ロシアがウクライナに侵攻してからおよそ1ヶ月が経った。
戦場となっているウクライナの様子は、日々ニュースで見聞きするが、ロシアの人々も各国からの経済制裁や外資系企業の撤退によって、これまでの生活が一変している。
ちなみに、私は昨年の求職活動中に、派遣会社からロシアの物流会社での仕事を紹介されたことがある。
結局、採用には至らなかったものの、「もし、あの会社で働いていたら今頃どうなっていたのだろうか?」と今でも思っている。
・ロシアで暮らす人々の生活
私にはウクライナ人やウクライナ在住の知り合いがいないため、現地の人から直に様子を聞くことはできない。
一方で、ロシア人とはこれまでにも複数人とやり取りした経験がある。
ロシアがウクライナに侵攻した2022年の2月までの半年以内に連絡を取った人物が5人にいる。
彼らの暮らしは今どうなったのだろうか?
私はいくつものメディアに目を通しているわけではないが、冒頭でも触れた通り、通貨であるルーブルの暴落や、ユニクロに代表されるロシアに展開している日本企業の動向といった経済問題の報道はあっても、ロシアで暮らす一般の人々に関するものはあまり見聞きしない。
というわけで、彼らに連絡を取って、戦争が暮らしにどのような影響を与えたのかを聞いてみることにした。
返信があったのは5人中、4人。
性別は男性が3人と女性が1人、年齢は20代から50代。
職業も学生、美容師、エンジニア、管理職と様々である。
皆、声を揃えて言っていたのが、生活物資の供給不足への懸念である。
各国がロシアとの貿易を規制したことで、生活用品が品不足になることが予想され、多くの人が売り切れる前に買い占めようとする。
その結果、ますます商品が不足するという悪循環である。
モスクワから離れた郊外に住んでいる人の話によると、超大型のスーパーマーケットに買い物へ出かけたら、缶詰やカップ麺などの長期保存製品が完売していて驚いたという。
輸出入の規制は食品以外にも大きな影響を与えている。
美容店を営んでいる人の話によると、それまで使用していた整髪料が入手できなくなり、商売に大きく支障が出ているらしい。
その他にも、経済面の影響としてはこのようなものがあった。
管理職に就いている人の話では、彼に給料の前借を頼む部下が一人や二人ではないという。
彼らはルーブルの価値が下落することを恐れて、価値がなくなる前に、ドルやユーロのような他国の通貨に両替したいらしい。
彼らは給料の前借ができたとしても、ルーブルを他の通貨に両替できるのかは疑問だが…
・プーチンはクレイジーな人殺し
ロシアは武力行使へと突き進み、国民に苦しい生活を強いてでも戦争をすることを選んだようだが、そのような状況でも、政権支持率は(なぜか)71%にも及ぶらしい。
だが、私と話をしているロシア人は、ウクライナへの侵攻はおろか、プーチン大統領を支持している人など一人もいない。
ある人は
「プーチンは人殺しだ!」
「勝手に戦争を始めて、自分は核シェルターに逃げ込んでいる卑怯者」
と発言し、露骨に政権への嫌悪感を表明した。
また、別の人物も同様に、大統領の所業を批判している。
「プーチンはいつも『他国でロシア人の人権が踏みにじられている』という被害妄想に駆られ、『ロシア人を救済するため!』と耳障りがいい言葉ばかり並べて、他国を侵略しようとしているクレイジーな奴だ」
「2014年にクリミアを併合しようとした時も今と同じようなことを言っていた」
その他にも、彼の数少ない功績である経済政策ついても厳しいことを言われている。
「彼は事あるごとに、自分の経済政策や、エリツィン政権よりも前の時代の生活を引き合いに出して、『自分がいなければロシア国民は以前のような貧しい暮らしになる』と脅しているけど、その功績は20年前の話だ」
「中国は今でも成長を続けているけど、ロシアはここ10年はほとんど成長していない」
「にもかかわらず、未だに自分がロシア国民の救世主のように信じて、暗殺、粛清、言論統制、恣意的な法改正を繰り返す歴史的な犯罪者だ」
このように、彼らは皆、プーチン政権を批判している。
今の彼は他国からだけでなく、少なくない自国民からも脅威とみなされているようである。
・たとえ愚かな指導者でも
独裁者の横暴と他国からの経済制裁によって多大な被害を受けているロシアの人々だが、彼らは口を揃えてこんなことを言っていた。
「自分たちよりも、戦争の渦中にいるウクライナの人たちの方がつらい思いをしている」
彼らは皆、苦しい生活を強いられながらも、戦火に晒されているウクライナ人のことを心配している慈悲深くて忍耐強い人たちである。
このブログは今でこそ私の身近な話題を中心にしているが、元々は国際交流の紹介を目的に始めたものである。
早く戦争が終わり、ウクライナに一刻も早く平和が訪れることは願うのはもちろんのことだが、愚かな指導者が侵略行為に手を染めたことは事実であっても、その国の民が同じように冷血で執念深い殺人鬼ではないことを読者の皆様に知ってもらえたら幸いである。