大統領選挙でトランプを選ぶアメリカ人をバカに出来ない日本人

先日、行われたアメリカ大統領選挙では、共和党のトランプ候補が、民主党のハリス候補を破り、大統領の座に返り咲いた。

元職の候補者が勝利するのは、クリーブランド大統領以来132年ぶりのことになる。

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・トランプに期待する貧困層

トランプ氏勝利のニュースを聞いて、私が真っ先に思い出したのは、彼が初当選した2016年のことである。

今回は落選した前回の反省があるのか、雇用や物価高対策などの経済政策を全面に打ち出しており、メディアも予想については断言を避けていたが、ヒラリー・クリントン氏に勝利した8年前は、排外的で差別的な発言を繰り返す彼が勝利するなどほとんどの人が予想していなかったのか、「まさか!?」という様子だった。

私も彼の勝利の要因が分からず、当時ペンパルサイトでやり取りしていたアメリカ人の男性に現地の話を聞いてみた。

彼はかつてこの記事に登場したことがある30代の黒人男性で、自身はどちらに投票したかについては明言しなかったが、一般論としてこんな話をした。

かつて、アメリカは多くの人が経済的に豊かな暮らしをしていたが、経済のグローバル化によって、製造業が海外へ工場を移転したり、賃金の安い移民に職を奪われた人が大勢いる。

そんな人たちにとって、排外的で復古的な姿勢で、かつての超大国アメリカの復活を力強く主張する彼の姿は、自身を生活苦から救ってくれる救世主のように映るのだろう。

一見すると正論のようだが、私は疑問が残った。

彼の言う通り、かつてのアメリカ社会であれば、それなりに経済的に恵まれた職に就けたであろう人が、グローバル化の波を受けた現代では、移民や海外の工場に仕事を奪われてしまい、経済面も、自尊心もズタズタになっていたことだろう。

そんな彼らにとって、グローバル化は憎らしい存在であり、声高に反対を叫びたくなることも納得できる。

だが、そんな人たちだって、(自身の職を奪った)安価な労働力によって供給されている製品やサービスを当たり前のように利用しているではないか?

にもかかわらず、どの口が「グローバル化反対!!」等と言えるのであろうか?

そんな幼稚な理屈でトランプを救世主のように崇めるのであれば、その子どもじみた発想には大いに呆れる。

アメリカ人はここまで朽ち果ててしまったのか…

・同レベルの発想の日本人

と嘆きたくなるが、これは決して他所の国の愚民に限った話ではない。

日本は移民を(少なくとも建前としては)受け入れていないため、「反グローバル化」という意見はあまり耳にしない。

だが、20年程前から、「規制緩和が悪い!!」という市場原理悪概論が広く語られるようになった。

曰く、かつての日本社会は年功序列や終身雇用という適切な規制によって、労働者が弱肉強食の市場原理から守られ、誰もが中流階級としての暮らしを謳歌できた。

それが平成の世に、アメリカ型の自由主義経済や、男女平等、小泉竹中路線による規制緩和と派遣労働の導入で破壊された。

今こそ、そうした国際化や行き過ぎた新自由主義と決別して、古き良き日本の伝統を取り戻せ!!

というような、もっともらしいことを言っている。

しかし、そんな彼らも、かつて猛烈な規制の上に成り立っていた商店街や自営業の倒産など見向きもせずに、規制緩和のおかげで郊外に出店でき、大量の非正規労働者を利用することで成り立つ大型ショッピングモールや、チェーン店にズブズブ入り浸っているではないか?

当時の私は地元住まいだったため、彼らの浅ましさはよく知っている(笑)

その身勝手なダブルスタンダードはトランプを熱狂的に支持しつつ、グローバル化の恩恵をちゃっかり受け取るバカなアメリカ人と何一つ変わりはないと言える。

しかも、製造業を核とした物づくりを神聖化して、その技術力こそが自分たちの強みだと思い込んでいる点も日米共通と言える。

この国もトランプ信者を他人事してバカにしている余裕などない。

トランプ氏は前回の大統領選挙で敗れた反省を活かして、経済政策を重視して、なるべく多くの層から票を集めたと言われている。

彼の支持者や日本の同士たちも同様に、トランプ氏と同じく自身の過ちを受け止めて、これからは正しい道を前に進んでもらいたい。

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