身が泥船から逃げ出すことが出来るのだが、同時にそのようなことが続けば、派遣先も考え直して、次に雇われる人は少しはマシな境遇になることだってある。

世の中を変えるには、こうしたリスクを取った行動をしていくしかないのだが、もし、そのような境遇を訴えた時に、一緒に闘ってくれる組合があればと思うことは今でもある。

派遣会社の組合にも、そのような存在になってもらいたいものである。

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