どうしても日本で働きたい人の偽装留学

先日、マレーシアの高校生に「将来の夢は何ですか?」と聞いたら、

「nihonde eigonosensei (わたしは日本で英語教師になりたい。)」

と言われた。

またか・・・

実は、このようなことを言う人は彼女で10人目くらいになる。

一度、中国人に「どうしてもこの会社で働きたいから情報が欲しい。」と言われて、その会社の採用情報やインターンについて調べたことがあったが、大多数の人は漠然と日本で働きたいと思っていた。特に英語教師や通訳などの語学関係が多い。

日本で働くことが、そんなに魅力的なのかなあ・・・

そんな彼らが手っ取り早く夢(?)をかなえる方法が語学留学である。

彼らが日本で働きたいと思う目的が、夢をかなえるためなのか、金を稼ぐためなのかは分からないが、語学学校に入って学生ビザを取得すれば、週28時間以内の就労が合法的に可能となる。

もちろん、私は彼らに面と向かって、こんな方法を勧めたりはしない。

ただ、最近は(と言っても、もう何年も前からだが)、就労目的で留学する「偽装留学生」が増えてきている。

・出稼ぎ目的の外国人労働者たち

ルポ ニッポン絶望工場 

出井康博(著)講談社

少し前に、この本を読んでみた。

最近は都会のコンビニで買い物をしていると、外国人の店員を目にする機会が増えた。日本で、低賃金で劣悪な環境の仕事に従事する外国人と聞けば、真っ先に技能実習生を思い浮かべる。

コンビニで働いている外国人を見ると、悪い噂の絶えない実習生ではないかと思ってしまうが、コンビニでは実習生の受け入れは認められていない。

彼らの多くは日本の学校に通っている留学生のようだ。

当たり前だが、留学生は勉強が目的で日本に来ている。

だが、中には就労目的で来日して、ビザを取得するために、留学生という形を装い、実際はアルバイト中心の生活を送っている学生(?)もいるらしい

出井氏はこのような留学生を「偽装留学生」と呼んでいる。

実習生問題では、月に200時間以上働いても、手取りは3万というような想像を絶する低賃金の問題がよく報道される。

それに対して、(偽装)留学生は日本の労働法が適用されるため、最低賃金は支払われる。これは大きな違いだ。

それから、実習生とは違い職種の制限がない。

留学生は実習生の受け入れが出来ないコンビニや飲食店でも就労できる。

これらの産業は労働者不足に悩んでいるため、最低賃金でも働いてくれる留学生は貴重な戦力になっている。

・三者の利害の一致

外国人:「日本で仕事がしたい!!」

企業:「低賃金で働いてくれる労働者が欲しい!!」

語学学校:「授業料を払ってくれる学生が欲しい!!」

この三者の利害が一致して、就労目的の「偽装留学生」が生まれる。

(偽装)留学生は自由に就労できて、少なくとも最低賃金は支払われることから、実習生よりも恵まれているように見える。

ただし、彼らは日本の語学学校に入学するために100万を超える莫大な費用を出発前に収める必要がある。

貧しい国の出身者にそんな大金は簡単に用意できるわけがなく、大半は借金で賄っている。

それから、「日本でアルバイトをすれば、簡単に毎月20万稼げるので、学費もすぐに返済できますよ。」と嘘を吹き込む現地の悪徳ブローカーにも多額の手数料を取られる。

それに加えて、日本での生活費も必要である。

だから、週28時間の就労制限を超えて違法に働くことも珍しくない。

特に時給の単価が高い夜勤は大きな魅力となる。

そして、バイト先は学生が就労時間の制限を超えて働いているという弱みに付け込んで、人手が足りない時は無理をしてでも長時間働かせようとする。(場合によっては無賃で)

・君は仕事と勉強のどっちが大事なのかね?

そんな、仕事中心(と言えばカッコいいが、実際は「アルバイト中心」)の生活をしていると、当然、勉強どころではなくなり、学校は仕事の合間の睡眠の場所となる。

悪質な学校は学費さえ払ってくれれば、学生が授業中に真面目に勉強していようが、寝ていようが無関心らしい。

学生の本業は勉強であるはずだが、偽装留学生の本業はアルバイトである。

ブラック企業のアルバイト版で「ブラックバイト」というものがある。

人件費の削減で正社員を削減すると、その業務はアルバイトが担うことになる。

だから、「学生だろうが関係ない!!給料をもらっている以上はプロだ!!甘えるな!!責任感を持て!!」と言って学生を追いつめるブラックバイトの管理者(=ブラックマネージャー?)にしてみれば、

「君は仕事と勉強のどっちが大事なのかね?」

と聞いて

「仕事です!!」 (もちろん本気で言っている。)

と即答する留学生は間違いなく魅力的な人材だ。

出稼ぎ労働者は短期就労で金を稼いだら、すぐに帰るつもりでいる。

日本に永住するつもりはない。

だから語学学校の在籍期限である2年の間に金を稼いで、すぐに帰ろうとする。

しかし、2年間のアルバイトでは貯金どころか借金の完済もできない。そのため、日本でアルバイトを続けるために、大学や専門学校に進学して、その学費を返すために、アルバイトで働き続けるという抜け出せない蟻地獄状態になっていく。

少子化で学生の確保に苦しんでいる大学や専門学校は、就労目的であっても学費を払ってくれる学生は大切なお客様である。

ちなみに、出井氏は、偽装留学生問題が実習生問題に比べて認知度が低い理由は、新聞社が留学生を使うことによって新聞配達制度を維持しているため、全く報道していないからだと主張している。

語学留学を隠れ蓑にした就労は、手軽さという点では魅力的だが、このように本人が不幸になることが目に見えているので、決してお勧めできない。