自分だけではなく仲間のためにも、仕事を頑張り過ぎてはいけない

お盆休みはずっと家に居て時間が有り余っていたため、珍しく家の掃除をすることにした。

取り敢えず取っておいた物も「これを機に…」とばかりに、多くを処分することにした。

そんな調子で不要物を処分していると、気になる物を見つけた。

・上手く行けば儲けもん

私が見つけた物とは、昨年働いていた職場で、私と入れ替わりで退職した元同僚から送られたメッセージカードである。

そのカードの最後にはこんなことが書かれていた。

「頑張り過ぎない程度に頑張ってください」

初めてこの言葉を見た時は、私に気を使いながらも、励すことを意図した言葉だと思っていた。

しかし、すぐに気づくことになる。

「その言葉は励ましなどではなく警告だった」のだと。

私がそれを痛感したのは、同期と比較してあまりにも多くの業務も割り当てられたからである。

同期は10年以上の事務経験を持つベテランなのだが、この男より遥かにまともとはいえ、とにかく仕事が遅い。(覚えるのも、こなすのも)

その結果、大袈裟ではなく、私が彼女の倍以上の仕事を割り当てられることになった。

このことについては過去にも取り上げたことがある。

働き始めたばかりの同期が、なかなか仕事に慣れないのは仕方ないにせよ、上司は私に対しても同様に「無理をさせたらいけない」とは考えなかったのだろうか?

退職する同僚が伝えた「頑張り過ぎない程度に頑張って」というのは、「頑張り過ぎたら、それに合わせて仕事を割り当てられるから、会社から自分を守るために頑張り過ぎてはいけない」ということだったのだ。

今になって思うのだが、同期は本当に仕事が出来ない人だったのだろうか?

もしかしたら、会社は「本当は3人でやる量の仕事を先ずは2人でやらせてみて、上手く行けば儲けもん、それが難しそうなら補充すればいい」くらいに考えていたのではないだろうか?

つまり、「彼女は決して能力がないわけではなかったものの、私がバカ正直に飛ばし過ぎて、会社の策略に乗せられただけなのではないか」と。

思い返せば、以前の勤め先でも同じようなことについて心当たりはあった。

・今の人数で十分なら人は雇わない

かつてこの記事でノムラ(仮名)という人物と共に働いた時の話をした。

私が彼の下で働き始めて数日が過ぎた頃、彼は勤務時間にもかかわらず、私は休憩に誘った。

そこで彼に言われたのが、「(私が)働き過ぎだから、力をセーブするように」ということ。

彼は最初こそ私に対して、「今まで見た中でトップクラスに仕事が出来る」と評してくれたものの、それは決して優しさだけから来るものではなく、こんな本音も語った。

ノムラ:「早川君が来る前の予定では、二人雇う予定だったんだけど、社長が今の職場を見たら『この店は今のままでも回るから、これ以上人を増やす必要はない』と思って、増員を認めないかもしれないから」

当時、その店は私とノムラと彼の妻の三人で働いていた。

ちなみに、彼の妻は妊娠中だった。

彼は、私だけならともかく、人件費を抑制のために、妊娠中の妻にしわ寄せが来ることは避けたかったのだろう。

そう悟った私は彼の忠告を受け入れて、少し仕事のペースを落とすことにした。

もっとも、その後すぐに、彼らが二人とも休む日が生じたため、フル稼働せざるを得なった。

そして、店を心配して見回りに来た他店の店長にその様子を見られて、半ば強引に引き抜かれてしまったわけだが…(その時の話はこちら

転勤して1ヶ月が経った頃、立て続けに退職者が出ることになり、店長にこんなことを頼まれた。

店長:「今月は人手が足りないから、毎日1時間残業してくれないか?」

それを聞いた時は、ノムラと話した時の記憶が蘇った。

「今月は」と言ったが、もしかして、このままズルズルと引き延ばして、「今のままでも店が回るから…」という既成事実を作り、そのまま人を雇わないという算段ではないだろうか…

私は一瞬動揺したが、すぐにこんな提案をした。

早川:「今月は大丈夫ですけど、来月は英語の試験に備えて勉強しないといけないので、今月だけで大丈夫ですか?」

店長はその提案を受け入れてくれて、何とか波風を立てずに、残業が恒久的になることを阻止した。

そして、すぐさまこんな確認をした。

早川:「あの~、今って人の募集はしているんですか?」

店長:「もちろん。募集は求人誌にも、ハローワークにも出しているよ」

あ~、良かった。

その後は1ヶ月も経たずに増員として正社員がやって来ることになった。

その人物がこの記事に登場したミナミ(仮名)である。

・皆が幸せになれた道

当時は単に、「社長や店長は本当に雇ってくれたんだ!」くらいにしか思っていなかった。

しかし、昨年の職場を経験したことで、もしも、私があの時1ヶ月以上の残業を受け入れたり、募集について牽制球を投げなかったら、ノムラの懸念が当たっていたのではないかと感じるようになった。

ちなみに、仕事が遅かった同期だが、彼女も私の1ヶ月後に辞めることになった。

私も勤務最終日に初めて知って驚いた。

随分とぬるま湯に浸かり、これ以上楽な職場はなさそうに見えた彼女だったが、彼女なりに悩んでいたのかもしれない。

ひょっとして、私のせいなのだろうか?

もし、私が会社の思惑通りに動かず、彼女のように気楽に働けば、上司も「これじゃ職場は回らないな…」と思って、きちんと人員を確保しようと考え直したかもしれない。

そして、3人で仕事を分け合って、のんびりと働けば(人件費をケチりたい会社は除く)皆が幸せになれたのかもしれない。

今となってはどうしようもないが、そんな有り得たかもしれない未来に少しだけ思いを馳せている。

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