英単語を暗記しようとしたが、なかなか思い通りにいかない。
そんな時、誰しもこんなことを考えたことがあると思う。
分からない単語が出てきたら…
・すぐに答えを見てもいいから、短期間で何度も目を通すべきか?
・すぐには思い出せずとも、記憶をふり絞って思い出すべきか?
前者を重視する人は
「人間は数回しか目にしたことがないものを記憶することなどできないのだから、そんなものを思い出そうとしても時間の無駄」
「すぐに答えを見てもいいから、その分、回数をこなして覚えればいい」
後者が正しいと思う人は
「単語を覚えられるかどうかは頭に入れた回数ではなく、引き出した回数できまる」
「分からなければすぐに答えを見てしまえば、何回目を通しても頭の中には定着しない」
と主張する。
果たして、これらはどちらが正しいのだろうか?
何だか昨年書いた仕事で分からないことがある時はすぐに聞くべきか、先ずは自分で調べるべきか?という記事のことを思い出した。
話を戻すが、これは専門家でも意見が割れている。
たとえば、私が英検準1級の単語を覚える際に大きなヒントを与えてくれた本、1分間英単語1600 石井 貴士:学習参考書 | KADOKAWA の著者である石井貴士氏は前者のような「すぐに見て何度も繰り返すこと」を主張している。
一方で、以前おすすめの英語勉強本で紹介した『イラストだから覚えられる 会話で必ず使う英単語1100』 | CrossMedia Language Incの著者である石井辰巳氏は後者の「思い出すことに重点を置く」ことを推奨している。
今日は私の経験を基に、どちらが正しいのかについて考えてみたい。
・すぐに答えを見る方が有効なケース
最初に言いたいのは、英語に限ったことではないが、初めて知ったことを一回で完璧に記憶することは難しい。
そもそも、見聞きすることと理解することは全く違う。
あなたは一度目を通して面白いと思った本を友人に勧めてみて、「どんな本なの?」と説明を求められ、説明に困った経験はないだろうか?
これは本の中で登場するいくつかのエピソードは記憶していても、全体の流れを理解していないことで生じる。
英単語を覚える時も同じようなものである。
いくつかの単語は一度目にしただけで覚えることができるものの、それは単語帳全体のごく一部に過ぎない。
大半のものは一度目を通しても、すぐに忘れるものである。
英単語のような文字だけの情報で意味を判断しなければならない時はなおさらである。
というわけで、最初の内は
・prominent→え~と、何だけ……そうだ「卓越した」だ!!
・supreme→え~と、……「最高の」だ!!
と時間をかけて思い出そうとするのではなく
・prominent(すぐに日本語を見る)→「卓越した」
・supreme(すぐに日本語を見る)→「最高の」
とすぐに答えを見て全体の単語に目を通す回数を増やす方が賢明である。
・思い出した方がいいケース
それでは、同じ単語に何十回と目を通した後は、時間をかけてひとつひとつ思い出す勉強法にシフトすべきなのか?
これに関しては一概に「こうだ」とは言えない。
先ず、明らかにしておきたいのは、日本語を見て英語を思い出す場合は、このように思い出す方が圧倒的に頭に残りやすいということ。
さすがに1度で思い出すことはできないかもしれないが、3,4回ほど目を通せば、闇雲に何十回と数をこなして刷り込むよりも
・授業をサボる→え~と、何だけ……そうだ「skip a class」だ!!
・電子レンジ→何だけ……そうだ「microwave」だ!!
と時間をかけて思い出す方が、すぐに定着する。
だが、(他の人はどうだか知らないが)私の場合は、英語の綴りを見てすぐに思い出せない単語は、たとえ何十回と目を通したものであっても、全く思い出せないということが珍しくない。
前段ではprominentやsupremeといった単語を記憶を呼び起こして「卓越した」や「最高の」と思い出すようなたとえ話をしたが、私の経験上、英語→日本語の過程で、分からない単語の意味を時間を時間をかけて思い出せた試しが一度もない。
これは普段見慣れない単語に限った話ではない。
熟語やフレーズのように、決して難しくはないはずの単語の組み合わせであっても、全然思い出せない。
それでは、英語→日本語の場合、「思い出すというプロセスは無意味なのか?」と言われたらそうでもない。
繰り返し英単語に目を通していると、仕事中やトイレの中など意図しない場面でその単語が頭に思い浮かぶことがある。
そのような場面で出てくる単語はほとんどの場合、日本語の意味が分からないが、場所が場所なだけに、すぐに辞書や単語帳を取り出して意味を確認することができず、しばらくは自分の頭で思い出そうとする。
その場で思い出せることがベストなのかもしれないが、たとえそれができなくとも、そのようにしてしばらく考え続けた単語は、後で意味を確認すると一気に記憶に定着する。
・結論
私が経験したことを簡単にまとめてみると
・英語→日本語で覚える場合は問答無用ですぐに見る方が効率的
・逆に日本語→英語の場合は時間をかけて思い出した方が少ない回数で定着する
ということになる。
すぐに答えを見るべきか、それとも自分の頭で思い出すべきか?
この2つは真逆のことを言っているようだが、思い返してみると、石井貴士氏の本では試験勉強のために大量の単語を覚える必要がある読者を想定しており、石井辰巳氏の本は日常生活で必要な単語を覚えなければならない読者向けである。
そのことを踏まえると、お二人とも立場に沿った主張をしていると言える。