留学で人生を変えることができなくてもいい

・留学をすれば人生が変わる!?

前回まで2度に渡って、私がカナダの宿で出会った外国人の話をした。

彼らはワーキングホリデーのためにカナダへ滞在しており、その経験によって人生を好転させることができた。

彼らのように「海外へ出て人生が変わった」という人は少なからずいる。

結果として、そうなるのではなく、留学は「人生をかけた大勝負である」とみなしている人もいる。

そのような高い期待をしている人が上手くいかなかった時は大きく挫折して「留学は失敗だった」と考えるのかもしれない。

ただし、私はワーキングホリデーを含む海外留学で人生を大きく変える必要はないと思っている。

たとえ、現地で日本人とつるんでも、英語が全く上達せずに帰国後も渡航前と同じような仕事に就くことになっても、現地で楽しい思い出をつくることができれば、その経験がその後の人生でも生きる糧になることはある。

それだけでも大きな意味はある。

・帰国後はギラギラした仕事に就かなければいけない?

留学に人生を変えるほどの特別な力があると信じている人は「帰国後のキャリアを見据えたビジョンを持たなければいけない!!」と考えていることが少なくない。

もちろん、帰国後のことを考えるのは大事なことかもしれないが、彼らの言う「帰国後のビジョン」とは「英語を活かして、外国人と対等なビジネスパートナーとして渡り歩くようなギラギラした仕事に就くこと」の意味だったりする。

なぜ、たかだか1年間(場合によっては数年)海外で暮らしただけで、帰国後は特別な仕事に就かないといけないのだろうか?

そもそも、「キャリアが~」「ビジョンが~」などと意識高い系、もしくは一流企業で働きたいと願っている人は1年間のワーキングホリデーなど行かないと思うのだが。

そんなことをしたら、「まともな(?)」会社から門前払いされることは目に見えているし。

そもそも、

仕事がつらいから海外でリフレッシュしたい

実際に行く

帰国して普通に働く

なぜ、このようなありふれたライフコースを歩むことを想像できないのだろうか?

実際に私は食品の小売業で働いていた時に、ワーキングホリデーのためオーストラリアに2年間滞在していた人と一緒に働いていたことがある。

彼は大学を卒業後、3年間営業の仕事をしていたが、仕事が精神的につらくて退社していた。

その後、オーストラリアで2年間、農業や清掃、皿洗いの仕事をやっていた。

そして、帰国後は渡航前の仕事とも、ワーキングホリデーで経験した仕事とも全く関係ない職種で働くことになった。

彼は以前の仕事に戻りたいとも、海外で経験したことを活かせる仕事に就きたいとも思っておらず、単に知り合いの紹介で私と同じ職場で働いていた。

そこには後悔の念も悲壮感も全く感じられなかった。

ワーキングホリデーから帰ってきた日本人の大半は彼と同じような道を歩んでいるのではないだろうか?

・海外では日本人と付き合ってはいけない?

私が「帰国後はギラギラした仕事に就かなければいけない」と同じくらい意味不明だと思うのは「現地で日本人と付き合ってはいけない」と考えている人たちである。

彼らは

「日本人と付き合っていても日本語しか話さないため、英語が全く上達しない!!」

「せっかく外国にいるのに、それはあまりにももったいない!!」

と主張する。

いや、そこまで本気で海外で勉強をするつもりなら、ワーキングホリデーなんてやらずに、現地の大学や専門学校に入学するし…

本人がそう思うのは自由だが、そのようにアドバイスをする人も多くいる。

全く持って余計なお世話である。

ワーキングホリデーとは文字通り、働きながら休暇を過ごすためのビザである。

一体なぜ、1年間海外へ休暇に出かけることに大義が必要なのだろうか?

別に何の目的もなく現地でダラダラと過ごそうが、友達とバカなことをやって過ごそうが、本人が楽しいと思うのならそれでいいはずである。

私はワーキングホリデーに行ったことはないが、失業中に1ヶ月ほどフィリピンへ語学留学に行ったことはある。

その学校では平日の週5日、毎日6時間の個人レッスンを受けていた。

授業内容は小学校の国語の時間のように短めの物語を音読して、その話に関連した話題を教師と話す会話形式の授業、テキストを見ずに教師の発言を一言一句繰り返す授業、発音の矯正の授業を2時間ずつ行っていた。

私は1ヶ月という短い滞在期間だったためか、正直この授業で英会話の能力が大きく向上したとは思えなかった。

その学校で半年ほど学んでいたものの、全くと言っていいほど英語が上達しなかったという人もいたため、仮に私が3ヶ月、半年と授業を受け続けていたら違う結果になっていたかと言われるとそうでもない。

それでも私はあの時、フィリピンへ行ってよかったと思っている。

生徒の大半は日本人であったため、学校の中でさえ英語よりも日本語を話すことが多かったが、みんないい人たちばかりで、「絶対に私に日本語で話しかけないで!!」と拒絶する人など一人もいなかった。

私が授業を開始した日の夜は私の歓迎会を開くために、レストランへ連れて行ってくれた。

休日は一緒にプールや遊園地に出かけた。

初めてダーツやビリヤードなどの遊びを知った。

日本にいた時では絶対に出会えないような人たちと出会えた。(留学先で出会った人たちを特集した記事はこちら

その体験ができただけでも十分満足だった。

・留学は魔法ではない

留学とは今までの人生を一変させるような魔法であるかのように考える人もいるが、そんな力はないし、変える必要もない。

日本での生活に疲れてリフレッシュのために出かけて、国内ではできない経験をたくさん積む。

それで十分ではないか?

「こんなはずじゃなかった!!」とか「留学なんて無駄だった!!」などと後悔している人は、たとえ国内に留まっていたとしても、自分を救ってくれる大きな存在を求めて、そうならない現実に苦しむだけではないだろうか?

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