入居者が納得する礼金の使い方

毎週日曜日は燃えるゴミを出している。

私が住んでいる地域の回収日は週二回だが、一人暮らしをしている私は週一日で十分だ。

それが数年前から続く習慣だが、昨年の暮れ頃から、ゴミを出す時にある光景が目に入るようになった。

・誰もやりたがらない面倒事

最近、私がゴミを出す時に毎回目にする物。

それはゴミ置き場に不法投棄された家財である。

本棚や布団一式などで、それなりに場所も取っている。

それらのゴミには回収業者による注意書きが貼られていて、不法投棄から数ヶ月経った今でも放置されたままである。

私の推測だが、おそらく持ち主が退去と同時に不要となり、中古市場でも買い手が付かず、処分に困った末、置き去りにしたのだろう。

もしかしたら、違うという可能性もあるが、今回はそのような前提で話をさせてもらう。

持ち主はすでに去っているのだから、分別を促す注意書きなど目にするはずもなく、市の回収業者も不法投棄されたゴミは回収できない。

となると、管理会社が撤去するしかなさそうだが、彼らも契約で動いているため、家主や住民からの苦情がなければ動かないし、そもそも違法行為である不法投棄に対応する義務があるのか疑わしい。

つまり、回収すべき人物はすでに雲隠れし、残りの関係者は誰も回収しようとは思わず、放置される状態が数ヶ月続いているのである。

こんな誰もがやりたがらない仕事を率先してするべきなのは誰だろう?

これは私の意見だが・・・

大家が片付けるべき」

だと思っている。

私は決して「世の中の汚れ仕事は自分以外の誰かがやればいい」というような身勝手さから言っているのではない。

・何のための料金!?

前々回の記事で、今年になって知り合ったポーランド人男性の話をした。

彼は日本の生活に興味を持っており、「東京でアパートを借りるとしたらいくら必要か?」と聞いてきた。

私は自身の経験や不動産サイトの情報を参考に家賃の相場や契約に必要な頭金を伝えた。

彼は初期費用の高さに驚いたが、ある項目がどうしても気になったという。

それは「礼金」のこと。

私も礼金については気になることがあった。

敷金については英語の「Deposit」という単語が該当し、意味もほとんど変わりないのだが、礼金は諸外国に存在しないためか、適当な英単語が見当たらない。

仕方なく、そのまま「reikin」と書いて意味も説明した。

諸説あるが、そもそも礼金とは、かつて、大家が出稼ぎのために地方からやって来た若者の親代わりとなって、生活を世話する事に対する謝礼だったらしい。

賃貸の礼金とは?払わなければならないものなの?|kurashify(暮らしファイ) (housecom.jp)

この令和の時代、礼金を徴収していて、それにふさわしい行動をしている大家がどれだけいるというのだろうか?

私が今の住まいに入居した時は初期費用として1ヶ月分の礼金を支払わされた。

先日、不動産屋のサイトで同じ建物の別の部屋の情報を確認したところ、その条件は変わっていなかったため、他の住人も同じように礼金を支払ったのであろう。

少なくとも、私は今の住まいに身を置いて、管理会社の世話になることはあっても(家賃とは別に月々の管理費を支払っているだから当たり前だが)、大家に世話になるどころか、顔を見たこともない。

ちなみに、私が住んでいるアパートの住人は外国出身者が多いが、彼らは日々の生活で、地方出身者とは比べ物にならいくらい大きな不安や悩みを抱えているだろう。

彼らのような入居者に対してこそ、大家は礼金の対価として、世話をしなければならないのではないか?

礼金という形骸化した習慣を先のポーランド人と話したら、彼は腑に落ちない様子だった。

彼だけではない。

実はかつてアメリカ人やフランス人にも同様に礼金の話をしたことがあるが、彼らは口を揃えて、

「それは不当請求ではないのか?」

「ウチでそんなことがあったら、暴動が起きる」

と納得しなかった。

・礼金を請求するにふさわしい人

ここで、最初の不法投棄されたゴミの話に戻る。

私が「すでに退去した元住人が不法投棄したゴミは大家が処分すべき」だと考える根拠は、礼金にある。

礼金を受け取っている以上、大家は入居者の親代わりとなって生活の面倒を見る義務があり、不法投棄した者には徹底した生活指導を行わなければならない。

だが、今回はすでに逃げられたため、大家には監督不行届きの責任を取ってもらう形で、直々に赴いて後始末してもらうべきではないのか?

そもそも礼金という字は「お礼のお金」と書くのだから、このような責任の所在が曖昧な汚れ仕事を率先して行い、入居者からお礼をされることをするのが当然ではないのか?

そうでなければ、管理費とは別に徴収することの説明が付かない。

もしくは、低賃金かつ、不安定な仕事をしているために、他所から契約を断られ続けた人を保証会社も付けずに、入居させてくれるような義理堅い行動を見せてくれるとか。

最近だと、コロナウィルスの影響で失業した入居者が家賃を払えなくなっても、決して追い出さずに、支払いを猶予したり、話を聞いた上で一緒に福祉事務所を訪れて、該当する手当の受給手続きを手伝ってくれるとか。

このような人情味溢れる大家であれば、堂々と請求すればいいが、それができないのであれば、「礼金」などという厚かましい言葉を口にすることを心の底から恥じるべきである。

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