コロナ渦は非正規労働者の有給休暇を認めさせる絶好の機会だった

前回前々回と私の体調不良ネタをお送りしてきた。

今回の風邪はかなり長めで、症状が入れ代わり立ち代わりしながら2週間近く続いている。

正直言って、体はしんどいのだが、その間はずっと出勤している。

なぜなら、私は時給制の派遣社員として働いており、欠勤した分だけ給料が減ってしまうからである。

こんな時は月給制の正社員がとても羨ましく思う。

「あ~、正社員はいいなあ~」

「病気で休んでも、給料が保障されているから」

・・・と、言いたくなるところだが、このような羨望や嫉妬は見当違いである。

だって、たとえ月給で働く正社員であっても、出勤すべき日に欠勤したら、その分を給料から控除されることは珍しくないからである。

・病気で休んでも給料が支払われる理由

毎月の給与額が固定の月給制で働いていても、出勤日に病気で休んだら、それに合わせて給料が差し引かれる。

自らが経験したことがなければ、衝撃を受けるかもしれないが、これは決して「ブラック企業」に限った話ではない。

そして、法律的にも全く違法ではない。

月給制の正社員が欠勤するとどうなる?計算方法と注意点 | デジタル化の窓口 (digi-mado.jp)

有給がない状態で会社を欠勤した場合の仕組み「欠勤控除」とは何? | マイナビニュース (mynavi.jp)

もちろん、体調不良の際は月給の控除なしに休みことができる病気休暇を設けている会社も世の中にはあるのかもしれないが、割合としてはどの程度なのかは分からない。

それではなぜ、「正社員=月給=病欠でも給料は減らない」というイメージを持つ人が少なからず存在するのか?

その理由は主に2つあると考えている。

・①:有給休暇

勤務開始から半年が経過し、出勤すべき日に8割以上の勤務実績があれば、年間10日(※:所定の勤務日数によって異なる)の有給休暇が発生する。

勤務すべき日であっても、この有給休暇を使用すれば、その日の給与を保ったまま休むことが出来る。

会社によっては前日までの届け出が必要で、当日の申請を認めず、急な体調不良の場合には使えないこともあるかもしれないが、これが最も利用されている手段だろう。

・②:傷病手当金

毎月支払っている健康保険を財源とした給付金で「傷病手当金」と呼ばれるものがある。

仕事以外のことが原因で発生した怪我や病気(仕事が原因の場合は「労災」となる)により長期間の就労不能に陥った場合は、大まかに言うと最長で16ヶ月の間、給料の2/3が給付金として支払われる。(※:期間や金額については最新の情報をご確認下さい)

病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)

主にこの2つの制度を使用して、控除、または大幅な賃金ダウンを免れることで、「正社員は病気で休んでも、給料が保障されている」というイメージを持たれる。

のだろうが、賢明な読者の方はすでに気付いたことがあると思う。

それは、有給休暇にせよ、傷病手当にせよ、正社員に限らず、非正規労働者であっても、使用できるということ。

つまり、非正規労働者であっても、病気で働けない時は、有給休暇や傷病手当を申請すれば、正社員同様に、収入減を恐れることなく休むことが出来る。

ちなみに、私は今の職場で勤務を始めたのは10月からであるが、9月までと同じ派遣会社を利用しており、その期間も勤続日数に含まれているため、10日間の有休を保有している。

というわけで、私が収入面の不安から、病欠による体調不良でも出勤せざるを得ないことを嘆いたとしても、

「それじゃあ、有休を使って休んでください!!」

の一言で蹴りが付く話なのだ。

こんな状況なので、私には月給制で働く人を嫉む資格などない。

・有休を認めないなら、体調不良でも出社します

さて、私の場合は有休を保有しているにもかかわらず、行使せずに出勤しているのだから、最悪のことが起きても自己責任だし、就業先や派遣元を責めるつもりも毛頭ない。

だが、世の中には、有休を使用する資格があるにもかかわらず、それらは正社員の特権であり、非正規にはそんな権利はないと思い込まされている人や、権利を主張しても頑なに認められない人もいる。

今からこんなことを言っても、時すでに遅し感が拭えないが、コロナ渦は非正規労働者の有休を認めない会社を懲らしめる絶好のチャンスだったと思う。

コロナの発生以降、「体調不良でも休まないことが社会人の常識」などという破廉恥な風潮は吹っ飛び、少しでも体調が悪いと感じたら、無理に出社せずに休むことを推奨されるようになった。

それ自体はとっても良いことなのだが、労働者がどうしても気になるのが、欠勤したことによる収入減である。

というわけで、「ウチは有休休暇を認めない!!」と経営者が宣う会社で、従業員が、それこそコロナに感染しているかもしれない程の体調不良でも、「有休を認めないなら生活できないから、体調不良でも出勤する!!」という姿勢で出社を強行していたらどうなっていただろうか?

その結果、感染拡大で事業所が閉鎖される危険性も考えると、この作戦はストライキよりも大きなダメージを会社に与えることが出来ないだろうか?

そして、このような事態が全国で一斉に起きて社会問題になったら、政府や厚生労働省も感染症対策のために、非正規労働者にも有休の権利が与えられていることを大々的に告知し、そこで初めて、自分にも有休の権利があることを知る人もいたかもしれない。

しかも、彼らの有休は元々与えられていた権利であり、支援のために莫大な公的な資金(税金)を投じる必要もない。

むしろ、それを頑なに拒みながら、「コロナ対策の支援金や助成金だけは欲しい!!」とほざく虫がいい会社には、一切の支援金の受給資格停止などの厳しい措置を課せばいいのだ。

コロナ渦の感染症対策が徹底されている社会であれば、このような手段で労働者の権利を取り戻すことが出来たかもしれないのだが、在宅勤務の終了による通勤地獄の揺り戻しなどを見れば、体調不良ですぐに休むことを良しとしたり、非正規でも有休を使うことを認める社会を実現できる機運は完全に失われたと言えるのかもしれない。

残念なことだけど…

次回へ続く

スポンサーリンク