
かなり前になるが、「家庭料理は手作りじゃないとダメなのか?」という記事を書いたことがある。
賛否は別にして、その記事で取り上げたような
「時間と手間をかけて手作りの料理を家族に食べさせることこそが愛情だ!!」
「神聖な食事を出来合いの総菜や冷凍食品で済ませようなど言語道断!!」
という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。
ところが、世の中には全く逆に、「手作りの料理なんて絶対に食べたくない!!」と言って、コンビニ弁当、カップ麺、冷凍食品など完成された料理しか口にしない人たちもいる。
・手作りよりも出来合いの料理の方が勝っている点

先ずは一般論として、手作りよりも、出来合いの食品の方が勝っていると思われる点を取り上げたい。
・①:品質が一定
家庭料理は、その日の調理者の体調や他の事情によって味付けが変わることも珍しくない。
一方、コンビニ弁当や冷凍食品、レトルト食品は、どこの店舗で買っても基本的に同じ味が再現される。
「いつもの味」を求める人にとって、この安定性は大きな魅力である。
また、近年の食品メーカーの技術力は目覚ましく向上している。
急速冷凍技術や真空包装、品質管理の進歩により、家庭では再現が難しいレベルの味や食感を手軽に楽しめる商品も珍しくない。
特に冷凍チャーハンやパスタ、ハンバーグなどは、専門店にも劣らない品質だと評価する人もいる。
・②:衛生管理がしっかりしている
もちろん工場によって管理体制には差があり、「工場だから絶対に安心」と言い切ることはできない。
しかし、多くの食品工場では、温度管理や異物混入対策、製造工程の記録など、家庭では実施が難しいレベルの管理が行われている。
そのため、一定以上の品質を維持しやすいという利点はある。
・③:時間を節約できる
料理は、買い物・下ごしらえ・調理・後片付けまで含めると、想像以上に多くの時間が必要になる。
その時間を仕事や趣味、家族との団らん、あるいは休息に充てられるのであれば、それも十分価値のある選択だろう。
つまり、出来合いの料理は「料理をしない人が仕方なく利用するもの」ではない。
現代の技術や社会環境を踏まえれば、時間・品質・利便性といった複数の価値を提供する、合理的な選択肢の一つなのである。
ざっと挙げたが、以上が手料理よりも出来合いの食品が勝っている点となる。
ところが、こうした合意的な理由をすっ飛ばして、「とにかく手料理は嫌だ!!」と考える人がいるのだ。
・手作り信仰への反発

これは私の元同僚の話である。
彼は学生時代、母親が作った手作り料理を拒否して、家族が手料理を食べる中、自分だけハンバーガーやカップ麺を好んで食べていたという。
その理由は、「そうした食品が母の手料理よりもおいしいから」ではない。
彼は私が前述の記事で取り上げた
「手作りの料理こそ愛情」
「家族全員で囲む食卓こそ幸せ」
という価値観のゴリ押しに強い反発を覚えていたとのこと。
そこで、「ジャンクフード」や「手抜き料理」とみなされ、反・手料理信仰のシンボル的存在であるハンバーガーやカップ麺を食べることで、自身の立場を表したかったのだという。
彼が言う「学生時代」というのが具体的に何歳の頃なのかは分からないが、その年頃の子は、自身を押さえつけるものに反発したくなるものだし、私も手料理信仰を押し付けられたら良い気はしないから、彼の気持ちは理解できなくもない。
それでも、彼の話を聞くと「八つ当たりする相手が違うのではないでしょうか?」と言いたくなったが…(笑)
彼の話も「手料理なんか絶対に食べたくない」人の意見であるだが、これはあくまでも一時的な反抗期の一種と言える。
もっと深刻な理由で、手料理を拒否する人もいる。
・手料理を見ていると想像してしまうもの

これも私の元同僚から聞いた話になる。
今から10年ほど前になるが、当時の私は地元のスーパーで働いていた。
そこで、年配のパート女性から、彼女の夫は手作りの料理を食べたがらないという話を聞いた。
彼は彼女の手料理だけでなく、刺身やお弁当などスーパーの総菜も一切食べず、好んで食べるのは、コンビニ弁当、冷凍食品など工場で製造された食品だけだという。
その理由は「手料理やスーパーの総菜は、誰かが作っている様子を想像してしまい、気持ち悪くて食べられないから」らしい。
一方で、工場なら、人の手を介さず機械で自動的に作られているイメージがあり、安心できるという。
だが、彼女は以前、食品工場で働いていた経験があり、そのイメージは幻想だと何度も否定した。
かくいう私も、その話を聞く以前に食品工場で働いた経験があった。
食品工場というと、多くの人は最新の機械が自動で食品を作っている様子を思い浮かべるかもしれない。
しかし、実際には意外と人の手による作業が多い。
商品の整列、検品、盛り付け、包装など、多くの工程で人が関わっている。
もちろん衛生管理は行われているが、私が働いていた工場では、監査が近づくと急に清掃やルールの徹底が始まり、「毎日やっている」という体裁を整えるような場面も見た。
しかも、マスクや手袋をしているとはいえ、作業中にペラペラとお喋りをしたり、本来手袋を取り換えなくてはならない場面でも、そのまま作業をしている場面も多々あった。
だから、彼女が言っていることには、心から共感した(笑)
ところが、彼は彼女の話に聞く耳を持たず、考えを改める気もないらしい。
きっと、
「その工場だけ例外だった」
「他の工場はもっと衛生管理がしっかりしているはず」
と思っているのだろう。
人間には、自分が信じている考えと一致する情報を受け入れやすく、矛盾する情報を避けたり軽視したりする傾向がある。
重要なのは事実かどうかではなく、「工場で作られた=人ではなく機械が作ったから安心」というイメージだけなのである。
・栄養面以外でも「バランス」が大事

前回取り上げた「絶対に手料理じゃないといけない人」と、今回の主人公である「絶対に手料理なんか食べない人」という二つの正反対の話を通して感じたことがある。
それは、栄養だけでなく、食事に対する考え方にもバランスが必要だということ。
手作りには手作りの良さがある。
一方で、総菜や冷凍食品にも、「時間を節約できる」、「安定した品質が期待できる」、「忙しい日でも無理なく食事ができる」という大きなメリットがある。
現代では、共働き家庭や一人暮らしも増え、毎日すべてを手作りすることが現実的ではない人も多い。
「手作りこそ正義」も、「手作りは絶対に嫌だ」も、極端になれば選択肢を狭め、自分自身を縛ることにもなりかねない。
食事で大切なのは、栄養バランスだけではない。
手作りと市販品、どちらか一方を絶対視するのではなく、それぞれの良さを認め、その時々の状況に応じて上手に取り入れること。
そんな「考え方のバランス」が、本人の健康面だけでなく、周囲との良好な関係を保つために必要なことなのかもしれない。







