・連絡がない方が安心する
先週、実家の母親からメールが入った。
最初は残暑見舞いという感じだったのだが、その直後に驚くべきことが書いてあった。
「話したいことがあるから、都合が良い時に電話してください」
メールを送ることが出来るというのに、電話で改まって話したいこととは一体何だろうか?
-
90歳を超えた祖母、もしくは14歳の犬が大往生したのか?
-
もしくは、家族の誰かが交通事故で急死か?
-
それとも、財政破綻を起こし、実家を手放すことになったとか?
30歳を過ぎて単身で生活をしている地方出身者に、実家の家族がわざわざ電話で話したい内容など、大抵マイナスな話題しかない。
普段は連絡を取り合っていないとなるとなおさらのこと。
一人暮らしをしていて、実家の家族からふと連絡があると嬉しい気持ちになる人もいるかもしれないが、今の私は全く逆で、連絡がある方が怖くなる。
「便りの無いのは良い便り」とは良く言ったものである。
私がメールを見たのは午後11時近かったが、不安でいてもたっても居られなくなったので、すぐに電話を掛けることにした。
母親はすぐに出て、話したかった内容もすぐに教えてくれた。
その内容とは・・・
地元の銀行から、「何年も口座を使っていないので、これ以上利用がないと、口座維持のために手数料を徴収する」という葉書が届いた
ということ。
え!?
そんなこと!?
あ~、ビックリした…
母の心境としては、「文章で説明するのが面倒だから、電話でした方が早い」ということだったのだろうが、私はヒヤヒヤしていた。
冗談抜きに腰を抜かしそうになった。
・地元の銀行を使っていた時の思い出
さて、主題となった銀行口座であるが、地元に住んでいた時から、日常的に使っているものではなかったので、解約しても良かった。
しかし、解約となると「私本人が、印鑑と身分証を持って、窓口へ行って…」とかなり面倒なことになるのは間違いない。
しかも、一応、銀行の支店は東京にもあるものの、今の私は平日週5日勤務の仕事をしているため、銀行の営業時間に窓口を訪れることは難しい。
そこで、取り敢えず口座に1,000円入金して、取引実績を作り、延命することにした。
これで、少なくとも1年間は猶予が生まれるので、その間にじっくり考えればいいだろう。
そう思って、通帳かカードを探すことになったのだが、どうも手元には見当たらない。
そのことを母親に伝えて、実家の方を探してもらうことにした。
通帳探しがひと段落すると、上京時に持参した通帳に目を通すことにした。
上京前は、上記の銀行とは別の2つの銀行の口座を主に利用していた。
いずれも地方銀行であり、「東京ではATMさえほとんど見当たらないだろう」と思って、上京前にほとんどの金額をゆうちょ銀行の口座に移したが、念のため、カードや通帳は持って行くことにしたのだ。
上京後は事前の想像通り、全く使用することなく、ずっと引き出しの中に閉まっていた。
中身はおろか、表紙を見ることすら数年ぶりだった。
何年も使用していないとはいえ、地元で暮らしていた時はいつも使っていたので、それなりに愛着はある。
高校生の時に初めて自分のバイト代が口座に振り込まれた時のワクワク感。
留学資金となる貯金100万へ向けて、毎月確実に残高を積み重ねていた時の達成感。
その時のことは今でも思い出す。
あの時は楽しかったなあ~
夢や目標を持って必死に働いたのは、先にも後にも、この時が唯一である。
気を許せる同僚や頼れる上司にも恵まれた。
実家暮らしのフリーターということで、端から見れば侮蔑の対象だったかもしれないが、今振り返っても、あの時が一番輝いていたのかもしれない。
「あの頃に戻りたい…」
1年後に生活が一変したため、そのようなことを思っていたことは、かつてこの記事で書いたが、同じ気持ちは今でも持っている。
・当時の時給は…
そんな懐かしい想いから通帳の中身を覗くことにした。
左側には「2X-10-01」というように当時の日付が載っている。(「2X」とは平成の年度のこと)
あ~、懐かしい。
右側には残高が記載されている。
目標の100万に向けて、毎月コツコツと貯金している。
そんな楽しい思い出に耽っていたが、ある項目が目に入ったことで一変した。
それは「キュウリョウ(給料)」という名目で振り込まれた金額である。
ひと月だけ13万円を超えたが、他の月は軒並み12万円台だ。
しかも、社会保険へ加入していなかったため、月数百円の雇用保険のみの天引きでこの金額である。
当時の時給は750円。
一日の勤務時間がおよそ7.5時間。
隔週で週6日勤務していたため、ひと月23日出勤として計算すると…
750×7.5×23.5=129,375
計算通りの給料額である。
この金額を見ると、まるで横っ面を引っ叩かれたような衝撃が走り、「あの頃に戻りたい…」という甘い気持ちが覚めた。
この程度の収入にしかならないのが、地方でフリーターとして働くことの現実である。
当時と比べて最低賃金は200円程上がったため、今同じ仕事をやったらもう少しの金額になるが、それでも15万程度。
もちろん、社会保険料の控除なしで。
両親も年金生活+パート収入となった現在では、当時と同じように、生活を全面的に依存することも出来ない。
そんな中、月15万の給料で生活することは不可能である。
…というか、「よく時給750円で働けたな…」と思う。
場所が違うと言えど、今では求職時に倍の時給1500円を提示されても「う~ん…」と渋い顔をしてしまう。
時給750円で働いていた頃には、間違いなく戻れない。