英語では相手の名前を入れるタイミングが分からない

先日、中国人の知り合いからこんなお願いをされた。

「日本語の勉強をしたいから、日本語でメッセージを書いてほしい」

彼とは1ヶ月前にペンパルサイトで知り合い、これまでは英語でやり取りをしていた。

彼の要望を快諾した私は、日本語で文章を書いて、その後にこれまで通り、英語を書くことにした。

・名前は何だっけ…

彼に日本語で送った最初のメッセージは「週末何をしたか?」という質問への返事であり、文末にはこんな質問を添えるつもりだった。

「あなたはどうでしたか?」

英語で書いていた時は「How about you?」である。

この表現はこれまでに何度も使っていた。

これを直訳すると先の「あなたはどうでしたか?」となるわけだが、どうも違和感がある。

少なくとも、私はこれまで、手紙、メール、日常会話のすべてにおいて、このような言い方をした経験はない。

ここは相手の名前を付けて、「○○さんはどうでしたか?」とすべきだろう。

え~と、彼の名前は・・・

・・・分からない。

プロフィールの名前は地名と思われるものと生まれた年を組み合わせたものであり、本名やニックネームではないことは確実である。

彼から最初に送られたメールには「I’m ○○」と書いてあったかもしれないが、そのサイトではメッセージが1ヶ月で消滅するため、最初のメールはすでに消えていた。

結局その時は文末に「あなたの名前は日本語でどのように書けばいいですか?」と付け加えることで、上手く聞き出すことに成功したが、この機を逃したら、彼の名前は一生分からないままだったかもしれない。

この出来事があった後、私は少し考え込んだ。

「これまで、彼とは何通もメッセージのやり取りをしていたのに、何で彼の名前を知らなかったのだろう…」

実は、相手の名前を知らないままやり取りをすることは初めてではない。

以前、2年以上の長期に渡って、連絡を取り合っていたスペイン人の話をしたことがある。

彼とは最初の1年間英語でやり取りしていた後に日本語へと移行した。

私が彼の名前を初めて呼んだのは、日本語で文章を書いた時だったので、最初の1年間は彼の名前を全く呼ばなかった。

幸い、彼はユーザー名をカタカナで書いており、その名前と「スペイン」というワードの組み合わせで検索したらスペインの有名人の名前が出てきたため、本名であることは容易に想像できた。

初めて彼の名前を呼んだ時も、一瞬「何でこれまで彼の名前を一度も書かなかったのだろう…」と不思議に思った。

・英語の文章では相手の名前を使わない理由

当時はそのことを特に気に留めなかったが、今回の件もあり、改めて、私が英語の文章では相手の名前を呼ばなかった理由について考えてみることにした。

前回のスペイン人とやり取りをした時も、今回の中国人の時も、英語でやり取りをしていた時に名前を呼ばなかった理由は単純に彼らの名前を(当時は)知らなかったからである。

驚くほど拍子抜けする理由だが、それでは、なぜ、名前も知らない相手とやり取りを続けることができたのか?

結論から言えば、使う機会がなく、知る必要もなかったためである。

以前、「日本語では相手との力関係によって一人称や二人称を使い分ける」という話をした。

だが、英語の二人称は「you」しかないため、相手との間柄を意識せずに、気軽に「you」を使うことができる。

これは直接名前を呼びかける時だけでなく、「以前、○○さんに話した~」「○○さんの考えでは~」というような所有格や目的格で「you」や「yours」を使う時も同じである。

すると、わざわざ相手の名前で呼ぶ必要がなくなる。

逆に、相手の名前の呼び方によって力関係が表れる日本語という言語に慣れている私にとっては、名前を呼ぶことの方が、「この人は呼び捨てで大丈夫か、それとも『Mr.(またはMrs.)』を付けるべきかどうか」と複雑に考えてしまう。

だったら、一貫して代名詞の「you」と呼ぶ方が気楽である。

というか、英語で文章を書く時にわざわざ相手の名前を書かなければならないことなどあるのだろうか?

実はこれまで、英語の文章の中で一切相手の名前を呼ばなかったのは私だけではない。

たとえば、この記事で登場したアメリカ人や、このブログで度々登場するフランス人(最新の登場記事はこちら)とは3年以上やり取りが続いているが、彼らから名前を呼ばれたことは一度もない。

先ほど、私は名前を呼ばない原因として日本語という母国語を挙げたが、この説は彼らに対しては間違いなく当てはまらない。

だとしたら、相手の名前を呼ぶ必要がない理由は、英語そのものにあると考える方が妥当である。

・会話や手紙では名前を呼んだことがあるが…

「英語では相手の名前を呼ばなくてもコミュニケーションが可能なのかもしれない」

これが、今回私が言いたかったことである。

ただし、この考え方はあくまでもペンパルサイトやLIINEでメッセージを送る時の話である。

私はこれまで、留学や仕事で英語を話す機会があったが、その時は日本語で「すいません、○○さん」と呼ぶ感覚で、「Excuse me. Mr.Mrs.)○○」と名前を呼んでいたし、業務連絡のメールを送る時は文頭に「Hi, (またはGood morningなど)○○!」と書いていた。

だが、そんな時であっても、会話や文章の中で相手の名前を呼んでいた記憶がない。

前段でも紹介したように、「あなたはどうですか?」「○○さんの考えでは~」といった表現はすべて「you」「your」で事足りる。

もしかして、英語では話の中で相手の名前を呼ぶ習慣がないのだろうか?

試しに、手元にある英文が多数収録されている本を読んだが、会話形式の文章でも、記述式の文章でもそのような使い方は見られなかった。

ちなみに、私は英語以外の外国語に精通しているわけではないので、もしかしたら、会話の中で相手の名前を呼ぶ日本語の方が世界的にはイレギュラーなのかもしれない。

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